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■ あなたに響く ◇2 ■
それでも当初、関係者の誰もがこのネタに関して特に懸念を示していなかったと思われる。
その証拠に、翌日の朝、私を迎えに来てくれた社さんは実にあっけらかんとしていた。
「 なに。今朝のテレビ番組で蓮の整形疑惑ネタが取り上げられていたってこと? 」
「 そうです。なんで見ていないんですか、社さん。しかも面白おかしく笑っていたんですよ。この話題のどこが面白いのかしら 」
今朝、私はおかみさんと食卓を囲み、削りたての鰹節から丁寧にだしを取ったお味噌汁の美味さ加減を満喫していた。その最中、ふと耳に入って来た話題で私は口の中の味噌汁を豪快に吹き出しそうになったのだ。
なぜかと言うと、社さんに訴えた通り、TV番組のエンタメコーナーで敦賀さんの整形疑惑ネタが取り上げられていたから。
いえ、正確に言えばビフォー写真の有無についてだったのだけど。
『 なに、君。敦賀くんの整形疑惑を検証しようとしたの? 』
『 違いますよ!ただ、気になっちゃって、それで敦賀さんのビフォー写真を私が発掘しちゃおうって盛り上がりまくって検索しまくったんです。でも残念ながらそれらしいのが全く出て来なくて~ 』
『 そりゃそうでしょう。そんな簡単に出て来るなら、そもそもその番組の司会者がゲストの敦賀くんに直接そのネタをぶつけたりしないでしょうからねぇ 』
『 言われたらそうなんですけど、そうなんですけど!!それで、だと思うんですけど、昨夜の今朝でもう、敦賀さんのお名前や整形疑惑、ビフォー写真といったワードが検索の上位になっていたんです。それで、私と同じ様に全国の皆さんも気になっていたんだなーって実感しちゃったっていう話ですよ 』
・・・と言いのけた女性アナウンサーのセリフを思い出し、私は社さんの目の前で表情を白けさせた。
「 俺が朝の番組を見ていなかったのは、こうしていまキョーコちゃんを迎えに来ているからだよ。今日から新しい現場なんだから取り敢えず笑顔、キョーコちゃん 」
「 社さん。敦賀さんは今日もお忙しいんですよね?社さんの今日のスケジュールってどうなっているんですか 」
「 俺は今日、キョーコちゃんに付きっ切り。蓮にはルトさんが付いてくれているから大丈夫だよ 」
「 それ、本当に大丈夫なんですか?ルトさんのせいにするつもりじゃないですけど、社さんが付いていなかったから整形疑惑なんて在りもしないネタを振られちゃったんじゃないですか?社さんは私なんかより敦賀さんについた方が絶対にいいと思います 」
「 そういう訳にはいかないでしょ。俺はいま実力派女優と言われている京子ちゃんのマネージャーでもあるんだから 」
「 でも本来は敦賀さんのマネージャさんです 」
「 キョーコちゃん!気持ちは分かるけど、そんなネタはどうせすぐ消えてなくなるよ。蓮を心配する気持ちは分かるけど、過剰に反応するのは良くない。理由は言わなくても分かっているよね? 」
笑顔で鋭く諭され、私は返事に窮した。
現場に行くから早く乗ってと促され、後部座席に乗り込む。私に続いて車に乗り込んだ社さんが、運転席からいつもの調子で出発するねと断ってから、静かに車を発進させた。
分かってます。
いま私がしゃしゃり出た所で、何の意味もないってことぐらい。
2年前、両想いになったとはいえ、私たちは恋人同士になった訳ではないのだ。
つまり世間的に私はまだ、同じ事務所に所属している敦賀さんの後輩でしかない。その姿勢でいなければならないのだ。機が熟すまでは。
私たちのことを知っているのはマネージャーの社さんだけで、もしかしたら社長さんは察しているかもしれないけれど、それを自分で確かめた訳ではないので断言はできない。
あれこれ考えているうちに車は目的地に到着した。
「 着いたよ、キョーコちゃん。いつまでも考え込んでないで。実力はあるに越したことないけど、印象は最初が肝心。キョーコちゃんらしく挨拶!ね 」
「 はい 」
まだだいぶ時間までは間があった。けれど打ち合わせ室には既に半数以上が揃っているようだった。みんなで何やらワイワイ話している。
挨拶と同時に私が一礼をしてから入室すると、一斉に私に視線を向けた人たちが一気にこっちに向かって来て、思わず腰が引けてしまった。
なぜ集まって来たのかは話題からすぐにわかった。
要は私がLME所属だったからだ。
「 おはようございます、LME所属の京子です。どうぞよろしくお願いします! 」
「 え、京子ちゃんってLME所属? 」
「 あ、京子ちゃん、来たぁ! 」
「 おはようございます、ねぇ、ねぇ、京子さん!ちょっといい? 」
「 ひぇええええっっ?! 」
「「「 敦賀くんって整形なの??? 」」」
「 なっ…ここでもそのネタ。今朝の報道番組でも似たようなことを言っていましたけど、どうしてですか 」
「 だって、気になるじゃない!言われてみれば敦賀くんって、お顔が整い過ぎている気がするしぃ 」
「 あたしは天然だって信じているわよ!敦賀くんのことをデビュー当時から追っかけてるから分かるの!不自然なことなんて全然なかったもの 」
「 そうかなー。検索してもビフォー写真が一切出てこないって怪しくないですか?俺は同じ男として疑いを拭えないっていうか。例えば鼻!東洋人の鼻は横から見ると必ず凹凸している箇所があるもんなんだけど、敦賀くんの鼻筋ってきれいすぎると思いません?スーッとまっすぐなのは整形の証拠だって言いますよ 」
「 あとさ、顔のしわを取る整形をすると、驚いた時に目を見開いても額に皺が出ないって言うの知ってます?敦賀さんってそもそも驚いた顔とか見せたことないじゃないですか。それってフェイクじゃないかなって。驚き顔を隠すために~ 」
「 うわ、男性陣って、そんな目で敦賀くんを見ていたんだ 」
「 んな訳ないでしょ!よく考えたらって話ですよ 」
「 本当かしら。それって単なる嫉妬からじゃない?敦賀くんがカッコよすぎるから 」
「 色眼鏡~ 」
「 あーあ、顔がいいと問答無用で女性たちが味方してくれるからいいよなー。俺も敦賀くんみたいに整形しちゃおうかな~ 」
「 なに言ってるんですか!まるで敦賀くんが整形しているみたいな言い方しないでください!さっきも言ったけどデビューしてから敦賀くんの顔が突然変わったなんてこと全っ然無いんですよ!敦賀くんが整形なんてしているはずがないです!あたしは敦賀くんを信じています!ねっ、京子さんもそう思っているわよね?敦賀くん、整形なんてしていないでしょ?! 」
「 ・・・えっと、その前に、どうして私に。デビュー前から敦賀さんのことを知っているマネージャーの社さんが今ここにいらっしゃるのに… 」
「 それは京子さんが敦賀くんと同じ事務所で、敦賀くんと同じマネージャーさんについてもらっているからよ!そのせいで他の人よりちょっぴりだけ敦賀くんと仲が良いんでしょ。だから社さんさえ知らないことを知っているんじゃないかと思っただけ! 」
・・・・・ちょっぴり仲がいいぐらい?・・で、どうして社さんより知っているかもって想像しちゃうのでしょうか?
敦賀さんの非公式ファンサイト、日本女子蓮盟には業界のスネークもかなりいる、と社さんから聞いている。
そこには特定班というのがいて、日夜情報収集に励んでいるとか。この人がそうじゃないとは言い切れない。
情報収集って、なんの?
なんて、ダメよ、余計なことを考えちゃ。
社さんのアドバイス通り、最初が肝心なんだから。
「 私も、敦賀さんは整形なんてしていないと思っています。ただ、敦賀さんは役者としてのプライドが人一倍高い先輩なので、もし役の中で整形前後なんていうのがあったとしたら、やっちゃう可能性は捨てきれないかもっていう想像は出来ますけど。社さんはどう思います? 」
「 それ、否めないね。蓮の仕事に対する熱量はデビュー前から凄かったから。とはいえ、デビューして割とすぐに実力派・若手ナンバーワンなんて言われるようになった蓮だから、整形前後なんて役をもらったとしても実際に整形なんてしないと思うよ。きっと蓮なら演技でそれを表現する。絶対にね 」
そう言って自信満々に微笑んだ社さんはさすがの貫禄だった。
懐疑的な雰囲気を醸していた男性陣たちすら、納得したのかすぐ引き下がってくれた。
そして、こんな事があったのに、やっぱり社さんはこのネタに関して特に気にした様子をみせなかった。
実はこの日の夜、私はだるまやに帰ってから、試しに自分のビフォーを検索した。
正直、子供の頃からショータローのせいでずーっと同級生にハブにされていたから、アイツのビフォー写真が出回る事はあっても、私のものは出ないだろうと予想していたのだけど、あの女性芸人が言っていたように、普通に卒アル写真が出てきてびっくりした。
「 誰よ!集団写真とはいえ、こんな簡単に横流ししちゃってくれているのは! 」
でも、なるほど。
こんな風に出てくるものなんだ。
そこで、試しに敦賀さんで検索してみたけれど、出てきたのは最新の記事ばかり。
本当に何も出てこないと嘆いている女性のつぶやきが多く、他にも敦賀さんの整形を推察検証してみようといった内容とか、そういう感じのものばかり。
そこでふと思い出した。
そう言えば随分前、私は敦賀さんに対して不思議に思ったことがあったっけ。
デビューと同時に売れちゃっている人なんだと思っていたのに、意外にも敦賀さんは新人時代にたくさん失敗していた人だったのだ。
「 でも、リストラ俳優だった事って一度も話題になっていないのよね 」
だから、その話を聞いたとき
敦賀さんはそれまで日本で活動していなかったんだろうって私は連想したのだ。
それはたぶんその通りなのだろうと思う。だって今日、社さんがそう言っていたから。
敦賀さんは割とすぐに若手ナンバーワンなんて言われるようになったって。
「 だからビフォー写真も全く出てこないのかな・・・ 」
そういうことも、いつか教えてもらえるのだろうか。
敦賀さん本人の口から。それはいつになるだろう。夢を叶えた敦賀さんは、いつ私に教えてくれるだろう。
この日の私もまた、社さんと同じように
そのうちこの話題はどこかに消えてゆくのだろうと軽く受け止めていた。
このとき私の頭を占めていたのは、夢を叶えた敦賀さんと自分との関係性がいつ変わる事になるのだろう…ということについてだった。
けれど、敦賀さんのアンチファンの人たちはたぶん聞き流すことが出来なかったのだ。
どれほど検索しても何も出てこないという事実が気に食わなかったのか、LMEの公式サイトには敦賀さんに対する特定できない人物からの誹謗中傷の書き込みが日を追うごとに増えて行き、並行してあらゆる番組で敦賀さんの整形疑惑ネタが取り上げられるようになっていった。
そこまで拍車をかけることになったのは、きっとLMEが静観姿勢を貫いたからに違いない。
本来なら、アメリカでブレイクしたことで益々忙しく動き回るはずだったのに。
トーク番組放送からちょうど一週間後に、敦賀さんの日本での仕事が全面ストップとなってしまったことを、私は社さんから聞き及んだ。
「 え?敦賀さんのお仕事が全て白紙に?なにそれ、信じられないです!そんなことがあってもいいんですか?! 」
「 俺も今度ばかりは正直に言うと驚いてる。それでね、キョーコちゃん 」
時間的に余裕が出来てしまった敦賀さんから、会いたいという連絡が入った。
もちろん、私は二つ返事で了解した。
⇒◇3 に続く
ここで衝撃の事実を告白。このお話、上手にショートカットしていったら5話程度で完結できる見通しがついてしまったwさて、どうしよう(笑)
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