『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス』ネタバレなし感想 | LIKE LIFE

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完成披露試写会にて鑑賞。

以下、映画の感想になります。

一応内容のネタバレはしていませんが、ネタバレダメゼッタイ!な方はご注意ください。


(舞台挨拶レポはこちら)




色々書いてたら長くなったので見出しをつけときます。読みたいところを読んでください。

①サイコパスシリーズの面白さとは

②劇場版の良かった点(アクション&キャラクター)

③劇場版の悪かった点(テンポ&1・2期とのつながり)

④まとめ






①サイコパスシリーズの面白さとは


恐らく日本人の多くが『マトリックス』という映画の名前を聞いたことがあると思いますが、その中でどれほどの人が、この映画が『攻殻機動隊』という日本のアニメに多大な影響を受けて制作されたということを知っているでしょうか。
未来社会を描きながら人間の在り方を問う哲学的視点を含んだ『攻殻機動隊』は、日本では公開当時ほとんど売れず、世界で高く評価されたことで逆輸入的にやっと日本で話題になったのです。

そもそもこのようなサイバーパンク作品は難解なテーマを扱っているが故に、見る人を選ぶ傾向にあり、特に今の深夜アニメでは売れる確証が得づらい。サイバーパンクに限らず、今も昔もアニメで硬派な作品を作るのはリスクが高すぎます。

そのため『攻殻機動隊』を制作したProduction I.Gですら長らくこのジャンルを避けてきました。



しかしこの『PSYCHO-PASS サイコパス』という作品は、

『踊る大捜査線』で刑事ドラマの一時代を築いた本広克行と、

『魔法少女まどか☆マギカ』でフィクション批判を扱いながらも類を見ないストーリー展開によって大ヒットさせた虚淵玄が、

売れる売れない、流行り廃りを度外視してただひたすらに「面白いモノ」を作りたいとタッグを組み、

さらにキャラクター原案を女性人気も高い『家庭教師ヒットマンREBORN!』の天野明が手がけたことによって、

近未来SFでありながらもハードボイルドな刑事ものであり、「正義と法」という複雑な社会テーマを扱いつつも男女ともに楽しめるようなエンターテイメントに仕上げられたのです。




劇場版の大前提となるTVシリーズ1期は、主人公の刑事・狡噛と彼が因縁をもつ男・槙島との対立が描かれました。

しかしそれは単純な「正義vs悪」というものではなく、

狡噛が貫く「正義」
槙島が是とする「正義」
シビュラと呼ばれる社会システムが支配する「正義」

これらがぶつかり合い、一体どの「正義」が正しいのか、そしてその正義によって定められる「法」の意義とは何か、を見る側に問いかける作品であったように思います。

そもそもの設定やストーリーの展開自体は、『マイノリティ・リポート』や『セブン』などから影響を受けているのだろうと考えられます。

しかし何より特筆すべきは、新米刑事であったヒロインの朱もまた、狡噛や槙島、シビュラに左右されずに「自身の正義」を守り続けた点にあるでしょう。

どんなに理不尽であろうとも、人々にとっての幸福を第一とした「正しさ」を見失わない彼女は、過去のどんな名作においても稀有な存在ではないか。

何者にも迎合しない彼女が出した1つの答えは

「社会が必ず正しいわけじゃない。だからこそ私達は、正しく生きなければならない」

というシリーズ2期の彼女の台詞にあらわれており、この言葉が作品そのもののテーマを表しているといえるのではないかと思います。

(因みに1・2期は12/26~1/26までGYAO!にて無料配信とのこと。未見で気になる方はぜひ)



まぁこういった小難しい社会的テーマはあくまでサイコパスの一面に過ぎないわけで、前述したとおり刑事ものサスペンスとして楽しむ人もいれば、SF作品として楽しむ人もいるだろうし、キャラクターの魅力に惹かれる人も多くいると思います。

そこがこのサイコパスという作品の懐の深さであり、サイバーパンクやSFといったジャンルが一部の人間にしか受け入れられないのではなく、実はより多くの人が楽しむことのできるものであるということを証明してくれたように思えます。

もちろんそれは虚淵さんと深見さんの難解さに偏らない脚本の力と、圧倒的に文字量の多いだろう脚本をよりエンターテイメントに持っていった塩谷監督の演出力、女性が楽しみやすいキャラクターを作り上げた天野先生の絵の魅力と、それでもキャラにハードボイルドさを醸し出させる浅野恭司さんのかっこいいデザインなどなどが結集したからこそ。


そしてこの劇場版は、TVシリーズを楽しんだ人すべてが確実に満足できるだろうものになっていました。
こういうものを待っていたんだと声を大にして叫びたくなるほどの間違いのない傑作です。





②劇場版の良かった点(アクション&キャラクター)


TVから映画という舞台になったことで、何より際立つのはアクションシーンの迫力。

SFとはいえ巨大ロボが戦うような作品ではないので、ドミネーターや銃器による戦闘から、シラットという武術を元にした肉弾戦、人を追いつめる武装ドローン、近未来的データ戦まで多種多様に描かれ、かなりアクションに比重が置かれつつも決して飽きることなく存分に楽しめます。
I.Gアクションの最高レベルと言っても過言ではないはず。
十八番の上下演出もI.Gファンとしてはたまらないところですね。

元々アニメというより刑事ドラマといった雰囲気のサイコパスでしたが(攻殻を始めI.G作品はそいういうものが多い)、映画で一気にハリウッドレベルになったのではとさえ思ってしまうほど。日本の実写映画では到底実現できないだろうド派手かつ重厚感あるアクション満載となっています。

ただし逆に言うと、こういったアクションが苦手な人にはツラい作品になっているかもしれません。「武器が制限された日本で起こる刑事事件」がTVシリーズの主だったので、映画ではあえて海外を舞台にすることで銃器や戦車をバンバンに出しています。シビュラ社会の中であれこれ起こるというわけではないのでご注意を。サスペンスというよりアクション映画として観にいくべしですね。



また、アクションが多い分当然キャラクターたちの活躍が光ります。

2期ではほぼ出番のなかった狡噛さんがここぞとばかりに本領発揮していて本っ当にかっこいい。ここまで煙草の似合う男臭い硬派なキャラが全面に活躍するアニメも近年少ないかもしれません。
作画も気合い入りまくりなので美麗な狡噛さんが拝めます(ありがとうスタッフ!)。

もちろん、ヒロインの座に収まらず2期から主役交代した朱ちゃんも男顔負けのタフな動きを見せてくれるし、宜野座を始めとするレギュラーメンバーから新キャラまで、それこそ敵ですらかっこいいと思わせられるシーンが随所にありました。

(一応あのポニーテールにも意味があったように見えたのでよかったですよ、宜野座さん)



サイバーパンク要素も忘れてはいけません。

無法地帯で「正義」はどこまで許されるのか、どういう「法」であればそこに住む人々を幸せにできるのか、そして住民が幸福だと感じるならそれが「正しい」のか・・・

紛争地域における格差問題なども含め、この映画のラストについて現代社会を生きる我々は考えていかなければならないように思います。


加えて、1期の槙島を思い起こす名著からの引用による台詞のかけ合いも復活しています。どのキャラが引用をするか、というのはお楽しみに。

今回は海外が舞台ということで英語台詞・日本語字幕(なんと戸田奈津子による字幕ですよ)で楽しめるのも一興ですね。





③劇場版の悪かった点(テンポ&1・2期とのつながり)


不満を漏らすであれば、説明シーンのゆったりした口調だったりアクションシーンでの人の動きだったりでテンポ悪く感じてしまったこと。
戦闘が激しいシーンとの緩急だと思いますが少し違和感を覚えたので残念。
あとやはり話が動き出すまでの序盤は若干退屈かもしれません。後半からの加速度的な面白さとのギャップみたいなものでしょうか。


またTVシリーズの劇場版ということで、世界観については端的に表現してくれていてTV未見の人でもわかりやすくなっていましたが、槙島についての言及はあったので少なくとも1期を見ている(もしくはコミカライズ版『監視官常守朱』を読んでいる)人のほうが楽しみやすいだろうなと。
世界観と同じく、槙島についても簡単に説明するシーンがあればよかったのかもしれませんが、さすがに劇場版としては長尺だろう113分をさらに延ばすというのは困難だったのではと思われます。
もし未見で映画を見ようと思っている人はwiki等で1期のおおまかなあらすじとメインキャラについて確認しておくことをオススメします。
多少人間関係がわからなくてもストーリーは楽しめる、というタイプの人なら問題ないかもしれません。

2期については、ストーリーとしての直接的な繋がりはないので見なくてもほぼ大丈夫かなと。けっこうここは重要ですね。
そもそも劇場版の脚本が完成したあとで、1期と劇場版の穴を埋めるために2期が作られたそうなので、それを考えると制約の多すぎるなかでストーリーの掘り下げまできちんと果たした冲方さんには脱帽するしかありません。

2期は朱の煙草、霜月の態度、宜野座のタンクトップ、雛河と須郷の存在など、劇場版を観ると、なるほどそういうことかと納得する部分が多い気がします。逆に2期を見ていない人はこのあたりで首をかしげるかもしれないので、一応補足しておくと…

・2期から朱は狡噛の思考に近づくために煙草を持つようになっている。ただし喫煙しているわけではなく、あくまでお香代わり。
・霜月は朱に反抗的であり、逆にシビュラには従順である。シビュラへ疑問を投げかける朱に対して何故そんな無意味なことをしているのだろうかと呆れている。
・宜野座はムキムキになっている。(詳しくは「宜野座 タンクトップ」で画像検索すること)

あと、、雛河役はオーディションで選ばれたと監督は言っていましたが、映画を観るとこれが嘘だったとわかりますね笑



因みにR-15指定はTV版よりドミネーターに遠慮がなくなったというだけなので脚本のせいではないと思われます。恐らく。





④まとめ


とにもかくにも、本当に心の底から面白かったと思える映画でした。

サイコパスというアニメは、視聴者だけでなくスタッフやキャストもみんな「面白い」と口をそろえます。
それは当然のようでいて、実はけっこう珍しいことなんじゃないかと思ったり。

どういうものが売れているとか、こういうものが流行りだとか、そういう世間をあえて顧みずに、制作陣が自分たちの思う「面白いモノ」を追求してくれた賜物がこの作品なのだと信じています。
そしてこういう作品こそがきちんと売れて評価され、硬派なアニメでも成功するのだということが保障されれば嬉しいかぎりです。
深夜アニメの新たな可能性のためにも、ぜひともこの劇場版はヒットしてほしいと願っています。


脚本、演出、作画、映像、音楽、音響、OPからEDにいたるまでどれをとっても最高と言わせる作品でした。

映画を観にいく人はぜひ期待していてください。きっとその期待を軽く超えてくれる、そんな傑作ですから。











といった感じの感想でございます。


前半は映画じゃなくてサイコパスそのものの話になってますが笑。


ストーリーについては触れられないので何とかアクションやらキャラやらに的を絞って書いてみました。

それでもネタバレと感じる人がいましたら申し訳ありません。

もちろん試写会に行くほどにはファン目線であることはご了承いただきたいですが、一応色んな視点で楽しめるのではないかということは強調したつもりです。

男性も女性もぜひ観にいってもらいたい作品でした、間違いなく。



この感想をもう少しお堅くしたものをYahoo映画レビューに投稿しています。どちらも自分が書いたものなのであしからず。。



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