おはようございます、一葉です。
こちらは総拍手94949に該当したスカイシー様からのリクエストの続きです。
お楽しみいただけたら幸いです。
前のお話こちら⇒【1 】
■ 森のクマさん~運命のお導き~ ◇2 ■
とても寒い朝だった。
まるで空の全てを隠そうとするかのように灰色の雲が広がっていて、温みが辺りに一つもない。
せめて太陽の光でもあればもうちょっと違ったでしょうに。
キョーコは公園の外郭に沿った歩道から、ふと園内に目を向けた。
公園・・・と言っても子供が遊べるような遊具は一つもなくて、どちらかというと近隣住民の憩いの場としての園である。
そのせいか園内にあるものと言えば、休憩所やベンチ、花壇や芝生といったもののみ。
けれど公園は決して平らに作られているわけでもなくて、所々に小高く隆起した場所があるせいか子供たちの遊び場になっていて、また木々の背もそれなりに高いから、夏なんかは木陰になった芝生でお弁当を広げている親子の姿も見受けられる場所だった。
春になればもうちょっと広がるのだろう芝生は、残念ながらいま見渡した限りではかなり存在感が薄くなっている。
土が見えているそこかしこではハトやスズメがいつものように集っていた。
足元をつついている仕草を見れば、朝食を摂っている最中らしい。
キョーコは微笑まし気に口元を緩めた。
ふふ。かわいい。
そうよね、みんなで一緒に食べた方がご飯は絶対おいしいもの。
いいな、そういうの羨ましい。
でも・・・と思った。
でも冬の時期のご飯って、野鳥たちはいったい何を食べているのかしら、と。
そんなこと、考えたこともなかったのに。
今日に限ってそんな疑問が沸いたのは、恐らく先ほど見たニュースの影響に違いない。
小首を傾げたキョーコはつい確認してみたい衝動に駆られた。
驚かさないように気を配り、足音を忍ばせながらハトたちに近付く一歩を踏み出した瞬間に野鳥たちが一斉に飛び去った。
「 あ・・・っ・・ 」
つられて空を見上げたキョーコの眉尻がこれ以上ないほど下がった。
ごめんなさい。
せっかくみんなでご飯を食べていたのに・・・。
ハトたちが飛び立ったのはキョーコの足元で音が弾けたせいだった。
しばらくずっと曇り空が続いているから、乾燥しきった小枝が悲鳴を上げたのだろう。
何と忌々しい小枝か、と思いながら自分の足元を確認したキョーコは、けれどその想像が間違っていた事に気づいた。
音を立てたのは小枝などではなかったのだ。
それどころか、そもそも木々の根元を土色にしていたのは土ではなかった。
キョーコは目を見開いた。
「 ・・・っ・・・うっっっそ。これ、全部どんぐりだったの? 」
びっくりした。信じられないほど驚いた。
毎日見ていた景色だったのに、その事実に全く気付いていなかった。
土を土色に見せていたのは土ではなく、無数のどんぐりだったのだ。
こんな事があるのだろうかと思った。
山ではナラ枯れが深刻だと言っていたのに、なぜここにはこんなにも多くのどんぐりがあるのだろう。しかも今は冬なのに。秋はとうに過ぎ去ったというのに。
キョーコはそのまま、誘われたようにどんぐりを拾い始めた。
学校に行かなくちゃ・・・なんて思いもしなかった。
腰をかがめてどんぐりを手にしてすぐ、キョーコの脳裏で懐かしい記憶が呼び起こされた。
そういえば、以前にもこんな風に木の実を集めたことがあったっけ。
そうだ。どうして今の今まで忘れていたのだろう。
いまよりずっと子供だった頃。母がいなくなって旅館に預けられてから。
私は寂しい時、悲しい時、思わず泣きたくなった時、誰にも迷惑をかけまいと一人で山に行っていた。
そんなことを繰り返していたある夏の日。私は彼と出会ったのだ。
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うっ。だいぶ短くてすみません。
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