【書籍情報】
人が増えても速くならない
倉貫 義人
出版社: 技術評論社 (2023/6/10)
ISBN-13: 978-4297135652

【概要・コメント】
本書はソフトウェアの開発という業務がどのような種類の業務なのかを,ソフトウェア開発に携わったことのない人に分かりやすく記したものである。

タイトルが示しているように,ソフトウェアの開発では人が増えたからといって,必ずしも開発速度が向上するわけではない,というのが本書の代表的な主張である。

ソフトウェア開発は基本的に頭脳労働であり,知的作業であるため,朗読量が足りなくなってから補充したとしてもすぐ活躍できるわけではない。
そのため,日常的に人材育成を行っていくべき,というの本書の主張である。

タイトルに惹かれて購入したものの,わざわざ購入するほどの本ではなかったな,というのが正直な感想である。
ソフトウェア技術に疎い,間接部門(特に人事部門)の人には読んでもらってもよいかもしれないが,自分からするとどれも当たり前のことで,特に目新しさはなかった。

1点,興味深い表現だと思ったのは,
P.91 事業側と開発側が協働の関係を築く
ためには,
P.92 「機能ありきで期間を見積もる」のではなく,「期間ありきで機能を見積もる」
という表現である。

論理的には見積もりという作業は変わらないのだが,
決まった納期の中で,
出来る限り(後の保守性も含めて)良いソフトウェアを動く状態で作る
という(ソフトウェア)開発のあるべき姿を端的に表せている気がする。

全ての開発が,タイミングを逃せば,その効果は限定的なものになってしまう。
よって,与えられた期間で,現状ある利便性は失わずに,どこまでできるか,という考え方はとても大切だと思った。

 

 

 

【書籍情報】
統計学大百科事典 仕事で使う公式・定理・ルール113
石井 俊全
出版社: 翔泳社 (2020/7/8)
ISBN-13: 978-4798162805

【概要・コメント】
若手研究者から推薦頂いたので読んでみた。

統計的解析を行うとき,普段はMATLABなどのツールのマニュアルを読んで済ませてしまっているが,
どのような手法がどのようなときに利用すべきかという全体像を理解していなかった。

この書籍は,そのような統計分析の全体像を俯瞰するのに適した書籍である。

まず,この書籍は学術書や教科書の部類ではない。
統計を使うユーザのための実用書である。
そのため,各手法の詳細な数式展開や証明はほとんどない(大幅に省略されている)。

一方で,具体的な数値例を必ず1つ示すことで,「その手法が何に使えるのか?」を明示してくれている。

結局,多くの学問はその知識・技術を使ってみることで,その価値に気づくと思うので,本書のような書籍は統計学の入り口として優れていると思われる。
但し,ボリュームはそれなりにあること,そして証明はほとんどないので,大学の教養課程で学ぶような教科書を,本書を読んだ後に目を通したほうが,各手法を深く理解するのにはよいかもしれない。

個人的に感動したのは,「Chapter 11 ベイズ統計」である。
この章,おそらく自分が読んだ本の中で,一番簡単にベイズ統計のことを説明していると思う。
ベイズ統計に苦手意識を持った人でも,この章を読めば雰囲気はつかめるので,ぜひ挑戦して欲しい。

 

 

 

【書籍情報】
177-いまの科学で「絶対にいい! 」と断言できる 最高の子育てベスト55
トレーシー・カチロー
出版社: ダイヤモンド社 (2016/11/18)
ISBN-13: 978-4478066331

【概要・コメント】
幼児教育 How to 本の1つである。

まず,このレビューは本書の最初の40ページほどしか読まずに書いたものであることを断っておく。

その上で,本書を読んで科学的根拠にもとづくとレビューしている人は,何を考えているのだろうか?と疑問しか残らない。
まず,科学と謳うならば実験で得た,もしくは分析したデータを示すべきである。
仮に紙面の都合でデータを示せないのであれば,せめて文献を引用すべきである。
本書には,データも引用も全く書かれていない。

そして,科学に「絶対」はない。そして"断言"もない。
その謙虚さを持たない者に科学を謳う資格はない。

以上より,本書の内容を信じることはできない。

子供の教育に不安を感じる,保護者の気持ちを揺さぶって書籍を売るのはやめて欲しい。
世の中にはすでに情報が溢れているのである。
こんな残念な書籍に時間を費やすほど,保護者には時間的余裕はないのだ。