易システムと時間の立方体 | ぼくは占い師じゃない

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易経という中国の古典、ウラナイの書を使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう! というブログ……だったんですが、最近はネタ切れで迷走中。

○ イントロ

ウスペンスキーの「新しい宇宙像」は感想の書きにくい本である。

「銀河ツール」のホゼ・アグエイアス氏が若い頃に影響を受けた本だということで「ターシャム・オルガヌム」を読んだが、その流れで……ということで「新しい宇宙像」も読んだ。

感想が書きづらいのは、とりあげあれている話題が多岐にわたっていることと、書かれた時代が古い(1900年の初め)からだ。しかしそれらのことを考慮しても、ウスペンスキーの思想は独特で、若きホゼ氏がインパクトを受けるのも無理はない気がする。

内容は、秘教的側面からとらえたさまざまな話題のアンソロジーだが「ターシャム」からの流れでいえば、やはり、本のタイトルと同名の「新しい宇宙像」の章がどうしても目をひく。

どれだけイメージを受け取ることができたかはわからないけれど、易システムについて、いままでこのブログで書いてきたことと、これから書こうとしてしていることを交えながら「三次元(*1)より上」の「時間」について、ぼくが思うところを記録しておきたい。


○ 直線の時間

通常、ぼくらは時間を直線的なものととらえがちである。
子供の頃にならった数直線、大人になってからアタマをなやませるスケジュール、工程表。SNSではやりの「タイムライン」。
この直線上において、イベントは単なる「点」になる。

イベントは日常生活における出来事だ。
時間をあらわす直線上では単なるひとつの「点」だが、日常生活、すなわち三次元空間内で起こることなので、実際にはタテ、ヨコ、タカサ、三つの次元を持っている。

つまり「時間を直線でとらえる」ということは、三次元空間を直線上の点、0次元に落とし込むことなのである。

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時間をあらわす直線は三次元座標の原点で直交する4本目の座標軸と考えることができる。
この軸は想定することはできてもイメージすることはできない。タテ方向でもない、ヨコ方向でもない、タカサ方向でもない、4番目の方向にのびているからだ。

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つまり、時間をあらわす数直線は図としては一次元なのだが、実際は四次元軸なのである。


○ バリアント――平面の時間

易における得卦は、連続する時間のある特定の断面、イベントである。
得卦は一定期間存続する状況をあらわすが、状況にはその得卦であらわされる以外に、63種類のバリエーションがある。
易システムではヴァジム・ゼランド氏の著作から概念を借用して、これらのバリエーションを「バリアント(「易とトランサーフィン 」参照」と呼ぶ。

得卦以外の卦であらわされるイベントは、その時点で目の前にあるわけではないれども、その時実際に起きているイベントの可能性(バリアント)として背後に並行して存在する。
得卦とそのバリアントのつらなりは、それぞれに4次元軸を構成する。
現実化された時間軸と可能性として並存する時間軸。
これら4次元軸(直線)群がダイヤグラム上で平面を構成すると……一次元だった時間軸は二次元になる。

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三次元空間は一次元で表現されている時間軸上の「点」に落とし込まれているわけだから、平面とはいってもその実態は三次元プラス二次元で、平面にみえているものは実際には五次元ということになる。


○ バリアント・マトリクス――立方体の時間

ある易卦を基準として、その易卦から乗り換え易い順に、その他の易卦を配置したダイヤグラムを、易システムでは「バリアント・マトリクス」と呼ぶ。
「バリアント・マトリクス」は、各ツイストペア(「日本酒とツイストペア 」などを参照)を基準卦として描かれる。
「バリアント・マトリクス」はこのブログでは紹介していないが、たとえば、「85:地風升」と「14:天雷无妄」を基準卦としたバリアント・マトリクスは以下のようになる。

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【左右両端が基準卦】

得卦および得卦のバリアントが属する時間軸群が一列に直線的にならんで存在するのではなく、バリアント・マトリクスの配列で存在したすると、時間軸郡の断面は平面を構成していたときのように線ではなく、「面」を構成するようになる。この「面」は時間空間内おける面なので、実際には五次元である。
現実化されるかどうかにかかわらず、すべての時間軸が一定期間持続するとすると、この「面」は、四次元方向に奥行きを持つことになる。
この時間軸群のある一定部分(各易卦で示されるバリアントが持続する期間分)を取り出したカタマリは、時間空間における「タテ・ヨコ・タカサ」を有する六面体であらわすことができ、これが「時間の立方体」である。「面」に加えて奥行きを持ったので、この六面体――立方体は実際には六次元のものだということがアナロジーによって類推することができる。

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【時間の立方体】

この「時間空間」が時間全体であり、すべての点には空間全体が含まれる。


○ 永劫回帰――周期的時間

ウスペンスキーによると、六芒星は「次元の周期」の象徴であり、三つの空間次元と三つの時間次元の統合された様子をあらわすものだという。

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【六芒星。三次元空間をいったんゼロ次元に落とし込むという操作
=「ゼロポイント」がふたつの三角形をつなぐ】

6はひとつの周期なのだ。

ひとつの大成卦は六つの爻で構成される。
「バリアントの流れ」は十二消息卦のルールで構成される易卦のグループで象徴されるが、このグループはひとつの周期を形成する。

いま一度、一本の四次元の時間軸に話をもどすと、あるひとつの卦は日常生活におけるイベント、この時間軸上における点であり、十二消息卦のルールで構成される易卦のグループはこの直線が「円」を描いたものだ。

直線(一次元)は「円」になることによっても、次元をひとつ追加(二次元)する。

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つまり、周期は五次元であり、永劫回帰もこれで表現することができる。
これもまだこのブログでは紹介していないが、易システムでは十二消息卦のルールで構成される易卦の周期と、OD を基準卦としたバリアント・マトリクスから構成される周期で階層化し、これをWOL(ホイール・オブ・ライフ)およびGW(グレート・ホイール)と呼ぶ。

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【ホイール・オブ・ライフ】

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【「85:地風升」を基準としたGW】

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【WOLとGWの関係図】

ウスペンスキー(ニーチェ)の永劫回帰は、まったく同じバリアントが選択される無限ループだ。
そのループを想定したとき、永劫回帰というモデルを採用した者に、生きるという魂の旅をどうとらえるかその意味をせまるものだが、易システムではそのようなとらえかたはしない。

現象が無限ループするのではなく、無限ループするのは易卦であらわされる課題(テーマ)の配列である。それらの課題をこなすやり方はさまざまに選ぶことができる。

重要なのは課題をこなす具体的なやり方……現象的、三次元的、現世的ディティールではなく、課題をこなしていくことによって、この際限のないラットレースから抜け出すためのポテンシャルを得ることだ。

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その先、旅路はどこへつづいているのか。

無責任なようだが、それはそのときになってみないとわからない。

よくもわるくも、そういうゲームなのだろう。


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*1)「次元」。幾何学空間における座標軸の本数、ある事象におけるパラメーター数、行列の要素数、あるいは品格、程度といったレベル、このブログでは、これらの意味をすべてひっくるめた曖昧な意味で「次元」という言葉を使っている。