バー ー ー ー ーン!
☆
ずいぶん昔の話。
夏だったか。
初夏だったか。
曇った昼下がりの午後。
海の近くを走る電車に乗っていた時だ。
居眠りしていた頭をぼんやり起こした。
突然。
空気がはり裂けるような破裂音。
なにが起きたかわからなかった。
あたりが一瞬にして真っ白になり、何も見えなくなった。
数秒後、光景はまた元に戻り通勤電車は走り続けていた。
混んではいなかった。
空いてもいなかった。
座席はすべて埋まっていた。
何人か立っている人もいる。
アナウンスもない。
誰も何も言わない。
ざわつくこともない。
静まりかえっていた。
そのまま列車は駅に着いた。
見た目の天気は変わりない。
雨は降っていなかったが、
多分落雷だったのだろう。
