水のように | ぼくは占い師じゃない

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易経という中国の古典、ウラナイの書を使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう! というブログ……だったんですが、最近はネタ切れで迷走中。

久々に占いの話です。

長くなってしまいました。
ご用とお急ぎでない向きは
よろしくおつきあいのほどを。


ここのところの、六十四卦の紹介ログ、
「××:通りがかりの人へのメッセージ
または「××」の意味」
シリーズでは、
下卦が坎(かん)、コード番号でいうと
「6」の卦の紹介になっています。

坎卦は自然物でいうと、
「水」が割り当てられています。

水といえば、四難卦。
四難卦の説明はしたかなぁ……
と過去ログを検索してみると……

去年のちょうど、9月。
イキナリ六四卦ではだめなのか
というお話のなかで、
カンタンだけど一応説明しています。

すっごく粗っぽくいうと、
易システムは異なった64のメッセージのうちから、
あるひとつのメッセージを無作為にとりだして占うものです。
(おみくじではありません!その辺の話は、2005年11月のログ、
【こたえはどこから】 をドウゾ(増えてきたな~自己参照。))

個人的には「いい・わるい」という言い方は、
あまり好きではないのですが、
「一般的には」いい卦わるい卦というのは、
確かにあります。

四難卦は、その名でわかるとおり悪い卦。
すべて「水」が絡んでいます。
どんなふうに悪いのか。
「イキナリ六四卦ではだめなのか」の説明を転載
します(ちょっとドドイツ風に変えてあります)。

屯(コード番号:64)
  =(ちゅん)下卦震の動きを上卦坎が妨害します。
  地面カチコチ、芽が出ない。
坎(コード番号:66)
  =(かん)純卦。上下坎。穴が二つある様子です。
  はまって這い出て、またはまる。
険(コード番号:67)
  =(けん)字からしてケワしい。
  前に急流(坎:外卦)、背後にお山(艮:内卦)。
  にっちもさっちもいかんぜよ。
困(コード番号:26)
 =(こん)上卦の沢から下卦の水へ。
  水がダダ漏れ、枯れた沢。

しなんか

このうち26は
(2006年07月22日ログ
【26:通りがかりの人へのメッセージ
または「困(こん)」の意味】
)で、
すでにご紹介しましたが、
残りはこれからです。


で、なぜ「水」絡みがそんなに悪いのか、
というのが今回のおハナシです(なげーマクラだな~)。

このコード番号6の八卦には「坎」
という名前がつけられていまして、
あまり見かけない字ですが、土へんに「欠ける」。
土が欠ける、つまり地面に掘られたアナを意味しています。
卦のカタチをみてもそんなかんじですよね。

かん2

なんかこう、人(真ん中の陽爻)が、
くぼみ(上下の陰)はまってしまっていて……
オトシアナに落ち込んでしまった人を上から眺めた図、
ということになりましょうか。
ちなに漢和辞典によりますと、
「欠」は人が身体をくぼませた様を描いた象形文字だそうです。
それで、なんで「水」なのかというハナシですが、
水は低いところにたまります。
アナっぽこにもたまるわけです。
そんなわけで、自然物としては水と結びついている……
というのが一般的な解釈です。

易システムは出自は中国です。
あちらにはハンパなく
でけえ河がありますよね。
揚子江、黄河。他にもいろいろ。
水です。
ちょっと前にもありましたが、
氾濫をはじめとする水難も多かったのではないか。
そんなところからも、

「坎」=「水」=災難・困難

という図式が成り立ったのではないかと……
個人的には思います。
とくに、どこかにそんなことが
書いてあったわけではないのですが。

そんなこんなで、実占でこの坎が出ると
『うわ』
などと、休日に職場の会いたくない人に
会ってしまったような感覚を
反射的に覚えたりしてしまうのでございます(大奥か!)。

とはいえ……

ここは日本。

そんなに毛嫌いすることも
ないんじゃないかと思います。
いえ、職場の人じゃなくて坎卦のことです。

日本では水は災難というより、恵みです。
世界的にみてもこれほど水が豊富なところも
珍しいといいます。
飲み水に困るということはありません。
ほかにいいところもたくさんあります。

まず柔軟ですよね。方円の器に従う。
四角い入れ物に入れば四角く、丸い入れ物に入れば丸くなる。
高いところから低いところへ流れる。なにをするにも自然体です。
すべてものを清める働きもある。
水のように澄んだココロ。
もう一度、坎卦のカタチをよ~くみてください。
やわらかいもの(上下の2陰)に、
芯はかたくしっかりした高貴なもの(真ん中の陽爻)がつつまれています。
人あたりはあくまでやさしく、芯はシッカリという構造です。
誠実さ、真心なんて感じもしますね。
また、水は命です。水なしでは生きていけません。
ぼくらの身体の70パーセントは水です。

まあ、よく考えたらアチラ(中国)の古典である
「道徳経」の中でも

「上善水の如し」

な~んていって、
水の徳を手本にしようということが書いてあったりします。

まあ、結局ナニがいいたいかというと、

坎=悪い

といったような、固定的なもののみかたは
やめましょうというハナシでして。

あ、これって占いに限った話じゃないな。
ドン・ミゲル・ルイスも「思い込みをしない」
っていってたように記憶しています。
日本では水は恵み……
とかいいつつ、最近は、
そうともいえないケースが頻発しているようですが、
これも、ぼくたちが何かの
「思い込み」をし続けているせいかもしれません。