水道水がおいしい都道府県ランキングについて | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

●水道水がおいしいランキング

水道水がおいしい都道府県ランキングが公表されました。

順位は以下の通りです。

 

  1 鳥取県 2 富山県   3 新潟県   4 山梨県  5 長野県

  6 熊本県 7 山形県   8 北海道   9 青森県  10 福井県

11 岐阜県 12 岩手県 13 島根県 14 石川県 15 宮崎県

16 静岡県 17 徳島県 18 鹿児島 19 宮城県 20 秋田県

21 福島県 22 広島県 23 栃木県 24 群馬県 25 三重県

26 和歌山 27 愛知県 28 高知県 29 山口県 30 大分県

31 奈良県 32 福岡県 33 愛媛県 34 神奈川 35 京都府

36 東京都 37 滋賀県 38 岡山県 39 茨城県 40 佐賀県

41 兵庫県 42 長崎県 43 香川県 44 埼玉県 45 大阪府

46 千葉県 47 沖縄県

 

ベスト3は、①鳥取県、②富山県、③新潟県でした。

ところで、このランキング、誰がどうやってしらべたのでしょうか。

 

調査したのは、パナソニック㈱です。

調査方法は、各都道府県で100人に「自分の街の水道水を美味しいと感じるか?」と質問し、「YES」と答えた人の割合をランキングにしたものです。

調査の結果、鳥取県は78%、富山県は77%、新潟県は74%の方が、自分の街の水道水を美味しいと回答したそうです。

 

調査結果については、以下をご覧ください。

「水道水がおいしい」都道府県ランキング 山梨、新潟、富山を抑えた1位は? ワースト1位は沖縄県(まいどなニュース) - Yahoo!ニュース

 

 

●個人的な意見
どんな水がおいしいとされているのでしょうか?

一般的に、井戸水が美味しいとされています。

 

熊本市は、水道水源が全て井戸水なことで有名です。

阿蘇山からの流れ出る湧水がきれいなので、台湾の半導体工場が熊も県内に建設され、話題になりましたね。

では、熊本市を県庁所在地とする熊本県は、おいしい水道水ランキングで何位なのか?

6位です。

上位と言えば上位ですが、水源の清浄さのイメージからすると、ベスト5に入ってもいいと思います。

他にも、静岡県は、富士山からの湧水が豊富です。

ランキング上位になりそうな気がします。

では、静岡県のおいしい水道水ランキングは何位なのか?

16位です。

ちょっと意外です。

 

それでは、ランキング1位の鳥取県の県庁所在地の鳥取市は、どのような水道水を供給しているのか?

鳥取市は、河川の底を流れる伏流水を水源としています。

これを膜ろ過を行い異物を除去し、塩素消毒を行った後、給水を行っています。

伏流水は地下水の一種ですから、そのままでも清浄な水です。
しかしながら、おいしいとされる井戸水を水源としているわけではありません。

では、鳥取県は、何が良いのでしょうか?

 

 

●人口ランキング

都道府県別の人口ランキングを見てみましょう。

 

1東京都12,064,101 2大阪府8,805,081 3神奈川県8,489,974 4愛知県7,043,300 5埼玉県6,938,006

6千葉県5,926,285 7北海道5,683,062 8兵庫県5,550,574 9福岡県5,015,699 10静岡県3,767,393

11茨城県2,985,676 12広島県2,878,915 13京都府2,644,391 14新潟県2,475,733 15宮城県2,365,320

16長野県2,215,168 17福島県2,126,935 18岐阜県2,107,700 19群馬県2,024,852 20栃木県2,004,817

21岡山県1,950,828 22熊本県1,859,344 23三重県1,857,339 24鹿児島県1,786,194 25山口県1,527,964

26長崎県1,516,523 27愛媛県1,493,092 28青森県1,475,728 29奈良県1,442,795 30岩手県1,416,180

31滋賀県1,342,832 32沖縄県1,318,220 33山形県1,244,147 34大分県1,221,140 35秋田県1,189,279

36石川県1,180,977 37宮崎県1,170,007 38富山県1,120,851 39和歌山県1,069,912 40香川県1,022,890

41山梨県888,172 42佐賀県876,654 43福井県828,944 44徳島県824,108 45高知県813,949

46島根県761,503 47鳥取県613,280

 

おいしい水道水ランキングのベスト3の都道府県の人口ランキングは、以下の通りです。

①鳥取県 47位

②富山県 38位

③新潟県 14位

 

人口が少ない都道府県は、自然が多い傾向があります。

鳥取県や富山県が上位になっていることを踏まえると、水源水質が清浄であるという事実以上に、自然環境も含めたトータルで、水道水のおいしさを印象付けているのかもしれません。

地下水が多い静岡県は、水道水ランキングが16位で、人口ランキングが10位でした。
水源が清浄でも、自然環境も含めたトータルで考えると、水道水はそこまでおいしくないと感じるのかもしれません。

逆に言えば、新潟県は人口ランキング14位なのにもかかわらず、水道水ランキングが3位です。

これはすごいですね。

都会であるにも関わらず、自然が多いと感じている人が相当数いるのだと思います。

こうした好印象を与えているのは、日本一長い信濃川が流れていて、美味しいお米の産地になっていることが大きいのかもしれません。
 

 

●鳥取県と富山県が優れているところ

さて、ここで、おいしい水道水ランキングの上位の鳥取県と富山県の優れている点をクローズアップしたいと思います。

汚水処理人口普及率の都道府県ランキングを調べてみました。

汚水処理人口普及率は、下水道、農業集落排水施設、合併浄化槽等の汚水処理施設によって汚水が処理されている人口の割合です。

汚水処理人口普及率の上位15位は、以下の通りです。

 

1東京都99.8% 2滋賀県99.1% 3兵庫県99% 4京都府98.6% 5神奈川県98.4%

6大阪府98.4% 7長野県98.3% 8富山県97.7% 9福井県97.4% 10北海道96.3%

11鳥取県95.8% 12石川県95.2% 13福岡県94.3% 14山形県94.2% 15岐阜県94%

 

東京が1位です。

大都市になると、当然、汚水の発生量も多くなりますし、汚水処理を普及するためには、相応の施設整備が必要です。

このため、東京に次いで、大阪、神奈川、北海道、兵庫、福岡等の大都市がランクインしているのは理解できます。

ここで注目したいのは、8位の富山県、11位の鳥取県です。

 

前述したとおろ、これら両県の人口ランキングは、38位、47位です。

そうであるにも関わらず、これら両県は、汚水処理人口普及率が高いです。

つまり、鳥取県と富山県は、自然が多く、河川も清浄であり、河川を汚さないよう最大限の努力もしているわけです。

この辺の取組が、おいしい水道水ランキングのアンケート結果に表れたのだとしたら、それは素晴らしいことですね。

 

 

●水道水がおいしいランキングの目的

東京都は、高度浄水処理を採用しているので、水道水の品質は高いです。

蛇口の水を飲んだことがありますが、臭みはまったくありません。

ところが、水道水ランキングは、ワースト12位です。

東京の人は、「水道水はおいしくない」という先入観が強いのでしょう。

アンケート調査に回答した人は、水道水を飲まずして、「自分の街の水道水を美味しいと感じるか?」という問いに対して「NO!」を叩き付けたのだと思います。

 

ここで、水道水ランキングのワースト10を見てみましょう。

1 沖縄県 2 千葉県 3 大阪府 4 埼玉県 5 香川県

6 長崎県 7 兵庫県 8 佐賀県 9 茨城県 10 岡山県
 

次に、人口ランキング10位を見てましょう。

    

1 東京都 2 大阪府 3 神奈川県 4 愛知県 5 埼玉県

6 千葉県 7 北海道 8 兵庫県 9 福岡県 10 静岡県

11 茨城県 12 広島県

 

赤太字の都道府県、つまり、関西圏なら大阪、兵庫、関東圏なら千葉、茨城は、人口が多く、そして、水道水ランキングが悪いようです。

さて、水道水ランキング調査を行ったのは誰でしょうか?

パナソニックです。

パナソニックは、蛇口一体型の浄水器を生産しています。国内有数のメーカーです。

このことを踏まると、水道水ランキングの調査目的は、おいしい水道水の都道府県をクローズアップするものではありません。

おいしくない水道水の都道府県で、かつ浄水器に対する潜在的な顧客数が多い都道府県をクローズアップすることが、真の目的だと考えます。

そして、その浄水器販売促進のターゲットは、大阪府と兵庫県、それから東京のベッドタウンの千葉県と茨城県だと推測します。

 

水道水ランキングのワースト10にランクインした都道府県の水道事業体は、悲しい思いをしたかもしれません。

しかしながら、浄水器が普及することで水道の水需要が伸びるのであれば、潜在的な水需要を発掘できるわけです。

考えようによれば、悪いことばかりではないわけです。

何にしても、「水道水がおいしい都道府県ランキング」は、斬新で興味深い調査だったと思いますね。