六十四卦雑想——痛み | ぼくは占い師じゃない

ぼくは占い師じゃない

易のブログ……だったのですが、最近は白橋 升としての創作活動「遊星出版」の話題や日常雑記を綴っています。遊星出版のサイト(Googlesite)で作品を紹介しています。活動や作品の紹介はこちら(遊星出版公式サイト)→https://sites.google.com/view/yuusei-press

42:帰妹
57:漸
TP14:痛み

   ☆

加藤大岳校訂の手帳サイズの「易経」を、
クラフト紙で包みながら店主はこう言った。

「断易で独学はむつかしいね。
 周易なら独学でいけるだろうけどね」

神保町古書街。
占術書を扱っているお店でのこと。

もうずいぶん昔の話だ。
易はずっと独学でやってきた。

曲がりなりにでも、ひと様に易の話などをすることになって(2005年あたり。今はやってない。あまりに分不相応)、独学が悪いわけではないけれど、一度くらい、ちゃんと先生につかなきゃあかんのじゃないか……

と、思いはじめた。

そこで、2008年〜2010年あたりに易の教室に通った。

今となっては、きちんとした易の話をしてくれる先生もずいぶん少なくなってしまったのではないだろうか。
当時でさえまともな教室をさがすのはちょっと大変だった。

   ☆

そこで先生が言っていたのだが、
結婚に関する卦には「漸」「帰妹」「咸」「恒」の4つがある。

このシリーズでは互いに裏卦の関係にある易卦をふたつづ(ツイストペア)とりあげている。
今回紹介する「漸」・「帰妹」ペアは結婚に関する卦のうちの半分のふたつということになる。

なかでも「帰妹」は4つの卦のうちではただひとつ、
「結婚にはよろしくない」とされる卦だと習った。

どのへんが「よろしくない」のか。


【42:帰妹】

「帰妹」の「帰」はとつぐ意味だ。

「帰妹」では、とつぐ=嫁入りといっても正妻として迎えられるのではなく、セカンダリ、つき嫁としてとつぐ意味になる。

伝統<レガシー>によれば、五爻辞の「帝乙帰妹」は婚姻に臨む当人どうしの意志に反した政略結婚であり、上爻辞(六爻目)にいたっては、贈り物やささげ物の、箱は立派(?)でも中身がなかったというハナシになっている。
ようするにあまりいいことがなく、全体としてしてはおもしろくない。

手前勝手な各大成卦のイメージ「易タングル」で「帰妹」と「漸」のペアは二つの円がモチーフになっている。

「帰妹」の方は上の円の中に空白がある。タングルではそこに易卦の象<カタチ>と卦名、コード番号を入れ込んで描いてしまっているが、もともとここは空白で「中身がない」ことをあらわしている。

先に述べた上爻辞の話だが、より詳しく言うと、爻辞には、女がカゴを受け取るが中身がなく、男が羊をさばくが血がない、とある。

形ばかりで実質を伴っていないことをいわんとしていると思われるが、その様子をオーラ(ゼンタングルのパターン。流れるような複数の線)で囲まれた空白で表現したつもり。


【57:漸】

「57:漸」の卦辞は「女帰吉」で、単刀直入に「女が帰ぐ(とつぐ)に吉、とある。

ゼンタングルは樹がモチーフになっている。
象伝に「山の上に樹がある象(かたち)」とあり、そこから来たイメージだ。

樹は時間をかけて徐々に大きくなっていく。

爻辞では、水鳥が水際から岩、もう少し高い丘、樹へと進んでいき、最後は梢から雲の彼方へと飛び去っていく。
いきなり飛び立つわけではない。
徐々に、ステップバイステップで、進んでいく。

「漸」は少しずつ、じわじわ、という意味であり、一足飛びに跳躍する、なにかかが一気に進むことはない。

さて「帰妹」と「漸」、このペアには「痛み」という意味がつけられている。

「帰妹」は自己犠牲にともなう痛みであろうことはわかるが、「漸」は?

ぼくが「漸」に観たのは、一気に飛び立てないもどかしさである。これも一種の「痛み」なのではなかろうかと思った。

早くラクになりたい!
すぐ結果が知りたい!
商品は明日中に届いてほしい!

早く、早く、早く!

結果を手早く求めることばかり思っていると、「漸」は確かに苦しみ・痛み以外のなにものでもないだろう。

最後はだれでもかならず死ぬのは決まっている。

早く、早く、早く!

だからといって、生まれてすぐに死に急ぐ者もいないだろう。

地上での物語は、生まれて死ぬまでの間につむがれるのである。

あらゆることには、それぞれ固有のタイミングがある。

そこには早いも遅いもない。

急ぐことばかりがいつも正しいとは限らない。
まずは、駆け込み乗車からやめてみてはどうか。

……と、思うがどうだろうか。

つまりはもう「歳」なのである。
こういう小言を言い出すと。

がは、げへ、ごほ。

   ☆

「ゼンタングル」、「易タングル」については、「六十四卦雑想ーはじめに」を参照してください。