本日はアイリスNEO11月刊の試し読みをお届けしちゃいます!
о(ж>▽<)y ☆
試し読み第1弾は……
『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。6』

著:天壱(てんいち) 絵:鈴ノ助
★STORY★
ゲームのラスボス女王・プライドに転生し、自らが引き起こす悲劇を回避して、大切な人達と民を幸せにする為がんばってきた私。同盟国の危機にフリージア王国の王女として戦争に参戦し、なんとか防衛戦を勝利に導くことに……。終戦後、負傷した私を心配した仲間に囲まれながら、私は防衛戦前夜を思い出してーー。
気づけば、皆に物凄く愛されている悪役ラスボス女王の物語。防衛戦でのそれぞれの物語、その後を描いた番外編を掲載した第6弾登場!
2023年7月TVアニメ化決定!!
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彼らの視線を一身に受けながら、プライドは兵士や騎士達へ労いの言葉と王女としての感謝の言葉。そして今後数日の滞在について語った。
「最後に、……この足の怪我が皆様も御察しの通り滞在延期の理由です。騎士達が命懸けで私を助けて下さったお陰でこれだけで済みました。この場をお借りして心より感謝します」
今まで一部の騎士達には戒厳令を敷いていたがこの場をもって取り下げると、自身の周りを守る騎士達をぐるりと笑みを浮かべ見回した。会釈のみで応え騎士として任務中表情を崩さない彼らは、それぞれ喉だけを小さく鳴らした。
「御心配かけて申し訳ありませんでした。ですが、私はこの通り健在です。どうぞ、残りの数日間は身を休めて下さい。私の準備が整い次第、順次出国を致します」
見上げる騎士達から短い発声による返答が大広間中に響き渡った。さらにはハナズオ連合王国の兵士達からも同じように覇気の強い声が返ってくる。この中にあの時の衛兵もいるのだろうかと思いながら、プライドは静かに彼らを見渡した。
「姉君。……それでは」
ステイルが声を掛け再び退場を促すと、プライドは一度だけ頷く。再び松葉杖をつき、ゆっくりと彼らの前から退場した。
直後には騎士団長からの号令が響き渡り、騎士達もそして集まった兵士達も一同に解散した。
フリージア王国第一王女の負傷に、サーシス王国城内どころかハナズオ連合王国中が騒然となった。
「えっ?! プライド様が?!」
声を上げた直後、騎士であるエリックは身体を捻らせたせいで激痛に別の声を上げた。ぐあ、と呻きが上がり、一番隊の騎士に「大丈夫ですか?!」と無理に動かないように肩を押さえつけられた。
一番隊副騎士隊長エリック。栗色の髪と瞳を持つ彼はハナズオ連合王国の防衛戦で傷を負い他の負傷者同様、プライドの公の場での挨拶へ足を運ぶことはできなかった。大広間へ向かった他の騎士達が戻ってくるのを、重傷者のみに割り当てられたベッドで待ち続けた。
そして帰ってきた一番隊の騎士から開口一番に告げられたのは、プライドの足の負傷についてだ。左足が包帯で固定され、松葉杖で歩きながら騎士達の前に姿を現したという話に、それまで気は逸りながらも冷静に待っていたエリックは一気に血の気が引いた。
「ですが、数日の滞在で完治はされるそうです。なので身体の欠損などではないかと……」
「アラン隊長とカラム隊長は?! 確か騎士の死傷者はいなかった筈だろ?!」
まさかお二人も……!? と、エリックは終戦から一度も姿を現していない騎士隊長二人の身も案じた。落ち着かせるように騎士が「お二人は無事だそうです。お二人の活躍でプライド様も命に別状はなかったと……!」とゆっくり問いに答えてやっとエリックは息を吐く。良かった三人ともご無事で、とそう静かに胸を撫で下ろした。プライドも怪我以外は元気な様子だったと告げられれば、元通りに硬いベッドへ身を沈める。
冷静さを取り戻したエリックが目だけで周囲を見回せば、自分以外の負傷者も同じような反応だった。騎士隊長二人が付いていながらプライドが怪我をしたことは信じられないが、つまりはそれほどの危機があったのだろうと考える。むしろ騎士隊長二人だからこそ足の負傷で済んだのだろうと思えば、本当にプライドの近衛騎士があの二人で良かったと思う。
当時の具体的な様子も騎士の口から広まり始めている。エリックのベッドの位置からは詳しく聞こえないが、今も騎士達の「流石アラン隊長!」「カラム隊長……!! 本当によくご無事でっ……!!」と声だけが聞こえてきた。二人が帰ってきたのかとも思ったが、騎士達の話し声から判断して、残念ながら話題になっているだけで本人達がいる訳ではなさそうだとエリックは理解する。騎士の誰もがアランとカラムの武勇伝を疑わず、尊敬の目の輝きも変わらない。騎士隊長二人への信頼はそれほどまでに絶対的なものだった。中には「それで、今アラン隊長はどこに?!」「さっきの護衛にはいらっしゃらなかったぞ?!」と騒ぎ、「カラム隊長を見なかったか?!」と救護室に飛び込んできた騎士もいた。
廊下で騒いでいる彼らの会話に交ざりたいという欲求をエリックは抑え、先に自分に知らせに来てくれた騎士に手だけで「お前も行ってこい」と背を押した。自分が知りたいように、彼もアランの武勇伝を聞きたいに決まっていると知っている。
はい! と答える騎士が早足で視界から消えていく背中を、ベッドに横になったまま見送っ……た、と思えばまた騎士が戻ってきた。しかも先程より血相を変えて駆け込んでくる様子にエリックは首を傾げる。しかも廊下からは凄まじい響めきまで溢れ込んできた。
……いやまさか、と。ふと、過る予感にエリックは騎士へ尋ねる前に口の端がヒクついた。そして慌てた様子の部下が再び自分の方に駆け込んでくると同時に、その声は凛と響いた。
「すみません、お邪魔しますね。……あっ! エリック副隊長!!」
カツン、カツン、カツン、と一歩いっぽ確実に近づく無機質な音。そして自分を名指しした明るい声にエリックは再び身体を起こそうとし、傷を痛めた。それに耐えながらも目を凝らせば、慌てた様子のプライドが自分に向かって真っ直ぐに杖の足を速めていた。更にはその隣にプライドの義理の弟であり第一王子のステイル、妹であり第二王女のティアラまでもが護衛の騎士達と共に続いていた。
「ッッ……、……プッ、プライド様!! な、何故こちらにっ…!!」
痛みに耐えながら声を上げる。大声を出し過ぎたせいで直後には再び脇腹の傷が痛んだ。上半身は包帯を巻いているだけで何も着ていなかったエリックは傷だけを押さえながら顔を上げた。
「騎士の方々からエリック副隊長が負傷されたと聞いて……。お怪我、大丈夫ですか?」
ティアラと一緒に至近距離から自分を心配そうに覗き込んでくるプライドに、エリックは思わず僅かに身を反らした。「いえ! だ、だい大丈夫です!」と叫ぶと同時にまた傷が痛んだ。そのまま、誰が言ったんだ?! と言わんばかりにプライドの背後の騎士達へ目を向ける。温厚なエリックにしては珍しい吊り上がった眼差しに、アーサーだけでなく誰もが思わず目を逸らす。
エリック・ギルクリスト。一番隊副隊長であると同時に、アーサーと同じくプライドの近衛騎士の一人だ。プライドへ挨拶すべく声を上げ、身体を起こそうと力を入れれば更に彼の傷は痛んだ。
「どうぞ楽にして下さい、エリック副隊長。私も楽にしますからお気遣いなく」
そう笑いながら堂々とプライドはエリックのベッド脇の椅子へと腰かける。ステイルが必要ならばもっと寛げる椅子をと言うが断る。ティアラも負傷している姉を気遣いながら隣の椅子へ並んで座った。
「騎士団長を庇って撃たれたのだと聞きました。……素晴らしい勇敢な行動だったと思います」
労わるように少し眉を垂らしながらプライドが笑みを浮かべる。それだけでエリックは血圧が上がり今にも塞がった筈の傷から血が噴き出すのではないかと本気で思った。緊張と戸惑いで上手く話せないままプライドからの言葉が続いていく。
「……でも、本当にご無事で良かった。また近衛騎士の任について下さるの、楽しみにしていますね」
他は痛みませんか? と包帯が巻かれていない部分にそっと触れてくる。ひんやりとした細い指や手の平が、火照った自分の肌に直接触れ、あまりの不意打ちにエリックは身体をビクッと震わせた。
「……少し、身体が熱いようですけれど。お熱とか、目眩は? 七番隊の方々の診断なら間違いないと承知の上ですが……」
今この時だけの発熱と目眩です、などとは口が裂けても言えない。本気で心配してくれているプライドに言葉も出なくなる。そんなエリックの姿にアーサーや騎士達は若干慌て始め、ステイルも流石に「姉君、そろそろ……」と助け船を出しかけた時だった。
「……無理はなさらないで下さいね。エリック副隊長に何かあれば、私が泣きますから」
エリックの身体からその頬に片手を添わしたプライドが、憂いを帯びた笑みをエリックに向ける。プライドの手がエリックの頬を薄く冷やしそして、……ボンッ! と熱を急上昇させた。
明らかに顔色が塗ったように真っ赤になったエリックに、プライドが短く悲鳴を上げる。「エリック副隊長?!」とそのまま熱を確かめるようにエリックの顔や首、包帯の巻かれていない部分へとペタペタ触れるプライドに余計エリックの熱が上がった。
大丈夫です、と訴えてもプライドからの猛攻撃に頭が真っ白になる。第一王女であるプライドが自分にわざわざ会いに来た。更には寄り添い、触れられ、自分に対してのみの言葉を掛けてくれた。ついさっきまでプライドを一目見れなかったことに少なからず落胆していたエリックにとっては完全に奇襲も良いところだった。本気でこのまま傷口から血が噴き出て死ぬのではないかとエリックだけでなく周りの騎士達も心配し出した時。
「……プライド様。こちらにいらっしゃいましたか」
低い、溜息交じりの声にプライドだけでなく騎士達全員が振り返った。見れば、騎士団長のロデリックが眉間に皺を寄せながらプライドの背後にまで歩み寄っていた。騎士団長の存在に部屋全体の空気が一気に引き締まる。騎士達が殆ど同時にロデリックへ挨拶をする声と、プライドやティアラが「騎士団長!」と上げる声が重なった。
「安静中の騎士達にも私からプライド様の件について伝えねばと赴いたのですが……」
ちら、と。顔の火照りが冷め切らない状態のエリックをロデリックは確認する。プライドに露出した右肩と首筋を触れられ若干パニックを通り越して涙目になっているエリックに、一目で状況を察したロデリックは自分の眉間の皺を指先で押さえ付けた。
「……プライド様。流石に第一王女殿下がむやみに男性の肌に触れるのはいかがなものかと」
騎士団長の落ち着いた声色に、水を掛けられたように冷静になったプライドは恐るおそるエリックの方を振り返る。顔を真っ赤にして、包帯を巻かれた部分以外上半身を露出したエリックは既に身体も真っ赤に火照りきっていた。その様子に再びプライドの短い悲鳴が上がり、自身まで顔を真っ赤にして「ご、ごごごごめんなさい!!」と叫んだ。一歩引こうとした拍子に包帯で固定された左足が椅子に引っかかり、倒れ込みそうになるのをステイルとアーサーが同時に支える。
「プライド様。こちらの騎士はプライド様同様、全員絶対安静の者達です。どうぞ、見舞いはまたの機会に……」
「そ、それではせめて他の軽度で負傷した騎士の方々にも挨拶を」
「それには及びません。怪我の治りの為には面会謝絶ぐらいで充分です」
プライド様に限っては。という言葉を飲み込み言い切るロデリックに、プライドは顔を真っ赤にしたまま頷いた。若干パニック気味の姉にステイルは苦笑しながら「行きましょうか」と声を掛けた。
「エリック副隊長! そして騎士の皆様!! どうぞお大事になさって下さい!」
ステイルとティアラに付き添われやや強制連行されながらプライドはアーサーや騎士達を引き連れ、各々のベッドの上にいる騎士達へ慌てて手を振った。
「……プライド様の、アレに関しても早々に自覚をして頂ければ良いのだが」
ハァ……とロデリックは長い溜息を再び吐いた。そのまま真っ赤になったエリックへ横になるようにと声を掛け、周囲の騎士達にも目を向ける。誰もがプライドの姿を一目見ようと無理に身体を起こし、中にはエリックの惨状に釣られるように顔を火照らす騎士達までいた。あのままプライドがエリックだけでなく他の騎士達一人ひとりに見舞いなどすれば、確実に応急や救護特化の七番隊は治りかけの傷を悪化させた騎士達全員の治療に再び取りかかり直さなければならなかっただろうと考える。絶対安静の騎士にとどめを刺すのが自国の第一王女など、笑い話にすらならない。
ロデリックの命令に、エリックはふらふらと再びベッドに倒れ込む。「プライド様の……お怪我……聞けなかった……」と無念そうに譫言を漏らした。手の甲を額に当てぐったりとすれば、すかさず近くにいた一番隊の騎士達が扇ぎ、濡らした布を手渡した。
~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~
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