いちかの逃亡 | さ・い・お・その隠し部屋

 

やほー! いちかだよ! 前回の続き。

 

彼ら4名が決して強い繋がりを持っていたわけじゃなかったから、抜け出すチャンスが巡ったんだよね。

 

4名ともそれぞれお互いに思うところがあったみたいだった。ほんと滑稽だと思わない? 一見、同じ醜い趣味を共有してる彼らが、仲良くないんだよ?

 

わたしをギルドに誘ったステラは、わたしのことが大好きだった。いつもふたりで話したがってたし、頻繁にマイルームに呼び出しては、プレイさせない状況を作って、個通や個チャをしたがってた。

 

会話の内容も無意味なアピールが多かったの。

自営業でお金を持ってて、付き合った女性にどれだけ尽くしてきたか、その女性がどんだけ幸せだったか。昔から一途なんだってさ。だから、振られたことしかないんだって。

 

ゲームしたいぃぃ。

 

ていうか、きもい。語んなよ。

まったく興味のない話をしてきたし、わたしがディズニーを好きなこと知ると、泊まりで一緒にいこうってしつこく誘われた。

 

んーーーーーーーすこし、迷いはした。

すこしね。すこーし。一瞬だよ? ディズニーホテルはちょっとずるない?笑

 

挙げ句に、なんの脈略もなくアバターまでプレゼントしてくれた。

 

わたしゲームでプレゼントされんの申し訳ないから、断るんだよね。特に嫌いな人からのそういうのは必死に断る。欲しきゃ自分で買うから。買えるけど、買わないだけ!ってそこを強調する。

 

でも、押し切られることもあって、そういう場合、嫌いな人じゃなければ、素直に受け取ることもあるんだよね。下手に一生断るのも厚意に対して失礼じゃない? 受け取ったらわりと全力で喜ぶことにする! 物も気持ちも素直に嬉しいしね!

 

で、そいつともそういう押問答があって、全力で断ってたけど、送りつけられたから使うことも喜ぶこともなく、即叩き売りしてやった。買ってくれたプレイヤーに感謝しつつ、そいつには心で舌出して「ざっまあ」って正直おもった。

 

一方でわたしに興味を持ってたのは、ステラだけじゃなくて、大賢者のハルも同じだった。

 

こっちは自分の主催する固定のフォースで、エンドコンテンツをクリアすれば、装備を揃えるのは簡単だと自慢してきて、自分が許可さえすれば、必須ステータスに満たなくても、攻略に参加できるとわたしを説得してきた。わたしに必要な装備、ステータスを揃えてくれるし、そのために必要なアイテムの足りない分は、全部買ってくれるんだって。加えて彼女になったら、色んな人に紹介してくれて、このゲームでの確固たる地位も約束してくれたの!!

 

は? 正気か?

地位ってなによ。

言ってることが二次元のそれすぎて、意味わかんない。

オタサーの姫には憧れるけど、クソサーの奴隷にはなりたくないって思った。

 

そんな塵みたいな人らから、ゴミみたいなアピールされて陶酔するはずもなくて! というか、あんたらふたりが束になっても、わたしの年収の足元にも及ばないでしょって見栄もあったし、お金やステータスで釣るには正直、底辺すぎる提案だと思ったよ。

 

あっ! ちがうよぉ!

わたしがモテるとか、人気者とか、そういうこと言いたいんじゃないからね! そのどっちもないことが悩みなんだから! ほっとけ。

 

ここから気持ち悪い劇場がはじまるって話。

そもそも、ふたりはわたしに♡♡♡なんてないのは知ってるし、ワンチャンおまたにありつければご馳走様っていう、叶わない夢を見てるんでしょ。こういうのわたしだけじゃないことも知ってる。ていうか、露骨すぎん?

 

このふたりが特にわたしを気に入ってたけど、これまでの振る舞いを目の当たりにすれば、だれだって囲われたいと思うはずもなくて、どっちにも相手に好印象を持ってるフリをして回避してた。んと、つまり成金ステラには大賢者ハルに、大賢者ハルには成金ステラに、わたしの好意をアピってた。

 

こうすることでわたしへの興味を失ってくれること。ワンチャンこういうのを切っ掛けに、どさくさでわたしが逃げられたりするんじゃないかって思ってたから。

 

そしたら思いのほか、効果が大きくて、彼らが互いの悪口をわたしに吹き込むようになったの。

 

成金ステラは、大賢者ハルの悪口。

子持ちで奥さんとは死別って言ってるけど、ただの離婚。定職に就けない低所得者のクズだとか、生活保護で課金してるとか。もうボロクソ。

 

大賢者は成金の悪口。

自己中のオヤジ。金でなんでもできるって勘違いしてるただのデブ。戸建てを買ったけど、一緒に住んでくれる相手がいない寂しいやつ。レクサスに乗ってるけど、中古車。こっちもボロクソ。

 

 

ねえ、ちょっと、子供かって笑

陰口のレベル低すぎん?笑

っていうか、パーソナルな情報よく知ってんな笑

 

それ以降、2人が同じサーバーにいると、なんかちょっとギスギスして、わたしを挟んでチクチクし出す。ほんと気持ち悪い。これがコイツらじゃなかったら、どんだけ幸せだったことでしょう!

 

やめて! わたしのために争わないで!!ってね笑

 

でも、これって使えるかも。

嫉妬を煽るのはわりと得意なんで!

 

その手法はわたしの性格の悪さと、手口を露呈するから内緒にするけど、見事にひょんなことから大喧嘩してくれて、めっちゃ仲違いすると思ったんだけど、誤算。

 

大賢者ハルが成金ステラに擦り寄りはじめて、わたしを切り捨てた。なんかあれよあれよという間に状況が一変して、わたしが悪者になって、口軽女だの尻軽女だの。もう散々な言われっぷり。めっちゃ怒鳴られるわ、中傷されるわで、人生やめたくなるようなこと言われまくった。

 

今まで生きてきて、直接、他人に言われたことのないこといっぱい言われて、すっごい傷ついたし、その日は朝まで眠れなくて、めちゃくちゃ泣いた。ある意味では自業自得だから、100%彼らが悪いって責められないけど、にしてもだよ。

 

そもそも論だけど、こんなことなる前に嫌なら即抜けしてればよかったんだしね。でも、それができないわたしの弱さよ。

 

こんなクソみたいなゲームやめようと思ったけど、翌日からあの二人は、のうのうとゲームしてるって考えると、なんかムカついた。どうにかして仕返しできないか、すごい考えたの。

 

でも、あのギルドに嫌われたら、もうこのゲームでは遊べない。そのくらい影響力のある人たちだって聞かされてたし、彼らの会話からも察してた。けっこう悩んだよ。
 
でも、冷静に考えると、ゲームをはじめて関わった人はそのギルド以外にはいなくて、しかも、深く接していたのはその4人だけ。
 
たしかに彼らのいうことが事実だとしたら、造反したわたしの居場所があるはずもない。リアルとは違って数億、もっというと数十億の分母があるわけじゃないんだ。彼らに多大な影響力があって、その他の大手ギルドとも繋がっているなら、ありえるよね。オンラインゲームってそういうものなんでしょ、きっと。
 
ありえる?
そうなのかな。
 
リアルのそれと違ったとして、それでも数百、数千のプレイヤーが、遊ぶ目的で繋がってる仮想空間だよね。そんな世界を掌握することなんてできるの? ふつうの人にはできないよね。この数ヶ月間、ログインするたびにそう言われてたから思い込んでたけど、現実的じゃなくない?
 
この疑問がゲームを続けさせた。
 
ログインすると、ギルドのサブマスからメッセージが来てて、心配してくれてたし、彼女のフレンドがいるギルドも紹介してくれるようだったけど、このギルドに関わるところは一旦やめておこうって思ったから、丁重に断って自分で探すことにした。
 
話の一部でも事実なら、もうすでに話が出回って、わたしを受け入れる先なんてないかもしれないとか、まわりにいるプレイヤーがすでにわたしを知っていて、好奇な目で見られてるのかもとか、嫌な気持ちは拭えなかった。大げさだと思うけど、これが洗脳の怖さなんだろうって過去を振り返るとおもう。
 
でも、そんな心配をよそにあっさり別のギルドが受け入れてくれて、そこで色んな話を聞いてたら、随分、わたしの知ってる世界とは違ってた。安心もしたけど、より腹が立ったことも覚えてる。
 
わたしが無知すぎたのかもしれないけど、よく考えればそんなわけがないんだよね。だいたい、ギルド間で競うコンテンツが存在しないんだから、優劣のつけようもない。ギルドの大小はあってもそれだけ。それ以上の影響力なんてあるはずないし、プレイヤーだって強さの強弱があるくらいで、それ以上なにがあるわけでもないんだ。せいぜい、徒党を組んで、どこかで晒してあることないことウダウダ言ってるのが関の山。
 
わたしのような初心者を捕まえては、あのサーバーに連れ込んで、洗脳して出会いを目的として活動する、チンケな出会厨だったんだろね。そう考えると笑えてくる。どんだけ卑怯で、自分に自信が持てない人たちなんだろって。
 
その後も色々あって、2つくらいギルドを渡り歩いて、結局、わたしには合わなくて、ソロでプレイしてたときに、さいおそを見つけた。
 
で、いまがある。

 

 
そんな経験からさ・い・お・そでは、Discordの運用の仕方には十分に注意してほしいし、ゲームにログイン中のプレイヤーは、ゲーム内のチャットで基本的には交流してほしいって、ずっと思ってたんだ。
 
変な気を起こして、余計なことを画策してほしくなかったし、Discordに参加してないメンバーもいたから、その人たちとの差を無くすためにも、基準をチャットに合わせてほしかったのかな。
 
そう思ってたけど、そんな提案もできないまま、時間はながれて、人も減って、そんなこともうする必要もなくなっちゃったっぽいから、もういっかって思ったってお話でした笑
 
めっちゃ長かったね。ごめん笑
 

こわーい。いちカーシーでした! ばいばい。