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前話こちら↓
■ 夕焼けを探しに ◇2 ■
社長さんから了承をもらって、社さんが段取りをしてくれた私たちの修学旅行、決行日の2日前。
私と敦賀さんは簡単な変装をして、ジャンヌダルクに向かった。
目的はもちろんお買い物だ。
「 うう…れれれれ蓮さん。どうしてお買い物をするだけでこんな変装をしなければならないのでしょうか 」
「 それは、単純にその方が面白いからだね 」
「 私は面白くないですぅぅ。しかも、敦賀さんを、れれれ蓮さん呼びっ… 」
「 それ、さっきから思っていたんだけどね。俺の名前にレは一つしか付いていないんだけどね、キョーちゃん 」
「 うにゅうっ!!それは、つい緊張してどもっちゃうからですっ!! 」
変装するなら呼び方も変えなきゃな…なんて敦賀さんが言い出して、お互いに下の名前で呼び合えばいいか…なんてサラッと言い放ってくれちゃって。
でも敦賀さんからのキョーコちゃん呼びなんて冗談じゃないって、私はその提案を拒んだのだけど。
だってそんなことをされたら、顔面崩壊の上に軟体動物になっちゃうから。
だからムリ無理ムリ無理、絶対ムリ!!…って拒絶したのだけど、そしたら敦賀さんってば、あからさまに空気を冷やしてくれちゃって、キュラキュラ笑顔を浮かべたの。
『 じゃ、キョーちゃん呼びならいいだろう? 』
…という提案に、もはや逆らうことは出来なかった。
「 キョーちゃん。これならいいと思う 」
…うん、大丈夫。
キョーコちゃんって呼ばれるよりは、いくらか照れを我慢できる。
「 キョーちゃん、聞いてる? 」
「 はびゅっ!はい、すみません、聞いてます、大丈夫です!え?どれですか? 」
「 これ。…か、こっちかな。君ならどっち? 」
「 あ、どっちも可愛い 」
「 …っ…だろ? 」
私のセリフにサングラス下でドヤ顔を浮かべた敦賀さんのそれに、思わず笑いがこみ上げる。
そもそも、お買い物が私一人であったなら変装の必要はなかったはず。
つまり敦賀さんと二人なのには理由があるのだ。
実は社さんがこんな事を言ったのである。
「 修学旅行というからには制服が必須だよな。その方が気分も盛り上がる。…が、俺自身としては蓮の制服姿を見てみたい気もするけど、旅先でその姿を見る現地の人々の反応と心の機微を想像すると、マネージャーとしてそれは回避すべきだという判断に至った。…ということで、二人で似たような恰好をすること、を条件とする 」
つまり平たく言うと、敦賀さんと双子コーデをしろと言われた。
当然のことながら私は異論を唱えた。
だって、敦賀さんの制服姿は確かに問題あるかもしれないけど、私と敦賀さんが同じ格好をすることにだって問題があると思うから。
けど、敏腕マネージャーの社さんがそれを考えていないはずもなく、社さんはこう付け加えた。
「 そこは心配しなくてもいいよ、キョーコちゃん。俺も似たような恰好をするから 」
つまり、社さん曰く
全く同じ格好をしろってことではなくて、例えば上は白のTシャツ、下は茶色のパンツ…みたいな具合いに、ぱっと見の印象を同じにしよってことだった。
そこで、3人で相談し合った結果、これなら制服っぽいだろって事で、上は白もしくはグレーで、下は黒かグレーで統一しようってことになった。
ところが、制服ならともかく私服で私はその色を持っていなかったのだ。
それでお買い物に来たというわけ。
敦賀さんが私の服を選んでいるのは、敦賀さんが持っている服の雰囲気に合わせるためだ。
「 ま、悩む必要ないよな。着替えが必要だろうからどっちも買うことにしよう 」
「 はい 」
「 それと、ついでに帽子も買っておこうか。俺が持っている色に合わせるなら、これか…こっちだな。ちょっと被ってみて? 」
「 はい 」
「 ん、こっちの方が可愛いみたい。じゃ、こっちにしようか。俺もそれに合わせるから 」
「 ……はい、ありがとうございます 」
小学生の時も、中学生の時も、話が出来るような友人さえいなかったから、こんな風に旅行準備のお買い物を相談し合いながらした事なんて無かったし、しかもその旅行が好きな人と一緒なんてそれだけでも気分が昂る。
なのに、カワイイ…とかっっっ。
お世辞とかじゃなく、普通の調子で言われちゃったら、それこそ背中がムズムズする。
「 それとカバンは?グレーのスポーツバッグみたいなのって、持ってる? 」
「 え?そこまで統一させるんですか? 」
「 ……学生って、通学バッグが同じだろ? 」
「 でも、旅行に行くときのバッグは個人個人のものでしたよ。そこまで指定はありませんでした 」
「 なるほど。でも敢えてそこも拘ろう。せっかく社さんが計画してくれたんだし、社さんの時代はそうだったかもしれないじゃないか 」
「 ぷっ…!!…っっ…はい、じゃあそうしましょうか 」
私の気持ちが
秘かに高揚しているのには、もう一つ理由があった。
それは、どこか敦賀さんも嬉しそうにしてくれているから。
社さんから行きたいだろって念押しされて、意図的に行きたいと言わされた感じになっていたけど、その3日後、6月上旬に2泊3日で行くからなって社さんに言われてから、私はもちろん、敦賀さんもずっと旅行を楽しみにしているように見受けられたのだ。
あ、でも・・・・
「 あの、つる…れれ蓮さん? 」
「 ん? 」
「 旅行先って、本当にそこで良かったんですか?行ったことのない場所の方が良かったんじゃ? 」
「 いや、俺は別に特にこだわりがある訳じゃないから。それに、たぶん社さんは社長からいくつか条件を言われたと思うよ。それを踏まえた上で社さんが計画してくれたことだと思うから異論を唱えるつもりがもともと無かったし、それにもう今さらだろ 」
「 そりゃ、まぁ… 」
もう決まっちゃったことだし。
「 行ったことがあるって言ってもそれは仕事で、だったし。しかもあの時はかなり予定を前倒ししたから楽しむどころじゃなかったし 」
「 ……っっっ… 」
「 そんなことより、大丈夫なんだろうね、キョーちゃん? 」
「 ? 何がですか? 」
「 なにが、じゃないよ。明後日は絶対に遅刻せずに空港に来るんだよ?出来るね? 」
「 出来ますよ!なんでそこを心配するんですか! 」
「 心配だからだよ。だって君ってそういうタイプだろ 」
「 そういうタイプとは… 」
「 だから、目標に向かって懸命に頑張ってみたものの、それが過剰過ぎて当日にバテてみたり、前日まで死闘のように頑張った挙句、当日意識が朦朧としていたりしたことがあるだろってこと 」
「 っっっ…それはテストの時の話じゃないですか!大丈夫です。今までだって学校の旅行で遅れた事なんて一回もありませんでしたから! 」
「 でもそれと今回は明らかに条件が違うだろう。君は楽しみにしている事や嬉しいことに心を奪われやすくて、当日にぽしゃるタイプだろ。だからこそ俺は心配しているんだけど? 」
「 確かに楽しみですけど、でも絶対に大丈夫です!!私は間違いなく、お約束時間前に空港に行きますからっ!! 」
「 その言葉、実行できなかったらどうなるか……分かっているね? 」
うわっ。いきなり空気、さむっ!!
「 大丈夫ですっっ!! 」
「 よし、じゃあ今の君の言葉を信じて、この買い物は全て俺が揃えてあげよう 」
「 あっ、そんなことをしていただかなくても… 」
「 すみません。これ、お願いします 」
「 はい、いらっしゃいませ 」
「 待って、つる…っっっ…蓮さん! 」
「 お。初めてどもらず呼んでくれた 」
「 そりゃあそうですよ! 」
つる…って口走っただけで、ひんやり空気を漂わされたら!
「 キョーちゃん、約束だからね? 」
「 はい、はい、大丈夫でございます! 」
なんて、私は激しく大見得を切ったのですが
まるで敦賀さんの言葉が呪詛のように働いて
社さん計画の修学旅行当日の朝
最上キョーコは30分も寝坊してしまいました。
⇒◇3 に続く
旅行って、行くまでの期間ずーっと楽しみでいられますよね!!行く相手にもよるけれどもw
⇒夕焼けを探しに◇2・拍手
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