日本酒とツイストペア | ぼくは占い師じゃない

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易のブログ……だったのですが、最近は白橋 升としての創作活動「遊星出版」の話題や日常雑記を綴っています。遊星出版のサイト(Googlesite)で作品を紹介しています。活動や作品の紹介はこちら(遊星出版公式サイト)→https://sites.google.com/view/yuusei-press

テレビで聞いたのだと思うが、
「日本酒とワインのちがい」について、
だれかがこんなことをいっていた。

ワインが一本テーブルにあって、
二人がそのテーブルをはさんでいるとする。
二人ともワインを飲んでいるのだが、
そこにあるのは、ワインとA氏、ワインとB氏という、
それぞれが、それぞれのワインと対する関係である。

それが「ワイン」なのだ、と。

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ところがこれが日本酒になると事情が変わる。
日本酒というお酒はA氏とB氏の、
その、「間」にあるものなのだという。

ワインのように、A氏、B氏それぞれが日本酒と一対一に対する、
そういうお酒ではなく、対するのはA氏とB氏で、
日本酒はあくまでもその、「間」にある。

それが「日本酒」なのだ、と。

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おもしろい話だと思った。
易卦にも似たような対応がある。

   *

ある易卦Aを構成する爻すべての陰陽を反転させてできたもうひとつの易卦Bがあったとする。このABの組み合わせを、ぼくは勝手に「ツイストペア」と呼んでいる。
伝統的な易においては互いに「裏卦」と呼ばれる関係にある易卦どうしの組み合わせである。
ツイストペアという概念については、以前の記事 でザックリ説明してはいるものの、もう少しつっこんだ話をすると……

易システムにおいて、ある大成卦をとりまく環境とは、すなわち他の大成卦だ。

ある単体の大成卦Aに別の単体の大成卦Bが対応している場合、AからみてBは、もっとも基本的な「環境」であるともいえる(逆も同様)。

AとB、主体と環境に相互作用が生じると、その間、AB間にAにもBにも属さない「見えない中心」ができる。
日常的においてはある種の連帯感、共感といってもいいかもしれない。たとえば、ふたりでやるダンス、セラピーの際に生じる、そのどちらの参加者にも属さない「中心」である。
どちらにも属さないわけだからA、B単体では生じ得ない。しかしそれが生じているときははっきりと感じることができる。

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かくしてこの感覚を踏み台として「自己の境界(*3)」はひとつの大成卦から、その大成卦とペアをなす二つの大成卦というホロンへと創発していく。
原則としてどの大成卦であろうと、ある特定の大成卦とペアであるということはできるし、そうしてはいけないというルールがあるわけではない。

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ただし、ツイストペアは、互いの爻が陰陽反転したものどうしの組み合わせである。いわば、すべての爻が「応じて(*1)」おり、陰陽は引き合うという法則に照らしあわせるなら、その引き合う力が最大であるペアで、当然だが、ある大成卦とツイストペアになる大成卦は他の63卦中、ひとつしかない。
易システムにおいては、先に述べた「見えない中心」がもっともわかりやすく、もっとも容易に生じる組み合わせがツイストペアである。

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いいかえると、ある特定の大成卦からみて「自己の境界」の拡大がもっともおきやすい環境がこの「ツイストペア」の関係であるということだ。
「自己の境界」というものが拡大するものであるということを識るのも多くの場合、まずはこのツイストペアの関係から、ということになる。

見えない中心の例……「自己の境界」が広がる例として、ふたりでやるダンス、セラピーをあげたが、これはあまり一般的な例ではなかったかもしれない。
イキモノとしての陰と陽、女と男、恋人、夫婦といった関係のほうが、よりわかりやすく、一般的な例となるかもしれない。
もっと広げて、パートナーシップというふうにとらえれば、同性のパートナーである仲間や友人、いや、かならずしも人である必要はない。

あなたと仕事、あなたと会社のような組織、あなたとあなたが経験したある出来事……その経験はパートナーというよりあなたの一部をなすアイデンティティのようなものになっているかもしれない。
そんなアイデンティティ、あるいは、あなたと、あなたがいつもポケットにいれて持ち歩いているなんの変哲もないひとつの石。

およそいかなるものであれ、あなたの相棒となりえるものである限り「見えない中心」を創りだし、自己の境界を広げるきっかけになりうる。

そんなふうに想像してみると、自己の境界を広げるきっかけとなるペアが、いたるところにころがっている……ような気がするが、どうだろう。
易システムでいえば、陰陽は根源的な「ツイストペア」であるということもできるかもしれないし、何度かこのブログでも話題にした「問い」と「回答」は、典型的なツイストペアということができるだろう。

   *

ぼくの日常生活でいえば……
気心の知れただれかとサシで飲るお酒だろうか。

たぶん日本酒。

さて、はたしてヨッパライの「自己の境界」が拡大しているかどうか。
それはさだかではないけれども(*2)。

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*1【応】
通常は、単一の大成卦内の上下卦(八卦)間における爻の関係についていう。「応」は対応する爻が陰陽の組み合わせで引き合う関係、「不応」は対応する爻が陰陰、または陽陽で反発する(応じない)関係。
ここでは、ペアになる大成卦における同位の爻との関係に拡大解釈している。

*2
多くの場合、そんなことはない。

*3
「自己の境界」については前出記事 参照。