前回(4-1)の続き
しかし、七瀬は亮子に傾きかけた気持ちを無理やり引き戻そうとした。彼女の美しさが、また仕事の障害にもなりえると思ったからだ。以前、仕事が薄い時期があって、仕事場にしていた賃貸しのワンルームマンションを引き払い、自宅に帰ったことがあったからだ。
いくら美人であろうと、得意先の社員の顔など、増え続ける名刺の識別役でしかない。そう気持ちを切り換えて、毎日コツコツとマキを割るように作業に戻ろうと思った。まだまだ先は長い。なんの生活の保障もないフリーのライターにとって、絶やすことのできない生命線は仕事の種火なのだと、七瀬は自分に言い聞かせた。
だから、七瀬は亮子と二人きりで打合せをしていても、仕事以外の話をすることはなかったし、なるべく事務的にこなすことを心がけた。亮子の方も七瀬のプライベートな部分にふれてくることはなかったし、必要な話がすんだら、二人とも不自然なくらいそそくさと席を立った。
亮子は、いつもはきはきとした敬語で七瀬に接してくれた。丹念に紙面の文字を追い、直しをまとめてくれたし、きちんとした説明を加えて上司の了解もとりつけてくれた。これだけの数の制作物が重なったのにもかかわらず、初回カンプの提出からこれまで、トラブル一つ起きなかったのは彼女が担当してくれたおかげだと、七瀬は感謝していた。ほとんどの印刷物が色校出しを終えていて、あと一息で大きなヤマが越えられるところまできてたからだ。
遠いデザインとは……
10年前の2002年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを以前みたいに書かなくなったので、
その手慰みのために書いています。