外はよく晴れている。
ガラスの向こうを連休の人たちがすぎていく。
表のテーブルとイスにはだれもいない。
いや、ほんとうか?
ほんとうにだれもいないのか?
交差点の植え込みの草が光っている。
クルマが光って流れている。
カフェのBGMが混じる。
めずらしいところでこれを書いている。
シャーマンになろうとして一所懸命だ。
料理の匂いが流れてくる。
風はぴたりとおさまる。
光が交差点を照らしている。
空は白っぽい。青くはない。
青が脱色して色あせた感じがする。
そういう春なのである。
こうしているとここが海だったことがわかる。
明るく、波のない海。
この交差点の下には海が埋もれている。
考えるまでもない。検証するまでもない。
歩道の敷石は自転車にふみつけられて、ぐにゃぐにゃおどる。
そのうちの一枚が飛び出してきてガラスの近くまで飛んできてこう言うのである。
「やあ、楽しいか」
答えようによっては石をおこらせてしまう。
「なんのためにオレがあそこで敷石やってるんだかわかってんのか」
怒る。若き日の父親のように。
空はやっぱり白くあせているが、どことなく銀がかっているようでもある。
添加物のように銀の粉がまぶされてあっという間に溶けて広がって膜になったのである。
だれもいないと思っていた表のイスが一休みする敷石でいっぱいになる。
敷石がひきあげた所は冷たい土がむきだしになっている。
その下にはあたたかくおだやかな海。
春分の交差点での出来事である。
青チェックのフリースをきたお父さんと
緑色のチェックのフリースをきた子ども。
話してたと思ったら消えてしまっていた。
光か風かどちらのせいか。
いやまた現れた。
スマホをいじってる。
風はやっぱり吹いている。
ガラス一枚へだてて。
眠気にひとしきりさらされたあと、眼をあけるとたしかにあたりは急にあかるい。
これから仕事だがゆっくりいくとしよう。
そんな気になるのである。
みてごらん人の影もクルマの影もずいぶんみじかくなったよ。
ぼくはやっぱりうす白青の都会の空をみあげてみるのである。