いつもありがとうございます、一葉です。
弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、clatas様からお与かりした記念リクエストをお届け致します。
こちらは原作沿いです。
45巻巻末にあります、ついに互いの想いを確認し合ったキョーコと蓮…に準じた設定となります。
従いまして、二人は付き合っておりません(笑)ことを念頭に置いてお付き合いください。
なお、こちらはリクエスト成就作となりますので、内容リクエストを頂いても応諾できません。ご了承ください。
■ 夕焼けを探しに ◇1 ■
泥中の蓮の配役が決定し、ようやく撮影が始まった頃。
それまであわあわしていたキョーコちゃんの日常がようやく落ち着きを取り戻した。
2年生に進級したばかりだったのに、それまでオーディションに全力を傾けていた事もあって今日は久しぶりの登校で、学校の様子はどうだったのかをキョーコちゃんの口から直に聞きたかった俺は、社長に呼び出された蓮と一緒に事務所に戻り、ラブミー部室で待っているからと蓮に伝えて蓮より早くキョーコちゃんと顔を合わせた。
「 こんにちはー。キョーコちゃん、いるぅ? 」
「 ・・・・・はい、います 」
部室に入り、返事をしてくれたキョーコちゃんを見てギョッとした。
なぜなら制服に身を包んだままのキョーコちゃんは明らかに暗い表情をしていて、まるで海に落ちた針を探すみたいに目を皿のように見開き、視線でプリントを舐めまわしていたのだ。
「 え、どうしたの、キョーコちゃん 」
「 ……やっぱり、何度探してもやっぱりない… 」
「 ない?ないって何が?何を探してるの? 」
つい…と手渡されたプリントには、芸能コース2年生の年間学校行事予定表と書かれてあった。
それはキョーコちゃんが通っている学校の、今年度行われる予定の行事が記載されている物だったのだ。
俺がプリントを受け取ると、キョーコちゃんは一言呟いてからテーブルに突っ伏し、身動き一つしなくなった。
それでも蓮がラブミー部室に現れると素早く立ち上がって綺麗なお辞儀をみせたけど、それが終わるとまたテーブルに突っ伏して再び身動きしなくなった。
「 最上さん、どうした? 」
「 どうもしないです。もういいんです、私なんて… 」
「 私なんて?・・・・・・社さん、何があったんですか? 」
「 うん、それがさ。これなんだけど 」
「 なんです、この紙? 」
「 キョーコちゃんの学校行事予定表。でな…… 」
「 え。最上さん、修学旅行に行けなくて落ち込んでいるんですか? 」
「 違う。正確に言うと、行けないんじゃない。行事にそれが無いんだよ。つまり行きたくても行けないんだ 」
キョーコちゃんが通っているのは芸能コースがある高校だ。
芸能コースには出席日数が足りない場合の救済措置として、レポート補習により授業に出席したとみなしてくれる救済措置制度がある。
それ以外は特に他の高校と変わりないはずだけど、やはり芸能コースだけに少しカリキュラムが異なってしまうのだろう。
それもやむなしと俺は思った。
そもそも修学旅行に関係なく、芸能人たちが一定数で徒党を組んで街中に出たらどうなるだろう?きっとそんな煌びやかな集団、目立ってしょうがないに違いない。
そう。仕方がないのだ。
彼らは高校生でもあり、芸能人でもあるのだから。
それに、芸能人ならどこに行っても肖像権の問題は付いてくる。
しかも一般人なら何とも思われないことでも、旅先での気まぐれな行動が、世間のバッシングに繋がる可能性だって捨てきれない。
容易に想定できる状況を鑑み、芸能コースでは修学旅行はもとより、旅行と名のつく行事を一切行わないらしいことが行事予定表から見て取れた。
「 ……いいんです。別に。小学生の時だって、中学生の時だって、友達なんて一人もいませんでしたし、だから社会科見学に行ったって、林間学校や修学旅行に行ったって私は一人ぼっちでした。今だって同じです。仲の良いクラスメイトが居る訳じゃありませんから。
だから別にいいんです。修学旅行が初めからないって判って、良かったです 」
なんてキョーコちゃんは言ったけど
それだけ分かりやすく落ち込んでいる様子を見れば、どれだけ修学旅行を楽しみにしていたのか、なんて聞かなくても分かってしまう。
そうだよな。
キョーコちゃんは幼なじみのアイツのせいで、学校は特に楽しい場所ではなかったはず。
でもそれは家の中も同じだっただろうと想像する。
お母さんが、ああいう人だったから。
恐らくキョーコちゃんは旅行と名が付くものに縁がなかったに違いない。家族旅行なんて経験すらないだろう。
だからきっとキョーコちゃんは、学校行事で仲の良い子なんて居なくてもそれを楽しんでいたと思うんだ。
非日常を味わわせてくれる旅行そのものを。
「 最上さん 」
「 大丈夫です、敦賀さん。ただ、すみません。もうしばらくだけこの姿勢でいさせてください 」
「 それは別にいいけど。あのね、君の慰めになるか分からないけど、俺もそうだよ? 」
「 え? 」
「 俺も修学旅行なんて行ったことないよ。
芸能人はね、多かれ少なかれプライベートで犠牲を強いられるものだ。そう教えただろ?君だけがそうな訳じゃない 」
「 ……っっ…はい、そうでした。そうですよね、すみません、私ってば… 」
――――――― そう言えばそうだ。
俺が蓮と出会ったのはもう4年も前のことで、蓮は今のキョーコちゃんと同じ年だった。
そのことに社長は何も言わなかったし
蓮も何も言わなかったから、俺も敢えて聞かずに過ごしてきたけれど、蓮はずっと仕事、仕事ばかりをこなしてきたのだ。
そのときふと、ある芸能人の言葉が蘇った。
『 芸能活動をしていると、多忙ゆえに学校で過ごす時間が少なくなるんだけど、それだけじゃなくて、忙しくて疲れているのかも…と、周りの人も気遣ってくれるのか、誰も話しかけて来なくなる。
自分は芸能科のある学校を卒業したけれど、友達なんて出来なくて、2年間、お弁当はいつも一人で食べていた。
体育の授業でストレッチの相手がいなくて、いつも先生とやっていた。
学校にはフリースペースがあったんだけど、いつもそこに一人でいた。
修学旅行は行きたくないから行かなかった。だって友達が居ないから 』
ファンとしては、人気タレントや人気俳優がぼっちな学校生活を過ごしていたと聞くと、人気者にもそんな時代があったのか…と、親近感が湧くものだけど。
そのとき既にマネージャー業をしていた俺に、そんな感情は浮かばなかった。
寂しかっただろうな、そうだったんだ・・・って。
そんな思いしか。
大きく息を吸い込み、それから俺は満面に笑顔を浮かべた。
「 よし!じゃあ、3人で夕焼けを探しに行くか! 」
「「 ……は? 」」
「 俺達で修学旅行に行こう!キョーコちゃん 」
「 え? 」
「 でも今すぐ予定を立てるのはちょっと無理だから、少しだけ待ってて、スケジュールの調整が必要だから。…で、俺、いまちょっと社長に相談してくるから、しばしここで待機しててくれるか、蓮 」
「 ふえぇっ?ちょっと待ってください、社さん! 」
「 構いませんけど、具体的にはどうするつもりなんですか、社さん 」
「 ん?いま言った通りだけど。俺が引率の先生。お前たちが生徒。…で、俺が二人を修学旅行に連れて行く 」
「 お前たち…って、俺もなんですか 」
「 もちろんな。お前も修学旅行に行ったことないんだろ。だから行きたいだろ、蓮? 」
「 いえ、俺は別に… 」
「 行きたいだろ!? 」
「 ・・・あ、はい。行きたいです 」
「 ふえぇぇぇ…。社さん、それ、本気で言ってるんですか。私たちで修学旅行って… 」
「 もちろん。行くよ、キョーコちゃん。俺ね、やるって言ったらやる奴だよ、本当にね。
まぁ、大船に乗ったつもりで楽しみに待ってて!! 」
俺に任せろとばかりに胸を叩いた俺を見て、蓮は微笑を浮かべた。
楽しみにしています。
目の輝きが、俺にそう言ってくれている気がした。
⇒◇2 に続く
こちらは7話以内に完結する予定です。
ちなみに、ヤッシーが思い出したある芸能人の言葉として引用させていただいたのは、山崎賢人くんのものです。
彼が通っていたのは芸能人とスポーツコースや一般コースの生徒を隔離せず、生徒はみな同等として扱う学校だったようですが、それゆえ逆に友達が出来にくかったのかな、と想像しました。
⇒夕焼けを探しに◇1・拍手
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