【質問】
中学1年生の子の保護者からの質問です。
息子は小学3年生からずっと不登校だったのですが、この頃少しずつ外出ができるようになってきました。「勉強したい」という意欲もあり、市の教育相談センターに相談に行ってきました。
本人にとってははじめての場所で、とても緊張していました。担当は年配の指導主事の先生で、本人にとっては少し苦手なタイプだったようです。
名前を書いたり、好きなことや嫌いなこと、将来の夢を書くように要求されました。初めての人の前では話せないだけでなく、字を書くこともできません。その場で固まって動けなくなってしまいました。事前に場面緘黙と自閉スペクトラム症の症状があると伝えていたのですが、まったく関わり方に配慮が感じられませんでした。
測られているようなことは、本人も敏感に察知します。途中からは本人も拒否的な態度になってしまいました。それを見て担当の先生からは「場にふさわしくない態度」「社会的に合っていない」「病院に行った方がいい」などととも言われました。
はじめは頑張ってほしいと思って見守っていたのですが、見ていてつらかったので途中でやめさせてもらいました。帰ってから本人に聞くと、「もう行きたくない」と言っていました。
せっかく今、勉強や外出を頑張っているところなのに、こういった形で指摘を受けて世界が違うと感じました。教育相談センターはもう行かなければいいだけなのですが、本人も私(母)もモヤモヤした気持ちがあります。どう整理したらよいでしょうか。
アドバイスをいただけないでしょうか。
【回答】
社会とのぶつかりが生じるのは「成長の証」です。
それは残念でしたね。
まだまだ緘黙症状や関連する心身の問題に対して、十分に理解さていないことも多いです。
程度の差はあれ、こういった対応をされてしまうのは珍しいことではありません。
ただ、場面緘黙についての知識がなくても、普通はここまでの対応はしないはずです。
ですので単純に「運が悪かった」「ハズレを引いてしまった」と思うことをお勧めします。
(これではアドバイスになっていませんね)
もう少し解説してみましょう。
いつも面談でお話ししていますが、こういった問題は「環境との相互作用」の中で生じます。
これまで○○さんの生活は家庭が中心だったため、このような問題はあまり起きませんでした。
それが、最近になって外出ができるようになったりと、少しずつ外に開かれてきました。
そうすると必然的に、こういった「外の環境とのすれ違い」が生じてくるものなのです。
つまり、こういう問題が起こるのは「成長の証」だと言うことができます。
社会とのつながりが増えてきたことを、祝福してあげてはいかがでしょうか。
ここから○○さんの世界はさらに広がっていきます。
そうするとどうしても、「世の中」「社会」「普通」と向き合わざるを得ません。
その時に、本人の姿と社会の側の要求がズレすぎていれば、今回のような問題は生じます。
それを防ぐ・軽減する方法は大きく分けて3つ存在します。
・本人ができることを増やす
・社会の側が歩み寄る
・本人にとって居心地のいい環境を選ぶ
どれか1つだけでなく、私は3つすべて必要だと考えています。
この3つを上手く使い分けながら、自分らしく力を発揮していけることを目指しましょう。
この中で最も難しいのは1つ目です。
ですがこれは、私がお手伝いしながら進めていきますので大丈夫です。
「病院に行った方がいい」についてもコメントしておきましょう。
病院については、「なぜその担当者が病院を勧めたか」が重要です。
病院は「とりあえず行くところ」ではなく、「目的や必要性があって行くところ」です。
診断書が必要など、何か明確な目的があれば受診はしておいたほうがよいと思います。
そうではなく「特にアドバイスできることもないから受診を勧めた」のなら無視して結構です。
・担当者の力量不足でまともな助言がもらえない
・アドバイスできることがないから「たらい回し」にされる
・「とりあえずWISC」を勧められる(意味もなく知能検査を勧められる)
・困ることがあるから相談に行っているのに「様子を見ましょう」と言われる
こういった対応は「場面緘黙あるある」だと思ってください。