分占 | ぼくは占い師じゃない

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易経という中国の古典、ウラナイの書を使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう! というブログ……だったんですが、最近はネタ切れで迷走中。

占例です。

右へ行くか、左へ行くか。
だれしも迷うところです。
おそらくはよくある占的です。
そしておそらくは易が最も得意とする占的です。

   ☆

自分では本意ではないと思っている仕事をしている人からの相談。
受かるはずがないと思っていた資格試験にたまたま受かってしまった都合上、なりゆきでその仕事をしているということです。
本意でないばかりでなく、まったくその仕事に向いていないと思っている。

いつからその仕事をしていますか?
もしくはいつから「本意ではない」と思い始めましたか?

だいたい1年と9ヶ月前。

ささいなことがきっかけで、この一月ほど辞めようかどうしようか悩んでいるということでした。

シロクロはっきりさせたいのなら、占的はできるだけ明確な文にしましょう。

たとえばこんな感じですか。

「『現時点における判断で』この仕事を継続する方向でいくのか辞める方向でいくのか。『現時点』における方向性は?」

「現時点」を強調しています。

将来、別の時点で占えばまたちがった結果がでます。
たとえ同じ卦が出たとしても判断は変わってくるでしょう。
状況は時とともに変わるからです。
こういう二者択一的占的については分占法が適しています。
この占的の場合は今(現時点で)仕事を継続した場合(辞めない)と、中止した場合(辞める)に分けて卦をたててみました。
分占法です。

分占

【継続=睽の履に之く、中止=坎の困に之く】

明白な回答といったところでしょうか。

「継続」の方にでた「睽」は、ひとつ屋根の下に中女(離)と少女(兌)が同居しておりかつ、反目しあっている象(カタチ)といわれています。
相談者に確認したところ、職場の中にそのような反目的なことはないとのこと。
イヤな上司も先輩も足をひっぱる同僚もいなくて、派閥もいがみ合いもイジメもないなんて、なんとまあ、ケッコウなことじゃない。
なんで辞めたいなんていうのかなあ……という言葉はひとまず飲み込みます。

ひとつ屋根は相談者自身と観ました。
相談者自身の内的葛藤がそのまま卦に出たのではなかろうか、と。

「睽」の卦辞は、拙作「易システムハンドブック」によれば、「ささいなことはOKだが、重要なことはNG」。
これだけで答えになっていますね。

生活に直結する辞める辞めないなんてことを今決めちゃアカンでしょ。
「今でしょ」ってのが流行ったけど、今(現時点)じゃない。

「睽」の五爻が変じて履に之ってます。
「睽」の五爻辞もみてみます。
我田引水、手前味噌の「易システムハンドブック」によれば、

「同族どうし肌をかみあわせるような深い関係にある」

とある。
相談者が思っているより、相談者と職場の人たちとの結びつきは強すぎるほど強い。
簡単には辞められそうにありません。
聞けばなるほど、小さな仕事場だといいます。
それでもって之卦は「履」だ。
意味は「ふみおこなう」。
先人の轍(てつ)をふんで進む。
儀式とか伝統的なことを示す卦でもある。
「履」がフォーカスしているのは継続です。
今のところは従来どおりの路を往けってわけ。
今のところはね。

辞めるとどうなるか。

「中止」の方に出た卦を観ます。
これが「坎の困に之く」ですから、まあふつうに考えてあまりいい判断はできません。
辞めてしまうと、前にも後にも穴があって(「坎」)、身動きがとれないような事態になってしまう。
この事態はやがて四爻変で「困」に。
大成卦の三、四爻は上下卦の境界をはさんだ不安定な位です。
「困」は上卦に水をたたえた沢があって、その沢の水が下卦で示されるように(「坎」)漏れているカタチ。
エネルギーのだだ漏れ。
疲れ切ってしまうことになるだろう、と。

総じて、すべてのベクトルは「継続」の方向を指しているように観えます。易としては全力で「今辞めるな」と言っているようでもあります。
占的で「現時点」を強調したのは先に述べたとおりですが、状況は変わります。
変わるのが易だ。
ではいつ変わるか。
次のターニングポイントはいつか。
辞めたいと悩んでいる今の仕事を始めてから1年9ヶ月。
葛藤はその頃から始まっているとするなら、1年9ヶ月前が「睽」初爻位、と観る。
時間は大成卦上を、初爻位から上爻位に流れていきます。
現在が五爻位ですから、1年9ヶ月の時間が五爻分にあたると観ました。
この例においては1爻あたり約4.2ヶ月となります。
現在が五爻位ですから、あと1爻で「睽」で示される状況を抜けると観ることができます。
あと4.2ヶ月。
占ったのは3月下旬の頃でしたら、次のターニングポイントは7~8月頃ということになります。

   ☆

易は原則、同じ占的で二度三度占ってはいけないことになっています。
でも、状況が変わればこの限りではない(とぼくは思っています)。
いつ状況が変わるのか、次のターニングポイントはいつか、というのは言い換えればこの占の「賞味期限」のようなもので、それが過ぎれば同じ占的でまた占いなおしてもいいと(ぼくは)思います。
易の場合は卜占であるというその性質もともなって、「賞味期限」は他の占術に比べて比較的短い気がします。
一月、三ヶ月、長くて半年ってところでしょうか。
よくもわるくも瞬発力の占術です。

次のターニングポイントは7~8月頃。
もし気持ちが変わっていなければまた相談にみえてください。
ぼくは占い師じゃないけれど。