ロボットに対するニーズ | 不況になると口紅が売れる

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 ある大学だったか研究機関だったかが、「ロボットに対するニーズ」を探るため、介護医療の現場を視察して、インタビューするというニュース報道を見た。で、その研究チームは、ロボットの力を借りて介護したいというニーズを発見できたと喜んでいた。めでたしめでたし、である。


 しかし、よくよく考えてみれば「ロボットに対するニーズ」というのは、なかなかシュールな言葉だ。それじゃあ「宇宙ステーションに対するニーズ」「タイムマシンに対するニーズ」というものは存在するのか?防衛省がガンダムを開発するという噂(笑)があるが、では「ガンダムに対するニーズ」ってなんなのか?

 これはイノベーションとマーケティングとのかかわりについて、少々考えさせられる報道であった。


 介護現場のニーズとは、正確に言えば「介護行為を物理的にサポートしてくれる仕組みに対するニーズ」であって「ロボットに対するニーズ」ではない。つまりそのニーズとは、例えば、介護ボランティアの協力とか、設備の改善とか、法改正による資金援助とか、ロボットでなくとも叶えられるニーズなのである。一方でロボットが笑ったり、芸をしたりすることで介護現場の雰囲気を和らげられることのほうが、将来よほど大切な仕事になるかも知れない。


 想定利用現場の意見を聞くことはよいのだが、「ニーズ」という言葉を使うことにより、ものごとの本質が見えにくくなることもある。なんでもかんでも、マーケティングっぽいことを志向すべきじゃない。

 特に、イノベーション優先で「こんなものできちゃいました」のケースは、ニーズを発見しようとするマーケティングなんてナンセンスである。マーケティング専門家も入れて検討するプロジェクトとか、お金と時間が無駄だから、やめたほうがよい。

ではどうすべきか?それは恐らく、「将来のニーズを含めて発明すること」だろう。そのイマジネーションの良否こそが、結局イノベーションの良否ということになる。当然、研究対象の概念設定が変わってくるだろう。