「からっぽ!」
アンディ・ブディコム著
満園真木訳
辰巳出版(2011/11)
瞑想再開。
しばらくとおざかっていたが、
上の本を読んでまたはじめることにした。
内容的には目新しいことはとくにない。
10分の数息だ。
瞑想をこれからはじめようとする人向けに書かれている。
基本的なことばかりだが、その基本的なことこそが、
これからだろうと、何年瞑想をやっていようと、
決定的に重要なのだと改めて気づかされた。
とにかくたとえ話が豊富だ。
著者は師を求めて世界中をさまよったというが、
きっと世界のマスターたちは、
たとえ話の宝庫だったのだろう。
肝心なことを寓話の形で伝えるのは、
スーフィーの伝統などにもあるが、
ぴたりと腑に落ちれば
これほど強力なメディアもない。
ブッダもこの手の話が大変に巧かったと聞く。
☆
たとえどんなに忙しい生活をおくっていたとしても、
朝必ず10分座ることは不可能なことではない。
やがてそれは生活の基盤になる。
しかし実は、前提ではあるけれども、
静座が完璧に習慣として身についても、
その段階ではまだ話は半分なのである。
流れていく想念を観察し、
それに巻き込まれないでいる習慣を、
日常生活にもひろげていくのが次の段階で、
座っているときだけでなく、24時間365日に
瞑想を「浸透」させていくことが、
最終的な目標になる。
といっても、
いつもなにかにがんじがらめになる、
ということではない。
このへんのニュアンスについては本文、
とくに「野生の馬」のたとえを参照してほしい。
☆
もう少し、本の具体的な話。
文章は非常によみやすく感じた。
翻訳者の方の技量ということもあるのだろうが、
おそらくは原文がクリアでわかりやすく書かれているのだろう。
こみいった文章の訳はやはりこみいったものになる。
実際に瞑想をはじめるといろいろと疑問が出てくる。
瞑想者がいだくであろう疑問やつまづきやすいポイントなどについては
ほぼすべてカバーされているように思った。
著者は自分の体験をベースに、マジメに書いているのである。
それが伝わってくる。
書かれているエクササイズ(どれも短い)をきちんとやりながら、
最初から最後まで読んで理解すれば、という条件付きだが、
この本があれば特別な指導者はいらない、といえば言い過ぎか。
しかし誇張でなく、そんな気もする。
本の最後には体験者談が載っている。
だいたいこういうのは、
「この方法でこんなによくなりました!」
というサクラまがいの例が多かったりするのだが、
この本の体験談の中には
「別に変わんないや」というのもあって、
そんな例でも結果にかかわらず、
読者に資するところがあれば載せているところに、
著者の誠実さを感じるのはぼくだけだろうか。
本の帯を見ると
「イギリスで超人気アプリになった云々」
と書かれている。
探したらiPhoneアプリ(フリー)で
「Headspace(on-the-go)」というのがあった。
10分瞑想の10日間プログラムで、
著者自身が手取り足取り瞑想をガイドしてくれる。
もちろん英語。
ぼくのように英語を音としてしか聞けないような人はダメだろうが、
英語を自然に理解できる方ならためしてみる価値はあるかも。
☆
この本で紹介されている瞑想にはタイマーを使う。
本にも書かれているがキッチンタイマーはNGだ。
心臓がとまりそうになる。
じゃあバイブレーションタイマーならいいかというと、
ぼくの場合はそれもダメで、
今度は心臓が縮み上がりそうになる。
iPad、iPhoneのアプリを探すと、
瞑想用のタイマーというのがあって、
こういうのを使うとよいと思う。
開始と終了の音がやさしい鐘の音になっていたりするし、
ふつうはボリューム調整がついている。
【ぼくが使っている瞑想用タイマー。
リードタイムがとれるところが秀逸だが、
0秒(リードタイムなし)、5秒、10秒の
三択になっているところがオシイ。
自由に設定できるとよかったのだが】
本の帯にも書いてあるが、ちょっと不充分なので、
最後に、10分瞑想の手順についてまとめておく。
本で解説されている考え方や説明をとりあえずは読んで、
理解した人が日々瞑想を行うときに、
手順を思い出すためのメモである。
くわしくはもちろん本を読んでほしい。
1.準備
すわる。タイマーセット。
2.イントロ
5回深呼吸。目をとじる。
身体感覚を意識。
身体をスキャン。
気分・ムードを感じる。
3.集中
息の出入りポイントを感じる。
息の感触、リズムを感じる。
息を数える。
4.しあげ
心を自由にさせる。
身体感覚を意識。
そっと目をあける。