【書籍情報】
ソフトウェア開発にChatGPTは使えるのか? 設計からコーディングまでAIの限界を探る
小野 哲
出版社: 技術評論社 (2023/7/12)
ISBN-13: 978-4297136154

【概要・コメント】
この本をどのように評価したら良いのか?
とても難しいと感じた。

まず、この本を読んで意味がないということはない。もしChatGPTを使ったことがなくて、使用をためらっているのであればぜひ読んでみて欲しい。
しかし、もしChatGPTを使ったことがあるユーザであれば、わざわざこの本を読む価値があるかと言われると疑問である。

ChatGPTの利用事例集でよければ、YouTubeにも大量にアップロードされている。
大量の類似データがある中で、あえてソフトウェア開発にターゲットを絞り込んだ情報を、書籍で、文字で読む必要があるか?
という疑問が、この本の評価を高くするのをためらう理由である。

また、本書の後半はChatGPTのAPIを使ったサービスの作り方を紹介しているが、それは「ソフトウェア開発にChatGPTを使うこと」に含めるべきだろうか?いや、「ChatGPTを使ったソフトウェアを開発すること」ではなかろうか。

その意味で、本書の後半は期待した内容とは異なり、大きな減点となってしまった。

もし著者の主張のように、ChatGPTがソフトウェア開発の強力なツールであるならば、本書の後半のようなAPIの使い方例は不要なはずであるのだ。

自分が本書に期待したのは、ライブラリ(APIや関数)の使い方を身につける、今の残念なソフトウェア開発から、より知的好奇心を満たしてくれる真の創造性溢れるソフトウェア開発の革新のヒントだった。
しかし、最後の2、3章の記述を見る限り、やはりAPIや関数を使いこなすことが現代のソフトウェア開発であることは変わらないと感じて、少し残念な気持ちになった。

繰り返すが、本書を読んで意味がないとは言わない。
でも、本書を読むよりも、もっとChatGPTについてのヒントを与えてくれる(無料の)コンテンツは世の中に溢れていると思う。

 

 

 

【書籍情報】
図解よくわかるフードテック入門
三輪泰史 (編著)
出版社: 日刊工業新聞社 (2022/3/1)
ISBN-13: 978-4526081842

【概要・コメント】
明けましておめでとうございます。
2025年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、2025年(読み始めたのは2024年だったが)読み終えた1冊目である。

図書館で軽い気持ちで借りた本が、面白そうだったので購入して読んでみた。

大手シンクタンクに所属する複数の筆者たちが、フードテックというキーワードをもとに、現在の日本の食料にまつわる問題や、その問題の解決に資する技術に関して広く・浅く記述した書籍である。

結論からいうと、買ってまで読むほどの本ではないという感想である。
近年の農業やバイオテクノロジーに興味があったのだが、正直なところ全体的に内容が浅いので、小学校の教科書を読んでいるような気分になった。

なぜそのような気持ちになったのかを考えてみたが、やはり本に強い主張(思い)が無いためだと思われる。食料に関わる複数の事実がきれいに並べて書かれているのだが、それらを結びつける統一的な見解やポリシーが文章から読み取れないため、この本を読んで、読者に何を感じて欲しいのかが曖昧になってしまっているような気がする。

筆者の主張は控えめに記述し、多くの専門家が事実と認定していることを中心として述べるというのは、まさに義務教育の教科書(そしてシンクタンクの研究者)に求められている機能である。主張の少ない教科書としての価値は一定以上あるのかもしれない。

しかし、1つの書籍として見た場合、筆者に思いが伝わらないものは、読み応えがなく、満足度が高まらない。

以下、本書の中で興味深いと感じた記述である。

  • P.16 食肉の国産・輸入の割合を把握する際には、<食料自給率ではなく>「食料国産率」が使われます。<中略> 食料国産率では飼料の自給率を勘案しないものとなっています。
  • P.44 DAIZ株式会社<中略>は、発芽大豆を使った「ミラクルミート」を開発し、<中略>製造・販売を行っています。
  • P.53 表3-3に示すように、ベジタリアンには複数の類型があり」、制限の程度にも幅があります。<中略>ヴィーガンとは、<中略>完全菜食主義者とも言われます。
  • P.58 マグロ、サーモンなどの水産資源を細胞培養で作る「培養魚肉」の研究も進められています。
  • P.66 食品残渣によるエコフィードを活用した資源循環型の牧畜も<中略>もともと無駄になる残渣を資源として活用し、バイオマスのリサイクルループの構築において重要な役割を果たしています。
  • P.72 植物性タンパク質の代表格である大豆と比較して、藻類は15倍のタンパク質生産能力を持っていると試算されています。
  • P.80 生物資源の活用には、食料(Food)・繊維(Fiber)・飼料(Feed)・肥料(Fertilizer)・燃料(Fuel)と段階的に利用する「バイオマスの5F」という基本的なな考え方があります。
  • P.110 貸し農園、体験農園、家庭菜園、ベランダ菜園など<中略>のような都市部での農業は「マイクロファーミング」と呼ばれています。<中略>マイクロファーミングスマート農業化されることで<中略>長く続いてきた「農業生産は農村、消費は都市」というステレオタイプな構図を崩すことができます。
  • P.112 野生植物を人間に都合のよい形質を備えた栽培植物にしていく過程を「栽培化」と言います。
  • P.122 外来遺伝子導入のないゲノム編集食品を販売する場合には、厚生労働省などの安全性審査は不要で、届出のみというルールになりました。
  • P.131 魚を通常の飼育水よりも塩分濃度の高い環境に移すと、その直後に血液塩分濃度が上昇し、筋肉細胞中の遊離アミノ酸含量、つまり旨味を一過的に上昇させることができます。
  • P.140 農村ラストワンマイル配送モデル 農業者が農産物を地域のJAや直売所などに出荷した際、<中略>帰路に積載率が低下する貨物車・軽トラックなどの空きスペースを活用し、農業者が近隣住民へのラストワンマイル配送を担当するというモデル

 

 

【書籍情報】
ビジュアルガイド ジェット旅客機のしくみ
中村 寛治
出版社: SBクリエイティブ (2023/8/8)
ISBN-13: 978-4815617356

【概要・コメント】
タイトルの通り、ジェット旅客機の仕組みについて豊富な図を用いて解説した書籍である。

出張や旅行で我々が利用しているジェット旅客機がどのような仕組みで、そしてどのようなUI (User Interface)で操作されているのかに興味があり手に取ってみた。

結論から言うと、本書でしくみを理解できる人は、すでに相当な知識を持った方だと思われる。
ビジュアルガイドとあるように、たしかに沢山の図が用いられているのだが、図の説明が少なく、また唐突に(難しい)専門用語が出てくるため、初学者にはなかなか受け入れがたい書籍と言わざるを得ない。

各種飛行機の設備や操作パネルなど、非常に精緻な図が掲載されているにも関わらず、十分な説明がされていないのは勿体ないとしか言いようがない。
最初の飛行機の物理に関わるところは、比較的平易な表現で語られているので、読みやすいが、実際の操縦系の説明が始まったところからは、正直着いていくのが難しかった。

1つ、この書籍を読んで興味深いと感じたことは、ボーイング社が飛行機を操縦するのはあくまでパイロットであるとの設計指針であり、最終的にはパイロットの権限で多少のイレギュラーな操作が許容されている一方で、エアバス社は厳密にシステム側が受け付ける操作可能範囲を定めており、そこを逸脱することを許容していないという点にある。

やはり、Cowboyの国、アメリカで設計される飛行機には安全も(機械ではなく)人が自ら勝ち取るという考え方があるのだろうか。
このような設計指針の違いも含めて、やはり正しい設計を1つに定めることが容易でないことを思い知らされる。