いつもありがとうございます、一葉です。
弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、kogumaru様からお与かりした記念リクエストの続きをお届け致します。
■ あなたに響く ◇4 ■
「 ・・・いつだって君に会いたいと思っている俺の気持ち、本当は分かっているんだよね? 」
超絶至近距離で
右手で壁ドンをしながら
気持ち流し目で私を見つめ、甘い言葉を囁いているのは男性アイドルの宝庫と言われるジョニーズ事務所に所属している、いまをときめくアイドルさん。
とはいえリアルで口説かれている訳ではなくて。
つまり、ドラマの相手役なのである。
シナリオ通りに照れた演技で、シナリオ通りに彼から顔を反らしたけれど、頭の中で私はこんな事を考えていた。
・・・うーん。やっぱりこの人じゃトキメけないわ。
おかしいわね。トップアイドルと言われている男性なのに。
敦賀さんにこれをされたらメロメロどころか腰砕けになれるのに。
「 はい、カット!OK。キョーコちゃん、いいよ、その照れっぷり!嬉しいけど恥ずかしいって感じがもろに出ててキュンだった! 」
「 わー、嬉しいです。ありがとうございます! 」
でしょうね。だって途中から敦賀さんのつもりで演っていたから。
あの日から今日がちょうど3日目だった。
この数時間後に私は敦賀さんと話し合える。
社長さんのお宅で・・・。社長さんの。
てっきり敦賀さんの家でお話するのだと思っていたのに。
「 考えれば考えるほどわかんないわ。なんで社長さん宅なんだろ?…はっ?まさか!! 」
まさか敦賀さん、日本での仕事がなくなったのをこれ幸いと考えて、もしかしたらアメリカに拠点を移すつもりじゃないわよね?!
それで、社長さんを交えて今後のことを私に説明するとか、そういうことじゃないわよね?!!
「 それでは京子、本日はあがりとなります。ありがとうございました! 」
社さんの声が響いたことで我に返った私は、社さんに続いて慌てて挨拶を済ませた。
さて、行くよと促されて撮影現場を遠のく。
「 それでキョーコちゃん。送るのは社長宅でいいんだっけ? 」
「 はい、敦賀さんがそう言っていたので。でも、どうして社長さん宅なんだと思います? 」
「 俺はそれ、むしろ妥当なセンだと思うけど。考えてもみなよ。蓮の家にキョーコちゃんを置いて二人のマネージャーの俺がさっさと帰るって言うのは……ねぇ? 」
「 あぅ、そうですよね。それだと状況的にかなりおかしいですよね。まだ 」
二人で車に乗り込み、間もなく車が発車する。
社さんがラジオのスイッチを入れると、ここでも敦賀さんの整形疑惑ネタが取り上げられていた。
『 ・・・という、敦賀さんが整形していたなんて信じません!さんから頂きました 』
『 このお話、世間でいま凄く騒がれていますよね 』
『 そうだよね。ご本人も所属事務所もコメントを出さないから余計に話題になっている節があるっていうか 』
『 不倫していた訳じゃあるまいし、僕は早々にコメントを発表したほうが得策だと思っているんですけどねー 』
『 え?ってことは、ヤマさんは敦賀さんが整形しているって思っているんですか? 』
『 知らないよ、事実がどうだかは。僕は知らないけどね、でもマネージャーさんがこう言っていたらしいじゃない。過去の敦賀くんに囚われず、いまの敦賀くんの頑張りを認めてあげて欲しい、みたいなことを。それを聞いたら誰だってそう思うんじゃないの?やっぱりさ… 』
と、流れた所で音声がぶちっと切れた。
社さんが消したのだ。
「 違う!俺は、ありのままの蓮を見て欲しいって言っただけだ!なのに… 」
「 ありもしない裏を読まれちゃったんですよね 」
「 あー、もう失敗した!!社長に放って置けって言われていたのに、少しでも蓮のために出来ることをなんて考えた俺がバカだった。よりにもよって俺が蓮の足を引っ張るなんて…。キョーコちゃん、ごめん。今日、蓮に会ったら俺がゴメンって言ってたって、そう伝えておいて、あいつに 」
「 えぇ?社さんは寄っていかないんですか? 」
「 俺、反省しているから 」
「 気にしすぎだと思いますよ。それに、言わなくても敦賀さんは分かっていると思います。社さんがそんな思惑で発言した訳ではないってことぐらい 」
ある現象が、一時的に広まることを流行というけれど、正直、私はこの話題がここまでの波になるとは想像すらしていなかった。
でも、こうなってみて思い知った気がする。
流行の波に乗りやすい人、いわゆる周囲に感化されやすい人間というのが世の中にどれほどいるのかという事実を。
そういう人たちは大抵、どんな波にも気軽に乗る傾向があって、そういう人たちは誰もが、皆がやっているから自分も…と、大河に身を任せることに躊躇を持たない傾向にある気がする。
総じてそういう人たちは自分の発言に責を負わないという特徴も。
そう言えばこんなこともあったっけ。
某少年漫画の人気が一気に沸いたとき、よく耳にするようになった言葉がある。
○○の呼吸・・・とかいうやつだ。
それを悪いと言うつもりはないし、波に乗って楽しめることなら存分に楽しめばいいと思う。
だけどいま、敦賀さんのことを何も知らないくせに彼をバッシングしている人たちがいて。
その中にはきっと、自分もその波に乗っただけ、とまるで何事も無かったように言う人がいるのだ。みんなもやっていたでしょって。
それを考えるだけで私の肩は怒りで震えてしまいそうだった。
個人がSNS発信できるようになったのもあって、世間に無責任な評論家が増えた気がする。
なぜ、見ず知らずの第三者から敦賀さんが攻めを受けなければならないの。
これは自分の考えだから、なんて逃げ道さえ用意しながら、彼らは自分の物差しのみで測られた善悪を否応なしに押し付けてくる。
どうして気づけないの。
その人がその熱い思いに使った時間は
10年後。その人にとって何の得にもなっていないと思うのに。
「 じゃあ、蓮によろしく言っといて、キョーコちゃん。それから、本当にごめんって 」
そう言って社さんは、私を社長さん宅の前で降ろすと、そそくさと帰ってしまった。
それを見送ってから私はベルを鳴らし、出て来てくれたルトさんに導かれて廊下を進んだ。目の前に大きな扉が立ちはだかる。
どうぞと促されて開かれたその先に、ソファテーブルに何やらを広げた状態で、社長さんと敦賀さんが優雅にソファに腰かけ談笑している姿が見えた。
「 それにしても、ずいぶん精巧に出来あがるものなんですね 」
「 だろう。そもそも今はフェイクニュースでさえ見破るのが困難だと言われているからな。写真なんざお茶の子さいさいだ 」
社長さんが写真と言ったから、てっきり敦賀さんのビフォー写真だと想像したのだけど、足早に近づき覗き込んだそこにあったのは全然違うものだった。
いえ、正式には正しかったのだろうけれど。
「 なんですか、これ。私の写真じゃないですか。しかもこの前、番組で使う予定があるから用意してくれって言われてお渡しした、子供の頃の・・・ 」
「 そうだ。用が済んで戻って来たものだ。それで、こっちが蓮の子供の頃のものだ 」
どきっ?!
敦賀さんの子供のころ?!
社長さんに差し出された写真を両手で受け取った私は、写真を一目見て理解に苦しみ、そして言葉を失った。
「 ・・・っっ・・・え?? 」
「 それね、もしかしたらと思って社長に訊ねて見つけてもらったものなんだ。うちの父が近況報告として送っていた写真なんだけどね。それを見せたくて君にこっちに来てもらったんだけど 」
「 はい?何言って??だってこの写真に写っているのって、え?え?コーン????え?なに、どういうこと?? 」
「 それでな、こっちが最上くんと蓮の子供の頃を合成したものだ。良く出来ているだろう 」
「 合成?え?なに、え?何言って????え???なんでコーンの写真がここに?え?だってコーンは妖精界の?????え???? 」
私は完全にパニック状態になってしまって
コーンの写真を見ては敦賀さんを見下ろして、再びコーンの写真を見てはニヤニヤ顔の社長さんを見下ろして、そしてまたコーンの写真を凝視した。
え、なに、どういうこと?
そもそもどうしてここにコーンの写真があるの?!
一体全体、どういうことぉぉぉぉ????
「 完全にパニくっておるな。蓮 」
「 分かってます。最上さん、ひとまず落ち着いて 」
「 落ち着いてます!私は落ち着いていますよ! 」
「 でも、パニックにはなっているだろ? 」
「 当たり前じゃないですか!ならないほうがどうかしていますよ! 」
「 くす。うん、そうだよな。分かってた。ちゃんと話す。ちゃんと説明する。でも、先にこれだけ言わせて最上さん 」
「 っっっ 」
「 キョーコちゃん。俺の名前は、コーンだよ 」
「 その、セリフは……っっっ 」
「 やっと君に全てを話せる。どうか信じて。俺の名前はコーンなんだ 」
「 意味が全く分かりません!! 」
「 だからちゃんと説明するってば。そのために君にここに来てもらったんだ。俺の言葉だけじゃ足りないと思ったから 」
ここから数時間かけて敦賀さんが説明をしてくれたおかげで
私は初めて
コーンが妖精界の王子じゃなかったという事実と
コーンが敦賀蓮という芸名で、日本で芸能活動をしていた本当の理由を知るに至った。
だけど、半日もかけた割には
たぶん私は理解できていなかった。
⇒◇5 に続く
やっぱりこのお話、7話で完結が妥当だと思われますw うひー。
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