みなさんおはようございます。中浦和(さいたま市南区鹿手袋)の歯医者 いちかわ歯科の院長の市川です。

 

皆さんはこちらの動画をご覧になったことがありますか?

 

 

 

 

 

これはカナダの心臓病と脳卒中に関する財団が制作したCMです。

左側の男性は、仕事や趣味を楽しみ、家族とともに食事をとるシーンが描かれています。

その一方、右側の男性は病を患ってしまったのでしょうか、病院から出られずに過ごす様子が描かれています。

 

人間はいずれ死を迎えますが、残された時間をどう過ごすかは誰しも考えたことがあるでしょう。

最期の10年をどう生きるかは、今からの積み重ねにかかっているといっても過言ではないのです。

 

●平均寿命と健康寿命

人間が生まれてから死を迎えるまでの平均的な時間を表す「平均寿命」のほかに、「健康寿命」という考え方があるのをご存じですか?健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることない期間のことです。

 

2023年にWHOが発表した国別の健康寿命ランキングでは、日本は平均健康寿命が74.1位で世界1位でした。しかし、日本人の平均寿命が男性で81.05年、女性で87.09年であることを考えると、平均寿命と健康寿命の差をできるだけ縮めていく必要があるとお分かりいただけるでしょう。

 

●最期の10年も健康に過ごすためには

平均寿命と健康寿命に差が生まれると、どのようなことが起こるのでしょうか。入院や介護が必要になり、何かしらの制限を受けながら生活を送ることになります。また、医療や介護を必要とする時間が長くなると、医療費や介護費の負担も大きくなります。厚労省の調査によると、日常生活が制限される要因には認知症、脳卒中、加齢による衰弱、関節疾患、骨折などが挙げられます。これらの病気を予防することが、最期の10年も健康に過ごすために大切なことがのです。

 

●歯科でできること

様々な病気を予防するためには、日頃の健康を保つための生活習慣を整えることが重要です。特に、運動、食事、睡眠の質を上げることが求められるでしょう。歯科においては、歯を失う原因となるむし歯や歯周病を予防するための定期検診やメンテナンスに加え、口腔機能の低下を予防し、低下を遅らせることが大切です。お口の中を清潔に保ち、よく噛めて、しっかりと飲み込むことができる状態を維持・向上していくことが、全身の健康にも繋がります。最近では、口腔機能低下症の検査や指導、サポートも保険の範囲内で行えるようになりました。また、当院では訪問診療を行っておりますので、実際に患者様のご自宅に伺い、お口の中のケアや摂食嚥下機能の評価、お食事の支援も可能です。

 

●まとめ

最期の10年も健康に過ごすためには、今から様々な病気を予防することが大切です。その第一歩としてお口の中を健康に保つためにも、定期的な検診やメンテナンス、毎日の丁寧なセルフケアを欠かさないようにしましょう。

 

みなさんおはようございます。中浦和(さいたま市南区鹿手袋)の歯医者 いちかわ歯科院長の市川です。

 

近頃はすっかり秋の陽気となりました。この時期の心配事といえば、台風ですよね。台風は7月から10月にかけて増え、甚大な気象災害をもたらすおそれもある熱帯低気圧です。この台風が、私たちの身体にも影響を及ぼすのをご存じでしょうか?

 

 

●歯周病とは

私たちの口の中には数えきれないほどの数の細菌が棲みついていますが、そのうちの歯周病を引き起こす細菌によって歯ぐきをはじめとする歯周組織に炎症が生じる病気を「歯周病」といいます。30代以上の約8割が罹患しているともいわれており、歯ぐきが腫れて出血する、歯を支えている骨が溶けていずれ歯が抜けてしまうといった症状がみられます。

 

●台風と歯周病の関係

岡山大学が2015年に慢性歯周炎患者のべ2万人に対して行った研究によると、「台風により気温や気圧が急激に下がった場合、その1~3日後に歯周炎・歯周病による歯ぐきの腫れや痛みが強くなる」という内容が報告されています。詳細なメカニズムはまだ明らかにされていませんが、気温や気圧の変化が人間の体内のホルモン分泌や循環器系に影響を及ぼし、それが慢性歯周炎の急性期の発生に関与している可能性が示唆されたとのことです。台風がきてから歯ぐきに症状が出るまでに1~3日と時間差があるのは、気圧の低下がホルモンの分泌に影響を与えて歯周病原菌の増殖を促してから、歯周病原菌が歯周ポケットの中で繁殖して炎症反応を引き起こすためであると考えられています。そのため、これまでは特に目立った症状がみられなかったとしても、台風の上陸後に歯ぐきがうずくような違和感を生じる可能性もゼロではないのです。

 

 

●歯周病以外にもある、台風によって影響が出る疾患

同じく岡山大学の研究によると、気象の変化によって症状が悪化するのは歯周病だけではないと報告されています。顎関節症のような顎顔面領域の疾患や、血圧や心筋梗塞、脳卒中、喘息、うつ病、関節リウマチ、頭痛といった全身疾患まで様々です。

 

●台風が接近してきたらどうすればよい?

いざ台風が発生し、日本に接近してきた場合はどうすればよいのでしょうか。やはり基本となるのは、いつ台風が来てもよいように日頃からお口の中を清潔に保ち、良い環境を整えるということです。自分は歯周病ではないと思っていても、それは自覚症状がなく気づいていないだけかもしれません。毎日のご自宅での歯磨きやセルフケアを丁寧に行うのはもちろんのこと、定期的に歯科医院で検診やクリーニングを受け、歯周病の予防・治療を欠かさないようにしましょう。

 

●まとめ

台風から身を守るためには、非常用品の確認、室内の安全対策などを日頃から怠らないことが大切です。同様に、身体に起こる変化も最小限に抑えられるよう、日頃から歯周病をはじめとする病気を予防し、罹患した場合は早期に治療する意識づけを徹底しましょう。


 

みなさんおはようございます。中浦和(さいたま市南区鹿手袋)の歯医者 いちかわ歯科の院長の市川です。

 

最近、森絵都さんの短編集「獣の夜」(朝日新聞出版)を読みました。この中の「太陽」では、主人公の女性がある日奥歯の猛烈な痛みに襲われ、歯科医院を受診するところから始まる物語です。しかし、歯科医院を受診したものの、むし歯でもなく歯周病でもなく、歯や歯ぐきには何の問題もないと歯科医師から告げられ…というストーリー。

 

 

●歯は悪くないのになぜ痛む?

歯が痛むのには何か問題が起きているからだ、と思って歯科医院を受診したにもかかわらず、歯や歯ぐきに病気は見つからない。このような状況は実は誰にでも起こる可能性があるのです。この「太陽」の物語でも、主人公は歯の痛みの原因は「心」にあると告げられます。歯そのものではない「心」の痛みを、歯が「代替ペイン」として代わりに背負っているということです。身の回りに起きた悲しい出来事にいつしかフタをしてしまっていた主人公ですが、悲しいという気持ちに寄り添う時間があってもよいというメッセージを感じる物語でした。

 

●非歯原性歯痛とは

歯は悪くなっていないのに歯が痛む、という事象は「非歯原性歯痛」として医学的に定義されています。非歯原性歯痛の原因には神経痛や頭痛、筋膜や副鼻腔に原因があるものなどいくつかに分類されていますが、その中でも、心に原因があるものを「心因性疼痛」といいます。これらの非歯原性歯痛では痛みの原因が不明であるため、歯の神経を抜かれたり抜歯になったりするケースがあることは社会的問題として学会等でも議論がなされているところです。

 

 

●痛みに寄り添う「ペインクリニック」

非歯原性疼痛や慢性的な難治性疼痛の治療を行う場として、「ペインクリニック」があります。大学の附属病院などには設置されていることが多い専門外来です。私自身がUCLAで客員研究員をしていたときにも、口や顔の痛み(口腔顔面疼痛)を扱う講座に所属していました。ペインクリニックでは、症状や身体に起きていることの所見から多角的に痛みの原因を診断し、薬物療法や神経ブロックなどの治療方法によって痛みを軽減させることを目的としています。

 

●心因性疼痛の治療

心因性疼痛では、心理的要因のほかにも疼痛性疾患や精神疾患(うつ病など)が複雑に関与していると考えられています。そのため、まずは痛みを身体的な因子と精神的な因子に分けて評価し、その上で抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法、音楽療法、鍼治療など様々な角度から治療を行います。

 

●まとめ

歯の痛みの原因は、必ずしも歯や歯ぐきにあるとは限りません。原因不明の痛みに悩まされることがありましたら、一度歯科医院を受診し、然るべき治療を行っていきましょう。