【書籍情報】
あの頃の誰か
東野圭吾
出版社: 光文社 (2011/1/12)
ISBN-13: 978-4334748975

【概要・コメント】
東野圭吾先生の短編小説,連投2冊目である。

前回図書館で借りた本を返却しに行ったら,この本が棚に置いてあったのでまたまた読んでみた。

この本には,東野先生が「言い訳」と称する「あとがき」がある。

そして,そのあとがきの中で,なぜこれらの短編小説が長い間出版されなかったのかの経緯・理由が書いてある。
このあとがきを読まないと,この短編小説はすごく消化不良になるだろう。
別の言い方をすると,このあとがきも含めて,この文庫本は完成したような気がする。

つまり,この短編集の中にある小説はどれもいろいろな意味で問題作である。

内容が面白くないというわけではないが,素直に「面白い!」とは言い切れない,何か奥歯にものが挟まったような感覚がある。
このような本を出版するのは,読者の期待を裏切る行為なのかもしれないと思いつつ,東野先生の傑作がただ必然的に生まれるのではなく,これらの問題作が基礎となり,もしくは生贄となり,生まれているのだということがよく分かる気がする。

その意味で,「容疑者Xの献身」などの名作を読んでいない人は,絶対にこの本から読み始めてはいけない。
おそらく東野先生の能力を大幅に過小評価してしまうであろう。
逆に,東野先生の作品に少し飽きを感じてきた人には,とてもお薦めできる短編集である。
いろいろな作品が,いろいろな経緯で作られるというのは,モノづくりの過程を楽しむ1つの方法であろう。

でも,やっぱり長編小説の方が面白いか・・・。

 

 

【書籍情報】
Vision Transformer入門
片岡 裕雄 (監修)
山本 晋太郎, 徳永 匡臣, 箕浦 大晃, QIU YUE (著)
出版社: 技術評論社 (2022/9/17)
ISBN-13: 978-4297130589

【概要・コメント】
Vision Transformerに興味はずっともっていたが,大量にある論文に目を通すほどの余裕もないので,このようなまとめの書籍を切望していた。

本書は,Computer Visionの世界で今どのような問題が取り組まれ,その中でVision Transformerがどのように活用され,そして既存の深層学習(CNN, Convolutional neural network)とはどのように異なるかを概説している書籍である。

まず,本書を"教科書"と位置付けるのは,かなり無理がある。
機械学習の基本的な概念そして数学的な導入はほとんど書かれていないので,本書を読んで真に理解するためには,別の教科書で事前に知識を得る必要がある。

一方で,Vision Transformerのレビュー書籍として捉える,大変よく出来た書籍だと思う。
もちろん,Computer Vision研究の専門家であれば,日々更新される論文に目を通していて,このような書籍は不要なのだろうが,自分のようなロボット工学を専門としているが,Computer Visionを使いたい人にとっては,このようなレビューが日本語で読めるのは大変ありがたい。

このように鮮度の高い書籍を,日本語で出版してくれる著者らおよび技術評論社には感謝したい。

特に以下の4つの章は,TransformerおよびVision Transformerの概念を理解したい人にとって,重要なヒントを与えてくれるであろう。

  • 第1章 TransformerからVision Transformerへの進化
  • 第2章 Vision Transformerの基礎と実装
  • 第7章 Transformerの謎を読み解く
  • 第8章 Vision Transformerの謎を読み解く


個人的にはSelf Attentionを説明した図2.18 Self-Attentionの気持ち(P.48)のあたりは,新しい機械学習の概念をできるだけ平易な表現で伝えようという著者の工夫が感じられ大変素晴らしいと思う。

一方で,第4, 5, 6章あたりは,事実の羅列が続いており,リサーチマップなどで複数の研究の位置付けを明示しようとする努力はされているものの,なかなか内容の構造を読み取るのは難しいというのが本音である。

世の中に,どんなComputer Visionのタスクがあるのか,そして,Vision Transformerという研究がどれほど活発に取り組まれているのかを知るのには,良いかもしれないが,消化不良だと感じてしまう方も多いかもしれない。
そのような消化不良を感じた方は,上記の4つの章だけでも読んでみると良いかもしれない。

以下,本書の中で特に気になった記述である。

  • P.125 CNN構造は画像のより局所的な領域の特徴<中略>の学習に強いと知られています。その一方,画像や3次元データの大局的な特徴<中略>の認識などは依然として難しい<中略> その原因の1つに,畳み込み操作を層ごとに増やしていく際に,局所情報と大域情報の両方を持ち続けることが困難ということが挙げられます。
  • P.158 構造化された言語と階層構造を持たない画像との対応関係は学習しにくい,また生成結果を評価しにくいという問題があります。これに対応するため<中略>画像の内容をグラフ構造によって表現するScene Graphを提案しました。
  • P.160 DALL・E2ではDiffusionモデルで画像生成を行っています。<脚注>Diffusionモデル(拡散モデル)とは,データにノイズを徐々に追加し,ガウシアンノイズとなるようなプロセスと逆のプロセスをモデル化することでデータを生成する手法です。
  • P.180 知識の蒸留とは,学習済みのネットワーク(教師ネットワーク)の出力分布を目標の分布として,未学習のネットワーク(生徒ネットワーク)の学習に利用する方法です。

 

 

 

【書籍情報】
素敵な日本人
東野圭吾
出版社: 光文社 (2020/4/14)
ISBN-13: 978-4334790028

【概要・コメント】
東野圭吾先生の短編小説を久しぶりに(初めて?)読んだ。

東野先生の小説の醍醐味は大どんでん返しにあるので,短編小説では十分に魅力が発揮されないと思っている。
よって,これまで短編小説を読むのは避けていたが,近くの図書館でお薦めしていたので読んでみた。

結論から言うと,長編小説と同じような爽快感を得るのは難しいが,短編小説でも十分に大どんでん返しは可能であると感じた。
特に,本書に含まれる「レンタルベビー」は,たくさんばら撒かれた伏線とは,まったく異なるところで,大どんでん返しをしてきたのでとても楽しめた。

最近,年末で心に余裕がないので,長編小説を手に取ることが出来ていないが,このような時期は短編小説で"推理小説不足"を補うのも悪くないと感じた。