いちかの告白 | さ・い・お・その隠し部屋

 

なんでガーシーって人気あったの?

むぎチョコみたいから?笑

 

やっほー! いちかだよ!

 

さ・い・お・そは、Discordに参加するかは、メンバーの任意になってるのね。そういうギルドはたくさんあるから珍しくはないと思うんだけど、さ・い・お・そでは、必ず、Masterがどうするかをメンバーに訊くようにしてるの。

 

意外だけど、こうして最初に選択を促すのって、他のギルドでは多くはないんだよね。もし、参加したかったら声かけてっていう方が多かったし、そのこと自体を直接言われない場合もあった。ギルド掲示板に書いてあったり、募集の掲示板でDiscordについて触れているだけだったりね。

 

ギルドによってやり方や考え方があるけど、良し悪しは別として、さ・い・お・そのようなやり方が一般的なのかなって思ってたから、わりと衝撃ではあったかな笑

 

選択を迫られたら、断りづらい人もいるだろうし、逆に自分から参加したいとは言いづらい人もいるだろうから、正解はないとおもう。ただ、Master Karkは、告知はある種の義務だと考えてるんだとおもうよ。

 

ギルドがDiscordを活用してることをメンバーが知らない状態がないように、全員に同じ内容を告げてるんだとおもう。

 

伝えるうえで、任意であることや、無理はしなくていいよって趣旨を丁寧に、たぶん、必ず付け加えてるとおもう。何度かそんなやりとりを目撃してるし、わたしの時もそうだったからね。あくまでも任意だって強調するのも、彼なりの考え方があって、そのあたりは、とても神経質になってるんじゃないかな。

 

わたしは断ったら輪を乱すかもとか、変に思われるかもって、同調圧力を勝手に感じてたから、断り切れず参加したんだよね。

 

もちろん、Masterにはそんなつもりもないし、実際にDiscordに参加しなかった人もいたけど、だからどうってことはまったくなくて、わたしの思い違いというか、極度な被害妄想だったのかなっておもう笑

 

でも、最初はギルドの中身をよく知らなかったし、Karkはなんか怖いし、メンバーとはなんとなく馴染めない気がしてたし、すごく不安だったね。

 

やっちまったかなぁって、心の奥底で思ってた笑

 

 

そう思うようになった切っ掛けは、ソウルワーカーをはじめたばかりの頃に遡るんだけど、いちばん最初に勧誘されて加入したギルドが、けっこうしんどかったの。

 

人数もそこそこ多くいて、メンバーはみんな気さくに話し掛けてくれて、まるで求人サイトによくある『当社の社員はみんな和気藹々としています!』みたいな、ベンチャー企業のノリそのものだったんよね。

 

一見、楽しい自由なギルドって感じだし、実際、そこのサブマスにはお世話になったというか、悪い人ではなかったし、いいギルドに入れてもらってよかったぁって、わたしのピュアな気持ちも束の間。

 

現実はちがって。

わからないことを尋ねても答えが返ってこないし、遊ぶのは決まったグループがあって固定化されてたりするから、相手にされない。そんな矢先に届いたメッセージ。

 

>>ウチと時間あわなくて、ごめんね。女子なら、はやくほかのギルドみつけた方がいいとおもう。へんなこと言ってごめん<<

 

サブマスからきたメッセージ。

たしか、こんな内容だったとおもう。

 

え、めっちゃ意味深なんだが......?

なにこれホラゲーだったんだっけ?

 

わたしとそのサブマスって、ちょうど入れ替えくらいにログインするかんじで、ちょこっと挨拶を交わす程度の関係だったから、なおさら、このメッセージ送られてきたときは怖かったよね。

 

もちろん、返信もしたよ。

どういう意味ですか?みたいな。

 

>>くわしくはウチもしらない。いちかさんを連れてきた人はやばいよ。へんなことに巻き込まれないように気をつけて<<

 

えー、詳しく知りたかったんですけど笑

でも、忠告はするけど、深く関わりたくはないし、正確なことはわからないって、雰囲気がものすごく伝わってきたから、それ以上は訊かない方がいいと思って、了解した旨だけ返信して、そのやりとりは終わったの。たぶんだけど、彼女と同じ時間帯で遊べてたら、状況はいろいろ変わったのかもしれない。

 

実はそのギルドは、ギルドのディスコサーバーとは別に、裏サーバーみたいなのがあって、そっちにはマスターと、そのお友だちが3名くらい参加してるだけで、あとのギルドメンバーは参加してなかったし、裏サーバーの存在も知らされてなかったみたい。

 

どうしてそんなことをわたしが知ってるかっていうと、わたしが誘われて参加したのが、その裏サーバーの方で、そのサーバーの口外は強く口止めされたからね。

 

このころ、Discordってなにかも知らなくて、それまで外部ツールって、Skype以外使ったこともなかったのね。だから、導入もその裏サーバーの人に教えてもらったんだけど、いま考えたら不思議だった。

 

>>ディスコやってるからおいで<<

 

>>ディスコってなんですか??<<

 

Discordの説明をされて、わたし的にはあんま乗り気じゃなかったから断ったんだけど、みんなやってるし、このゲームはチャットをあんまり使わないから、Discordいれておいた方がいいって、だいぶ積極的に勧められて、しぶしぶ導入することを決めたんだけど、不思議なのはこの一連のやりとりが、全部ささやきチャットだったことなんだよね。

 

ささやきチャットは、1on1のチャットで、第三者には表示されない仕組みになってるのね。そんときはチャットの使い方も、ゲームの文化もよく知らなかったし、それまでのギルドの雰囲気と、その説明が一致する点が多くて、特に疑問には思わなくて、そういうもんなんだって思い込んじゃったんだよね。でも、みんな使ってるツールを説明するなら、別に通常のチャットでもいいよねって。まあ、あとの祭りだけど笑

 

言われるがまま、サーバーに参加したんだけど......。

 

あれ? 人数すくなくね?笑

 

そこではじめて、ふたつのサーバーがあることを知ったのね。わたしはギルドの幹部候補だからとかって、まったく意味のわからない理由で、裏サーバーに参加させられちゃった。

 

それからというもの、ゲームにログインすると、ディスコのvcチャンネルにインするよう強要されて、インするまでゲーム内のチャットで、早く入るように言われ続けて、毎回ログインするたびに強要されるハメになったんだよ。

 

最初は来なよ~程度の軽いノリだったんだけど、チャンネルに入るのをなんだかんだ言ってゴネたり、vcつけなかったりしてると、徐々に語気が強くなっていって、めちゃくちゃ苛ついてたのが伝わった。いや、もう苛ついてますって、わかるように敢えてしてたんだとおもう。

 

当時、同居人もいたし、そもそも、声に自信ないうえに人見知りなだけに、知ってる人でもガチガチに緊張するから、勢いとノリがないとvcで話すのはちょっと抵抗感あるのね。わりと必然性がないと厳しいんだ。しかも、前にも別の記事で話したように、わたしの性格的に人を選ぶ。それなのに、あろうことか知らんおっさんたちと、強要された状況の中で、なにをどう話せっていうの? もうぜんっぜんどうしていいのかわかんなかったよ。

 

でも、なんか怒ってるし、めっちゃ怖いし、嫌々ONにして案の定、話すことなんてなくて、質問攻めされるっていう、ヘタクソなコンパのススメ。The・尋問タイムがはじまる。

 

『なんだ声かわいいじゃん』

 

知ってる。

 

『いくつなの?』

 

成人済み。

 

『なにやってる人?』

 

仕事。

 

『どこすんでんの?』

 

地球。

 

そう言いたかった。でも、小心者なわたしは、そんなことも言えず、4人の男性によってたかって尋問される。これだけでわりと疲れる。

 

口が悪いの知ってるから怖いし、適当にごまかしながら返事してると『緊張してるんだね。かわいいww』みたいな、超勘違いした気持ちの悪いこと言われて、鳥肌がぶっ飛んだ。ふつうにただ不機嫌なだけなのに。

 

わたしのやりたいことはスルーされて、メイズを頼んでもいないのに手伝ってもらう。もちろん、勝手にストーリーをバンバン進められ、よくわからないまま最後まで辿り着いちゃう。おかげでゲームのシステムやストーリーをまったく理解できなくて、ただただレベルが上がっただけ。

 

『よかったな。後は装備だけだ』

 

よかった......?

なにいってんのこいつら。

 

ここからなにをどうしたらいいのかもわからなくて、急に超難度のレイドに引っ張り込まれたと思ったら、なにもできずにただただダウンして復活を繰り返す。そのうち、気付いたらクリアしてるっていう、ありがた迷惑な自己満に付き合わされたよ。

 

ほんとにつまんなかったね。

 

サブマスの言ってたことってこれだったのかな。

そう思ったけど、まだ序の口だったよ。

 

ソロレイドじゃ画面共有させられて、わたしのプレイを評価されるし、エンドコンテンツは参加させてもらえないけど、画面共有で見させられて、他のフォースやパーティーメンバーを4人でボロクソ言ってゲラゲラ笑ってた。そのあいだわたしは鏡を観たり、スマホをいじったり、本を読んだりして持て余した時間を潰してたよ。

 

ゲームしたいぃ!!

 

とにかく、他のプレイヤーをバカにするのが日課。

相手が固定のメンバーでも、ギルドのメンバーだとしても、フレンドだろうと野良だろうと、そんなものは関係なくて、いかに自分たちが優れたプレイヤーで、その他がゴミプレイヤーかを解説して称え合う。そんなものをログイン中ずっと聴かされるの。壊れそうになったよ。

 

くだんない。

 

負け惜しみとか、強がりとか、そんなんじゃなくて、心から本心でくだらないっておもったよ。こんなことしないと、装備もステータス強化できないなら、なんもいらないと思った。

 

1000歩譲って、ステータスや装備といったゲーム関係のデータ比で、なにかを評価して見下すとか、プレイヤースキルの高低に関して、内輪でウダウダ言ってるのは理解できるけど、そういうの好きな人たちだけでやってって思うし、そこから派生して、性別、年齢、人間性に対して、よく知りもしないのに、ゲームのデータ上から得られる情報で勝手に決めつけて、評価することにわたしは強い嫌悪感と違和感を抱いてたんだよね。

 

この人たちは、このゲームが世界の中心で、すべてなのかな。飽きて別のゲームに移ったとして、きっと今度はそこが世界の全てになるんだろうなぁ。

 

吐き気がする。

 

なにより、それを大声で言えず、コソコソと隔離された空間で吠えて、当人を目の前にすると、仲いい振りをして何事もなかったかのように接する。

 

こんな恥ずかしい言動を恥かしいとも自覚できないで、むしろ、楽しんでいられる神経をわたしは到底、理解できなかったんだ。

 

わたしも恥ずかしいことはいくらでもあるよ。

プレイの下手な人より、上手な人の方が好きだし、遊んでても楽しい。それはわたしが下手だから、ある種の憧れだったり、同じ土俵で遊ぶことで錯覚できる感覚が気持ちいい。

 

だけど、ただ、それだけだよ。

それ以上のことはなにもない。

なにも得られないし、なにも感じない。

ただ、それだけのことなの。それだけのことを誰かに語るのは憚る。まして、自分の能力や立場が優れているって思えないし、そう言葉にするなんて、わたしは羞恥心をそんな安く捨てられないよ。

 

だけど、彼らはちがった。

その中のひとりはサービス直後から、プレイしているプレイヤーで、フレンドもたくさんいて、様々なプレイヤーから頼られるような人を演じていたのね。複数のギルドに所属していて、全てのキャラが最高に強い。

 

そだよ。いわゆる廃人プレイヤー

 

でも、この世界じゃ、とても優しくて、慕われていて、フレンドもたくさんいて、おまけに自分の大きいギルドまでもってる。なんでも知ってる大賢者ってとこだね。

 

だから、なんか信頼されちゃうのかな。

プライベートな会話や相談、趣味趣向を語り合える人が多くいたみたい。でもね、その内容のほとんどわたし知ってんの。だって、画面共有で第三者に洩らしていて、それを見て笑って楽しむのが、彼らの趣味だったからね。

 

そう、そんな彼らの空間にわたしもいた。

このゲームってこういう世界なんだって思ったし、気持ちがいいものじゃなかった。それでもなにも言えないで、言われるままの自分が情けなかったよ。その趣味にわたしも組みしてるようで、辛かった。

 

でも、わたしも同じ被害者になりたくないし、こちら側にいる限りは、安全なんだと怯えてもいたとおもう。

 

なかなか抜け出せなかったのは、わたしも知らないあいだに、このギルドが世界の中心になりつつあったし、自分の精神的な弱さが招いていたんだとおもう。きっとなにもなければゲームをやめてたか、彼らと同類に成り下がってたんじゃないかな。わたしにもそういう一面がないって否定はできないから。でも、彼らとは共有できなかった。嫌悪感がずっと早く順応を追い越していたから。


今日はここまで! 続きは次回! またね。