いや正しくは、palmはモデムを介してメールチェックにつかっていたことがあったが、じゃまくさいのでそれもすぐにやめてしまった。
「モバイル」でネットにつながないんじゃ意味ないんじゃないの?
といわれそうだが、ぼくの場合はそんなことはなかった。
というのも、ほとんどがテキストデータの入力に機器の用途が限られていたからだ。
メモ自体は手書きでとることの方が多い。
そういうメモをデータとして清書したり、もちろん電子機器で直接文章を書いたりもしていた。
テキスト打ち込むだけだったら、なおさらモバイルである必要はないんじゃないの?
これがぼくの場合はそうではなくて、やはりいろいろな場所で、雰囲気の違うところで、文章を書きたいのである。
せますぎるので電車の中でやる習慣はないが、こぎれいな公園もいいし、喫茶店もいい。
たま~の旅行で、旅先でやるのもいいし、コーヒーショップはとくに作業がはかどる。
家の中でだって移動する。
「ちょっと、そこ掃除するんだからどきなさいよ」
「はいはい」
「なんであたしの席にいるのよ」
「はいはい」
「あたしのパソコン使わないでよ」
「はいはい」
ふだんつかっているのはノートPCだから、それ持ってうろつけばいいのだが、バッテリーはとうに干上がっていて、コンセントは必須だ。エヴァンゲリオンのヒモみたいな電源コードがうっとうしい。
それに、とりあえず活字を打ってみたいという欲求はいつおきるかわからないところがある。
そうこうしているうちにやがて……
OASYS-POCKETも、palmも、PSIONも目の前を通り過ぎてゆき、過去のものになってしまった。
B5サイズのノートPCを使ってみたりしたが、重いし、たちあがりは遅いし、エヴァンゲリオンと同じように(しつこいな)稼働時間に限界がある(いまはだいぶ長くなったみたい)。
テキストだけ入力できればいいのに、これじゃまるで自転車で行ける角の文具屋に装甲車で出かけるようなものだ、と思っていた。
そのうち、ハンディなテキスト入力専用のマシンを夢想するようになった。エディタとちょっとしたファイル管理、それとマルチカードリーダーが合体したようなマシンで、以下のような機能が「ない」。
通信機能。
かしこい辞書。
組み込みの最低機能以外のアプリの利用機能。
ゲーム。
画像表示。
音楽再生。
スケジュール管理。
バックライト。
要するにテキスト入力ができて、ファイルをメディアかUSBに吐き出せるだけ。できればそこらへんで売っている電池で長時間動いてほしい。
機能はとにかく最低限にしぼって、その分、普段持ち歩きたくなるようなステキなデザインにして……などなど。ご丁寧なことに「タブララサ」なんていう商品名まで考えていた(ひまなんだな)。
企画書まで書いたわけではくて、まあ、もちろん、アタマの中で思っていただけだったが……
モウカルこと以外、基本的には実現不可という現行の社会システムからいっても、いくら待ったってそんなマシンなど出るわけもない。
やがて、そんなことなど忘れて、モレスキンと万年筆に戻り、結局のところ、紙のノートと筆記具、これが究極のモバイルだぁ、などと思っていたら、このあいだ「タブララサ」に非常に近いマシンを見つけた。
それもヨドバシのような量販店ではなくて、丸善の文具売場。
「タブララサ」ではなくて、「pomera」というその機械の、とりあえずカタログだけもらって家で調べてみる。
まだ出たばかりの機器で、IT機器ではなくて電子文具のカテゴリにはいるものだ。
つくったのは、あのごっついファイルでおなじみのKINGJIMである。
(「ぽめら」。なんか、あまりかっこよくはないかも。専用のフルキーボードにささったpalmを彷彿とさせる)
アマゾンのコメントなどを見てみると、おおむね好意的なものが多く、ああ、なんだ、ぼくのニーズというのもそんなに異常なもの(笑)ではなくて、同じこと思っていた人たちもたくさんいたんだなあ、と感じた次第。
考えてみたら、あたりまえ?
ブロードバンド全盛の世の中なのかもしれないが、大半の情報は相変わらずテキストでやりとりされているし、情報の質や深度といったものは、単なるバイトサイズやスピードでははかれないところがある。
細かいことを言い出したらきりがないが、使った感じは悪くない(細かい使用感などはそれこそアマゾンのコメントなどを参照してください)。
(「ぽめら」。たたんだ状態。ほとんど文庫本サイズ)
値段も手頃というか、定額給付金+アルファといったところだ。
定額給付金も、「またぞろくだらねえ政策考えやがって、税金まけたほうがええんちゃうか」などと近所のスタンドバーでみんなでけちょんけちょんに言っていたが、いざオカネがもらえるとなるとやっぱりうれしいのである。
そう、ぼくは人一倍炭酸ガスを吐き出す俗物なんである。
別にITオタクでもなければテクノロジー中毒でもないが(と、おもう。かみさんはどう思っているか知らない)、進化のフローに適合するものであればテクノロジーは必要なステップだと考えている。
少なくとも、テクノロジーのすべてを放り出して後戻りすることはできないだろう。
テクノロジーは障壁ではなく、踏み台、プロセスなのだ。
(文庫本サイズなんだから、文庫本カバーにはいるだろうと思ったら本当に入った。写真は無印良品の文庫本カバー)
ところで、KINGJIMさんはこの機械でモウカっているのだろうか。
モウカってほしい、と切に願います。