【書籍情報】
詩と科学
湯川秀樹
出版社: 平凡社 (2017/2/14)
ISBN-13: 978-4582531596

【概要・コメント】
ノーベル物理学賞を受賞された、湯川秀樹先生のエッセイ集である。

まず結論からいうと、この本は大変お薦めである。
自分も若手から推薦され購入してみたのだが、非常に感激した。

中でも「具象以前」という詩には、大変感銘を受けた。

ノーベル賞を受賞するような偉大な科学者が、成果を具体化(具象)できない人々のこと、活動のことまで心を配り、その価値を認めてくれているのは、大変素晴らしいことで勇気付けられた。

この詩を読んで思うことは、湯川先生は本当に広い見識をお持ちということである。
ご両親やご兄弟の影響もあってか、文学や歴史に対して深く・広い見識をお持ちであり、その見識こそが物理学で成功するのに大いに役だったのだと推察した。

その意味では、この時代の学者は本当に学者であるのだなと、強く印象に残った。

今の科学者、技術者は社会の要請に応えようとしすぎているのかもしれない。一方で、社会からの圧力に負けずに、自分の知りたい真理を追及するのは、現代ではより難しくなっている気がする。

科学者・技術者が誰を向いて活動をすべきか、なかなか答えを1つにするのは難しい問題である。

 

 

 

【書籍情報】
ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
東野圭吾
出版社: 光文社 (2023/11/14)
ISBN-13: 978-4334101176

【概要・コメント】
相変わらず東野先生の作品は素晴らしい。
何より読みやすい。そして、本を読み進めるのが止まらない。

今回の小説は、探偵モノに属すると思うが、その設定が東野先生が書いた小説としては珍しい。

東野先生のこれまでの小説は、どちらかというと主人公は事件に関して豊富に情報を得られる立場にあった。

例えば、ガリレオシリーズなどは、警察の協力の元で事件の捜査をしているため、事件を解決するためにさまざまな手掛かりを(警察に所属していない者にしては)リッチに取得することができていた。

一方で、今回の小説は事件に関する情報が直接は得にくいという、少し“トリッキーな“制約の中で、情報を集め解決していくというところが面白い。

基本的にミステリー小説は、発生した事件に関する情報を、一見分かりにくい状態に並べ替え、その情報を部分的かつ逐次的に取得し、再構成することで事件を解決していくのだが、今回の設定のように、特殊な制約を設けることで、これほどまでに(単純な)事件の全容が把握しにくくなるのかと、驚きを感じた。

この小説、福山雅治さんが主演で映画化されるようだが、まさに適役だと思う。
むしろ、映画化を狙って、福山さんをイメージしながら当て書きをしたのではないかと思われるところがある。

東野先生のガリレオシリーズがお好きな方は、ぜひ目を通して欲しい作品である。

 

 

 

【書籍情報】
忍者に結婚は難しい
横関大
出版社: 講談社 (2024/7/12)
ISBN-13: 978-4065356944

【概要・コメント】
出張からの帰りに本屋でジャケット買いをした小説です。

テレビドラマの脚本を小説化したもののようである。

まず、テーマとしては大変興味深い内容である。
昔、ハリウッド映画にMr. And Mrs. Smithという映画があったが、それに近い内容である。

ただし、忍者という特殊性をテーマにしているので、それはそれで独創的な物語に仕上がっていると思う。
特に、忍者特有のしきたりへのしがらみなどは、本書の重要なテーマになっている。

大変興味深いテーマを取り扱っている小説ではあるが、小説のストーリー展開という意味では、それほど驚くべきところは無い。
ある意味、予想の範疇ではあるし、期待通りでもある。
その意味では、この小説はストーリーを楽しむというよりは、登場人物のすったんもんだを楽しむものだと言える。

この著者、他にも色々と小説を出しているようなので、今後Watchしていきたい。