SS つみこいびと ◇2 | 有限実践組-skipbeat-

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 現代パラレル蓮キョの続きをお届けです。

 お楽しみいただけたら嬉しいですо(ж>▽<)y ☆


 前話はこちら⇒つみこいびと◇1


■ つみこいびと ◇2 ■





 その日の午後、当たり前のように忙しくはあったけど、いつもより少しだけ張り切って仕事に向き合うことが出来たのは、たぶん、あの子のおかげだと思う。



 俺が事務所に戻れたのは21時少し前で、さすがに大半の人たちが戻って来ていた。



「 敦賀、いま戻りましたー 」


「 おー、蓮、お疲れー 」


「 おっつ!敦賀くん。遅かったねー 」


「 お疲れ様です。やっと終わった。はー、疲れた… 」


「 あとは誰だ?松島主任だけか? 」


「 みたいでーす 」


「 ただでさえ人数少ないっていうのに、社ひとり抜けただけでかなり影響があるよな。みんな、体調管理には気をつけろよ~? 」


「 気をつけろ…って言われてもぉ(笑) 」


「 そうだよ!なるときゃなるでしょ、インフルエンザ!何しろ俺たちは衆人の中で作業するときだってあるんだから 」


「 そうだけども! 」



 エレベーター修理部門というのはそんなに忙しいものなのだろうか…と疑問に思う人がいるかもしれない。でも実際、本当に忙しいのだ。



 エレベーターに乗ったとき、操作盤上方部に貼られている法定検査済みステッカーを目にしたことはあるだろうか。

 それが貼ってあるということは、つまり法律で義務付けられている年一回の法定点検が済んでいるということなのだ。


 しかし検査はそれだけにとどまらない。基本的にエレベーターは、財団法人日本建築設備昇降機センター発行の指針に基づき、一ヶ月に一回の保守点検が行われること、とされているのだ。


 つまり俺たちの日常業務のメインは修理対応ではなく、すでに設置されているエレベーターの保守点検整備なのである。




 実際に現場で行う点検内容は、エレベーターを一時停止し、機械室に入って点検、グリスアップ、清掃、調整をするとともに、カゴ内蛍光管や押しボタンスイッチ、パイロットランプなどの交換をする他、使用頻度によってはメインロープなどを交換する場合もある。


 項目として挙げるなら、機械室環境状況の点検、制御盤の点検・調整、電動機・巻き上げ機の点検及び給油、ブレーキ点検・調整及び注油、乗り場選択器の点検及び注油、調速機の点検及び注油などである。


 これにかかる時間は点検だけで済む場合とそうじゃない場合で明らかな差が生まれるが、たとえば3時間を目安とするならせいぜい一日に3~4基。


 これを一基につき必ず月に一度こなさねばならず、それがどれほど大変な業務であるのか何となく理解してもらえるのではと思う。



 ただ、最近設置されているエレベーターのほとんどには遠隔監視システムというのが採用されていて、これに限っては保守技術員が出向く点検は2~3か月に一回程度と格段楽になっている。

 おそらく修理部の雇用がセーブされているのは業績不振だけが理由ではなく、これもあるのだろう…と薄々俺たちは気づいていた。



 ちなみに俺が所属しているLMEエレベーター修理部は、数年前まで昇降機等サービスセンターという名称だった。

 昇降機とは、エレベーターやエスカレーターのことだ。


 実はLMEエレベーターは以前、エレベーターとエスカレーターのどちらをも取り扱っていたのだ。それが、業績不振になってからエレベーター業務一本に絞られることになり、その際わかりやすいように名称変更がなされた。


 とはいえ、名称が変更されようが従来通りだろうが、俺たちの仕事内容に変わりなく、俺たち自身にはどうでもいいことだった。



「 あー、それにしても毎日クッソ忙しすぎやで。落ち着いてデートもろくに出来んやん! 」


「 え?デート?する相手いたっけ?お前 」


「 いねーわ!ええやろ、言うぐらい、言わせな! 」


「 わかるよ、石橋くん!それを言いたくなる気持ちすっごく分かる!誰だって癒しは欲しいよね! 」


「 はぁ?そこらへんの女子より可愛い顔してんのに、緒方でもやっぱり彼女が欲しいのか 」


「 なんてこと言うの、貴島くん!そんなの当たり前じゃないですか! 」


「 あーほんと、どこかにかわいい彼女、落ちていないかな~。速攻拾いに行くのに 」


「 あれっ?!もしかしたら社って、本当は今日、デートとかだったりして~?!! 」


「 ありうる!社さんってメガネが映える知的美形男子だから、道端で女の子を拾って…ってよりは、あの人が拾われて、とかありそう!! 」


「 なんじゃ、それ?!もしそうだったら俺が許さん!よし!社が出社してきたら晩飯おごらせようぜ! 」


「 あははは。復帰祝いにおごってやるんじゃなくて、おごらせるのか。鬼だな、お前 」


「 違うわっ!もしデートだったら…の話だろ! 」


「 …ってか、社さんって本当にインフルエンザ?敦賀くん、休みますっていう社さんの電話を最初に取ったのって君だったんだろ。実際のところはどうだった? 」


「 社さん?いや、嘘じゃないと思うよ 」


「 本当に? 」


「 もちろん。あのダミ声が演技で出せるなら相当の実力者ってことになるよ。社さんは間違いなくインフルエンザだと思う 」


「 そっか。じゃ、しょうがねぇな 」


「 何がしょうがないんだ、村雨 」


「 別に… 」


「 けど俺、今日、急ぎで入ってきた社さん区域の修理を松島主任に無理やり押し付けられて、結局移動時間分を失って昼休み返上したからちょっと辛かった 」


「 その松島主任ひとりがまだ戻って来ていないんだ。許してやれよ、蓮! 」


「 許すも許さないも、それはお互い様だとは思っているけど… 」


「 敦賀くん!昼ごはん食べられなかったんならお腹空いてるでしょ!晩御飯、これから一緒に食べに行こうよ 」


「 ん?……そうだな。うん、付き合う 」


「 お!いいな、それ。俺も行く!それにしても実際こんな男前なのに誘いにすぐ乗るのは互いに彼女がいないからだよな!修理マンなんてしてるとマジ出会いがねぇ! 」


「 誰か!客先で合コン設定してきてくれ!せめて俺たちに癒しと活力を与えてくれ~! 」


「 あははは。誰が修理マンと出会いたがってんだよ。無理に決まってんだろが 」



 職場仲間10人余りの会話に混ざりながら笑いあい、ふと昼間の彼女の笑顔を思い出した。



 一日の業務報告書をまとめるために修理複写紙を取り出して、目的の紙を見つける。

 直筆のサインを見下ろして物思いにふけった。




『 いますよ、ここに!良かった、お待ちしていたんです 』




 ……最上さん。

 笑顔がキュートでとても感じの良い子だった。


 だから当然、彼氏がいたって不思議じゃないよな、と思う。




『 お疲れ様でした。本当に助かりました 』


『 どうぞお気をつけて。午後のお仕事も頑張ってくださいね 』




 荒れ果てそうな自分の心をあっという間に癒してくれた女の子。

 こんな遅くなっても頑張れたのは、絶対にあの子のおかげだった。



「 お仕事、頑張ってください、か…… 」


「 きゅわっ!なんだよ、突然。気持ちわりーな。壊れたか? 」


「 あっ、ごめん。声に出てた?いや、今日、そう言ってくれた子がいたことを思い出してつい… 」


「 え?なにそれ、どこにいたんだ?かわいい子か?合コンとかしてくれそうか? 」


「 知りませんよ、そんなこと。それに、無理じゃないですか。そういうことを初対面の俺に言ってくれるような子ですよ?どういう子か想像つくでしょうが 」


「 ……彼氏、いそうだな… 」


「 でしょ?! 」


「 そうなのか?!敦賀蓮的ハイスペックスマイルをもってしてもダメなのか?! 」


「 俺に何の期待をしているんですか、何の!! 」



 実は俺、同性、異性問わず、ハイトールのイケメンと言われることには割と慣れていた。

 私服で都内をブラブラしようものなら声をかけてくる女性は一人や二人ではないレベルだ。



 けれど、学生の頃ならともかく社会人になってから知り合った女性と付き合うに至ったことはほぼなかった。

 その理由は至極簡単で、つまり女性はリアリストだからだろう、と俺は分析している。



 実は俺に声をかけてくる異性の大半はなぜか俺を営業職だと想像しているケースが非常に多く、ゆえに歩合いでかなり稼いでいるのだろうと思い込んでいる女性が大半を占める。


 しかしエレベーターの保守整備技術員…正式には昇降機等検査員というのは、有資格技術職ではあるから一般事務よりは上かもしれないが、決して高給取りというわけではないのだ。


 加えてLMEエレベーターは現在、業績があまり思わしくないこともあり、そこに勤めていると知った途端に薄曇りになる笑顔の下で彼女たちが何を考えているかなんてことは丸わかり。



 男は度胸、女は愛嬌…なんていうのははるか昔の話で、外見、性格、高身長がたとえ備わっていたとしても、経済力が乏しい男はそう簡単には選ばれないのだ。


 それに、こっちだってそういう考えの女性はたとえ友人としても付き合いたいとは思わない。だから連絡先を求められても教えたことは一度も無かった。




 それだけにとても新鮮だったのだ。


 俺の仕事がエレベーターの点検員で、しかもLMEエレベーターの社員だと分かっているのにあんなに屈託のない笑顔を向けてもらえたのが予想外に…。



「 あの子…本当に良かったよな。そんなこと言われるって分かっていたら何度行ってもいいって気分になる。

 あーでも、あそこの担当者、本当は社さんなんだよな。社さん、あの子と知り合いとかじゃないよな?…いやいや、待て、俺!たとえ知り合いだとしても合コンなんて絶対無理だろ。だってあんなに性格よさそうなかわいい子、絶対に彼氏がいるだろうし!! 」



 ……の前に

 そもそもこんな忙しい自分がいつ合コン出来るんだって話だ。本気で…。


 休日はいつも疲れてきっていて、一日中寝ている日だってあるっていうのに。



「 敦賀くん!早くしないと明日になっちゃう! 」


「 あっ、ごめん!先に行ってて。俺、あとから行くから 」


「 そか。んじゃ俺たち、先に行くわ 」


「 悪いね 」



 だからつい願ってしまった。



「 ……いっそ、社さんが復帰する前にもう一度なんかトラブルでもあればな… 」



 けれどそんな都合のいいことなど起こるはずがないのだ。

 だからあの子に会える機会はもうきっとないだろう。



 そう考えただけで、とても残念な気持ちになった。







 ⇒つみこいびと◇3 に続く


どのセリフが誰か…とか考えないで適当に読み流してくださいね。

ちなみにこのお話の蓮くんは結婚願望超高め設定♡(〃∇〃)



⇒つみこいびと◇2・拍手

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