【質問】支援の先生から「そのうち治るから大丈夫」と言われたのですが、どうしたらよいでしょう。 | 場面かんもく相談室「いちりづか」

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【質問】

小学3年生の緘黙症状のある子の保護者からの質問です。

 

新年度になって、担任と支援学級の先生が替わりました。

支援学級の先生は専門的な資格もあるベテランの先生です。

 

ただ「話す練習」についてお願いしたところ、

「緘黙の子はいずれ話すようになる」と力説されてしまいまいた。

緘黙の子も何人か見たことがあるが、みんな中学生、高校生になったら話していたそうです。

「無理に練習をするよりも、今できることを伸ばしていくのが大事」とおっしゃっていました。

 

ベテランの先生にそう言われると確かにそんな気もしてきてしまいます。

それでも「話す練習」は続けた方がいいでしょうか。

 

 

【回答】

その先生の説明は3つの点で間違っています。

しっかり練習を続けて、できるだけ早く緘黙症状を治しましょう。

 

ベテランの先生に自信をもって言われると、それを否定するのはなかなか難しいですね。

まずはこの問題を正しく理解しましょう。

 

この先生の説明は、少なくとも3つの点で間違っています。

順を追って説明しましょう。

 1つ目の間違い:治らない子もいる 

その先生が担当した子は、中学生や高校生で話せるようになっていたとのことです。

確かにそういう子もいます。

 

ですが、放っておいたら中学生、高校生になっても治らない子もいます

「いつか話せるようになる」と思っていて、気づいたら高校生になっていたという子もいます。

私のところに相談があるのはそういうケースなので、私はそういう子を何十人も知っています。

 

高校生になったときにやっぱり「治っていなかった」ってなったら困りますよね?

だから今からしっかり対応していきましょう。

 

 2つ目の間違い:もっと早く治せる 

もし中学生や高校生で治るとしても、私ならもっと早く治すことをお勧めします。

〇〇さんは今年小学3年生ですね。

今から練習をすれば、3年生のうちにかなり症状を改善させることができます

 

それなのに、何もしなければ話せない状態はずっと続いてしまいます。

確かに中学生になるときに話せるようになるかもしれません。

ですが小学校の4年間は話せない状態でいいでしょうか?

 

もし小学生のうちに治せるなら、その方がいいに決まっています。

ですのでこの考え方は明らかに間違っていると言えます。

 

 3つ目の間違い:「無理」な練習ではない 

「無理に練習をするよりも、今できることを伸ばしていくのが大事」とのことです。

これは典型的な「特別支援教育」の考え方だと私は捉えています。

 

特別支援教育では、「治すこと」よりも「支援すること」を優先する傾向があります。

これは「治らない障害」に対しては正しいアプローチです。

ですが、場面緘黙の症状は治らない障害ではありません

 

私が提案している方法は、「無理なく緘黙症状を治す方法」です。

本人とよく相談して、「これならできそうだ」という方法を一緒に選びましたね。

本人ができそうだと言っているのですから、無理な方法ではありません。

 

ですので、安心して「話す練習」を続けていってください。

 

 最大の難関は、「先生の協力を得ること」かもしれない 

ただしここで1つ、重大な問題があります。

それは、練習のターゲットを支援学級の先生にしていることです。

 

前回(3学期)の相談の際に、練習のターゲットを決めましたね。

〇〇さんは「支援学級の先生と話せるようになること」を目指すことにしました。

ですので練習を進めるには、支援学級の先生に協力してもらうことが不可欠です。

 

ところが、その肝心の支援学級の先生が上記のような考えで練習には否定的ということですね。

こういう場合の選択肢は2つです。

 

1.支援学級の先生を説得して協力してもらう

2.練習相手を替える(別の相手をターゲットにする)

 

とは言え、やはり本人の希望がありますので、できれば1.の方でいきたいですね。

支援学級の先生は関わる時間も長いので、話せるようになることのメリットも大きいです。

ですのでその先生によく理解してもらった上で、練習に協力してもらうのが理想です。

 

 「話せるようになりたい」という思いを伝える 

ではどうしたらその先生は練習に協力してくれるでしょうか?

実はこれは、それほど難しくないと思います。

 

まずは「小学生のうちに話せるようになってほしい」と先生に伝えてみてください。

小学校生活をずっと話せない状態で過ごすなんてあまりにも不憫、と訴えましょう。

保護者だけでなく本人の思いが伝えられるとより効果的です。

本人の「小学生のうちに話せるようになりたい」という思いを伝えてみましょう。

 

特別支援教育に長けているベテランの先生なら、分かってもらえると思います。