易システムの位相空間(後天動因図 その2) | ぼくは占い師じゃない

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易経という中国の古典、ウラナイの書を
使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう!
というただそれだけのブログ……
だったんですが、
最近はまた淡々と経文に向かっております。

前回の続き、後天動因図のお話です。

☆ 位相空間?

今回記事のタイトルには「位相空間」という言葉がありますが、ぼくは専門家ではないので位相空間といってもよくわかっていません。
複雑系関連の本を読んでいる時に知った言葉で、数学的な意味と物理学的な意味があってそれぞれ意味はちがうようです。

感覚的なお話しかできませんが、数学的には位相幾何学が展開する空間(トポロジカル・スペース)のことで、物理学的には質点の運動量や位置、時間展開を表す高次元の座標空間のことだそうです。高次元座標ですから、位相空間内の点にはさまざまな意味(パラメータ)がオーバーチャージされています。

どちらかというと物理学的な意味合いになるかと思いますが、「位相空間」というのは、直接観察することのできない、現実のある断面をあらわす仮想的な空間といえるのではないでしょうか。
いかなる断面であるかは、その空間の座標軸である次元=パラメータをどう定めるかによります。


☆ 易システムの位相空間

アナロジーですが、易卦の地図も現実に対応した現実のある種の断面、主観的・仮想的な位相空間「のようなもの」として観ることができるのではないか、と思ったわけです。
数学的意味、物理学的な意味、どっちつかずのアバウトなものですが、まあこれを、易システムの位相空間と呼んでもいいのではないかと。

後天動因図は、枠組みとしてはトーラス面に均等に配された6本の経線と、8本の緯線の交点に易卦を配置したものです。
というと、6×8で48の易卦しか配当できないようにみえますが、中心の穴の小径円と最大径の大径円には同じ交点にふたつづつの易卦を配置していますので、48+6×2で60の易卦が配置されています。易は64卦です。残り4つの易卦の配置は……ちょっと表現しづらいのですが、このトーラスが存在するフィールドというか、このトーラスを成り立たせている「動きそのもの」に配置しています。

これが「易システムの位相空間」ですが、とりあえずはシンプルにトーラスの中心を原点とする三次元空間としましょう。
その前提で後天動因図があらわす48(64)各点の座標を考えてみます。

トーラス全体

【易システムの位相空間】


☆ トーラスの形状を決める

後天動因図の本の中では、ストーリーとの絡みもあって、トーラスの形状を決定する要素として、「中心の穴の直径」「一番外側の円(赤道部)の直径」「その二つの間の断面の形状」という具合に感覚的かつ雑駁に説明しています。

雑駁な定義

【トーラスの形状を決めるもの】

一口にトーラスといってもきわめて多様な立体で、その中でも典型的なのは上記断面の形状が真円であるドーナツ型で、一般的には以下の大半径Rと小半径r、R > rで定義されるようです。

torusofwiki

【大半径Rと小半径r(ウィキペディア日本語版より)】

典型的なドーナツ型の断面に楕円も加えるとしましょう。楕円も表現方法はいろいろあるとは思いますが、ドーナツ型の断面である真円に対する以下の扁平率cも加えます。

楕円の軸

【楕円の長半径(mejor axis)aと短半径(minor axis)b(ウィキペディア日本語版より)】

一般的な扁平率は1-b/aで、a=rとすれば、c=1-b/rで、b < rとするなら、cは、半径rの円内に含まれる楕円の扁平率ということになるでしょう。


☆ 尺度不変

まとめると「易システムの位相空間」にある易卦があらわす点は以下の五次元座標であらわすことができます。

(U,D,R,r,c)
U:上卦、後天動因図が定めるトーラス面の経線上の一点
D:下卦、後天動因図が定めるトーラス面の緯線上の一点
UとDはひとつの大成卦を構成します。
R:U、Dで構成される大成卦が載るトーラスの大半径
r: U、Dで構成される大成卦が載るトーラスの小半径
c: U、Dで構成される大成卦が載るトーラス断面の扁平率(真円(ドーナツ型)の場合は0)

U、D以下の3つ、R、r、cはその大成卦が載るトーラスの形状を決定します。

トーラスの形状を決定するやり方はこのやり方だけではないと思いますので、UとD以下をEnとしましょう。
Enはトーラスの形状を決定する任意のパラメータ・セット(E1,E2,E3……En)です。

(U,D,En)

この2+n次元座標が「易システムの位相空間」を、無限個のトーラスで、無限小から無限大まで満たしていきます。

無限のトーラス

【さまざまなトーラスの断面】

ここでのポイントはU、Dは、Enにかかわらず一定だということです。
いいかえると後天動因図上の易卦が示すある一点は、トーラスの形状にかかわらず、同じということです。

これが、後天動因図の本の中で「応用」の後の、「フラクタルに折り畳まれる」と「フラクタルに展開される」という節で書いた内容を、別の側面から説明したお話ということになります。

無限小のトーラスであろうと無限大のトーラスであろうと特定の易卦が示すパターンは変わりません。易卦のパターンはトーラスの尺度に依らない、尺度不変のパターンだということになります。


☆ 易と幾何学的図形、立体

MAP13以降、唐突に幾何学図形や立体が易システムに登場してきたので少々面喰らっておられる方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれません。

なんで易に多面体やらヘンテコな立体複合体が関係するのか、と。

もちろん作者のイメージ連鎖の結果であり、決して必然や論理的に導かれたもの等ではありません。

空間的に易卦を配置してその相互関連を眺めることによって何か新しい視点が得られるのではないかと思って展開してきたファンタジーです。
そんな流れで、易卦と幾何学的な図形や立体、その間を取り持つ媒介として「易システムの位相空間」があると想ってくだされば幸いです。

さて、今回はこのへんで。

後天動因図のお話は、もう少し続く予定です。