一迅社アイリス編集部

一迅社アイリス編集部

一迅社文庫アイリス・アイリスNEOの最新情報&編集部近況…などをお知らせしたいな、
という編集部ブログ。

本日は、アイリスNEO 9月3日刊行の新刊特典情報をお届けしますキラキラ
↓↓↓

「君をひとり占めしたくなるんだ」
クールな氷帝と愛され悪役令嬢の溺愛ラブファンタジーラブラブ

『悪役令嬢のはずなのに、氷帝が怖いくらいに溺愛してくる』

山田 露子:作 あのね ノネ:絵
ジャンル:溺愛ラブファンタジー
四六判/定価:1430円 (税込)


★書き下ろしショートストーリーA★
下記のアニメイト店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、店舗リストをご確認下さい。

★書き下ろしショートストーリーB★
応援店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、応援店舗リストをご確認下さい。


ゲームに転生したと知らずに翻弄される悪役令嬢と冷徹公爵の偽装婚約ラブファンタジードキドキ
『悪役令嬢はシングルマザーになりました 双子を引き取りましたが公爵様からの溺愛は想定外です』

北里 のえ:作 双葉 はづき:絵
ジャンル:ラブファンタジー
四六判/定価:1430円 (税込)


★書き下ろしショートストーリーA★
下記のアニメイト店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、店舗リストをご確認下さい。

★書き下ろしショートストーリーB★
応援店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、応援店舗リストをご確認下さい。

★書き下ろしショートストーリーC★
下記の書泉&芳林堂書店店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、応援店舗リストをご確認下さい。

★書泉・芳林堂書店購入者有償特典 アクリルプレート★
下記の書泉&芳林堂書店店舗様で【有償特典付き】を購入すると、限定アクリルプレートがつきます。
※販売店舗は記事最下段、店舗リストをご確認下さい。


利害の一致から結婚したらハピエンが待っていたはてなマーク
訳あり宰相夫婦の契約からはじまる新婚ラブファンタジービックリマーク

『完全別居の契約婚ですが、氷の宰相様と愛するモフモフたちに囲まれてハピエンです!』

あゆみ ノワ:作 凪 かすみ:絵
ジャンル:ラブファンタジー
四六判/定価:1430円 (税込)


★書き下ろしショートストーリーA★
下記のアニメイト店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、店舗リストをご確認下さい。

★書き下ろしショートストーリーB★
応援店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、応援店舗リストをご確認下さい。

★書き下ろしショートストーリーC★
下記の書泉&芳林堂書店店舗様での購入者様に特典がつきます。
※配布店舗は記事最下段、応援店舗リストをご確認下さい。

★書泉・芳林堂書店購入者有償特典 アクリルコースター★
下記の書泉&芳林堂書店店舗様で【有償特典付き】を購入すると、限定アクリルコースターがつきます。
※販売店舗は記事最下段、店舗リストをご確認下さい。


配布店舗は、以下の通りになります。

★アニメイト購入者特典配布店舗★
【北海道・東北】
・アニメイト札幌
・アニメイトイオンモール旭川駅前
・アニメイトイオン釧路
・アニメイト八戸
・アニメイト青森
・アニメイト盛岡
・アニメイト仙台
【関東】
・アニメイト池袋本店
・アニメイト町田
・アニメイト吉祥寺パルコ
・アニメイト八王子
・アニメイト立川
・アニメイト渋谷
・アニメイト秋葉原
・アニメイト蒲田
・アニメイト新宿
・アニメイト横浜ビブレ
・アニメイト川崎
・アニメイト水戸
・アニメイトイオンモール土浦
・アニメイトイオンモール太田
・アニメイト大宮
・アニメイト南越谷
・アニメイト所沢
・アニメイト津田沼
・アニメイト千葉
・アニメイト柏
・アニメイト宇都宮
【中部】
・アニメイト新潟
・アニメイト長岡
・アニメイト福井
・アニメイト富山
・アニメイト金沢
・アニメイト名古屋
・アニメイト豊橋
・アニメイト豊田
・アニメイト静岡
・アニメイト浜松
・アニメイト沼津
・アニメイト四日市
・アニメイトイオンモール桑名
【関西】
・アニメイト京都
・アニメイトアバンティ京都
・アニメイト天王寺
・アニメイト京橋
・アニメイト大阪日本橋
・アニメイト梅田
・アニメイト三宮
・アニメイト姫路
・アニメイトイオン明石
・アニメイト和歌山
【中国・四国】
・アニメイトイオン米子
・アニメイトイオン松江
・アニメイト岡山
・アニメイト高松
・アニメイト高知
・アニメイト広島
【九州】
・アニメイト福岡パルコ
・アニメイトモラージュ佐賀
・アニメイト佐世保
・アニメイト熊本

・アニメイトオンライン


★応援店購入者特典配布店舗★
・文教堂書店 札幌大通駅店
・文教堂書店 函館昭和店
・文教堂書店 琴似駅前店
・文教堂書店 川口駅店
・文教堂書店 行徳店
・文教堂書店 赤羽店
・文教堂書店 青戸店
・文教堂書店 武蔵境駅前店
・文教堂書店 南大沢店
・文教堂書店 二子玉川店
・文教堂書店 溝ノ口本店
・文教堂書店 溝ノ口駅前店
・文教堂書店 住道店
・アニメガ×ソフマップ 神戸ハーバーランド店
・紀伊國屋書店 新宿本店
・有隣堂 横浜駅西口コミック王国
・MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店
・MARUZEN&ジュンク堂書店 新静岡店
・MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店
・ジュンク堂書店 旭川店
・ジュンク堂書店 秋田店
・ジュンク堂書店 盛岡店
・ジュンク堂書店 新潟店
・ジュンク堂書店 大宮高島屋店
・ジュンク堂書店 南船橋店
・ジュンク堂書店 藤沢店
・ジュンク堂書店 池袋本店
・ジュンク堂書店 大泉学園店
・ジュンク堂書店 吉祥寺店
・ジュンク堂書店 立川高島屋店
・ジュンク堂書店 名古屋栄店
・ジュンク堂書店 滋賀草津店
・ジュンク堂書店 大阪本店
・ジュンク堂書店 難波店
・ジュンク堂書店 近鉄あべのハルカス店
・ジュンク堂書店 上本町店
・ジュンク堂書店 天満橋店
・ジュンク堂書店 三宮店
・ジュンク堂書店 三宮駅前店
・ジュンク堂書店 西宮店
・ジュンク堂書店 明石店
・ジュンク堂書店 姫路店
・ジュンク堂書店 広島駅前店
・ジュンク堂書店 福岡店
・ジュンク堂書店 那覇店
・丸善 仙台アエル店
・丸善 桶川店
・丸善 津田沼店
・丸善 ラゾーナ川崎店
・丸善 丸の内本店
・丸善 お茶の水店
・丸善 多摩センター店
・丸善 岐阜店
・丸善 京都本店
・丸善 八尾アリオ店
・丸善 広島店
・丸善 博多店
・戸田書店 山形店
・戸田書店 三川店
・戸田書店 高崎店
・戸田書店 熊谷店
・戸田書店 長岡店
・星野書店 近鉄パッセ店
・喜久屋書店 漫画館阿倍野店
・セブンネットショッピング

【電子書店】
・コミックシーモア
・dブック
・ブックライブ
・ebookjapan
・Renta!
・honto
・BOOK☆WALKER
 ほか



★書泉・芳林堂書店購入者特典配布店舗★
・書泉ブックタワー
・書泉グランデ
・芳林堂書店 高田馬場店
・芳林堂書店 みずほ台店
・書泉オンラインショップ



★書泉・芳林堂書店購入者有償特典販売店舗★
・書泉ブックタワー
・書泉グランデ
・芳林堂書店高田馬場店
・書泉オンラインショップ



※特典は、なくなり次第終了となります。
※書籍搬入発売日は、地域や店舗様により前後する場合があります。編集部ではお答えできませんので、各店舗様にお問い合わせをお願いいたします。
※応援店舗特典につきましては、リスト外の店舗様でも購入者特典を配布いただいている場合がございます。
※特典配布方法の詳細は各店舗様にお問い合わせください!!
こんにちはー音譜

本日も9月3日発売のアイリスNEOの試し読みをお届けです爆  笑

試し読み第3弾は……
『悪役令嬢のはずなのに、氷帝が怖いくらいに溺愛してくる』

著:山田露子 絵:あのねノネ

★STORY★
他に愛する人がいると、パーティーで婚約破棄を告げられた侯爵令嬢ソフィア。でも最低な婚約者なんてどうでもいい。未来視ができる侍女のルースいわく、ソフィアは悪役令嬢で、破滅回避のためスパダリとやらを獲得しないといけないらしいのだ。ところが、そのまま婚約解消でよかったのに家同士の都合で結婚させられそうで!? そんな折、ひょんなことで出会った氷帝と名高い美貌の皇帝ノアに恋人のフリを頼まれ、なぜか甘く口説かれるように……!?
クールな氷帝と愛され悪役令嬢の溺愛ラブファンタジードキドキ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 飴色に輝くシャンデリアの下で、ご婦人方がひそやかに笑う。
 彼女たちは扇で口元を隠しながら、ツバメがさえずるようにお喋りを始めた。

「――美しく気高い氷帝はどんなご令嬢と結婚なさるのかしら?」
「皇帝陛下も二十一歳ですものね、そろそろご婚約されてもいい年齢だと思いますけれど」
「ですけど皆さん、あの『氷帝』よ? 真冬の湖のような氷の眼差しが、特別な誰かを見つめてとろけることがあるのかしら」
「美しい薔薇には棘がある……と言いますものね」
「あら、氷帝がひとりでいるのは、彼自身に問題があるとおっしゃりたいの? わたくしはね、麗しい彼に釣り合う女性がこの世に存在しない――それが一番の問題だと思っていますわ」
「確かにそうね」
「氷帝の隣に並ぶならば、この上なく美しいご令嬢でないと、わたくし納得できないわ」
「そして優雅で」
「陽気で、温かみがあるといい――だって千年とけぬと言われた氷をとかさなければならないもの」
「それから謎めいた存在であってほしい。『氷帝の隣に並ぶ、あの素敵なご令嬢はどなたなの?』とわたくしびっくりしたいわ」
「だけどそんなご令嬢がいらっしゃるかしら?」
「どこにもいない」
「では氷帝はずっと孤独なままね」

   * * *

 皇宮の正面玄関前に一台の馬車が停まった。
 今宵開かれるパーティーに参加するため、豪華絢爛な装いの貴族たちが、これまでに大勢この場所を通過している。
 馬車寄せに待機していた皇宮使用人は、慣れた様子で馬車に近寄った。踏み台を設置し、扉を外から開け、貴人が出て来るのを待つ。
 初めにドレスの裾と、華奢な靴の先端が視界に入った。
 まるで羽根が舞うような軽やかな動き。
 伏し目がちに控えていた皇宮使用人は驚きを覚えた。馬車から降りる際は段差があるし、たいていのケースでかなりモタつくものだが、この客人の動作は見事なまでに滑らかである。

「――ありがとう」

 こちらの介助に対して、気取らないお礼の言葉が返された。温かみのある綺麗な声だ。
 皇宮使用人がそっと顔を上げると、視線の先には――……馬車から颯爽と降り立つ、ひとりの令嬢の姿が。
 鮮烈で、清らかで、眩暈がするほどに美しいその女性は、楽しげに微笑みながらパーティー会場に向かって歩き始めた。

   * * *

 パーティーに参加する者は、ふたつのタイプに分けられる。
 それは『馴染める者』と『馴染めない者』――そのどちらかである。
 田舎者を自負するヘストン子爵夫人は明らかに後者だった。社交は貴族の義務だから出席しているものの、毎度毎度、こうして華やかな場所にやって来ることが苦痛で仕方ない。
 ヘストン子爵夫人は隣に立つ夫に話しかけた。

「これから地獄の数時間を我慢しないとね」

 気質の似ている夫も『やれやれ』という顔をしている。
 ふたりは会場に入る気になれずに、まだ廊下の端に佇んでいた。気持ちは暗く沈んだままだ。どうせ今日もいつもと同じことが繰り返されるのだろうから。
 ところがこの日は様子が違った。
 ――カツ、カツ、カツ、カツ、カツ、カツ――。
 背後から小気味良い足音が響いてくる。これを聞き、ヘストン子爵夫人のどんよりした顔が少しだけ変化した。
 ああ、なんて素敵な足音なのかしら……湧き上がって来たのは奇妙な感想。
 ただの足音なのに、軽やかで、生き生きとしていて、注意を引かれる。まるで上品で陽気なワルツを聴いているかのよう。
 不思議な高揚感を覚えて振り返ると、廊下を歩いて来るひとりの美しい令嬢が目に留まった。

「まぁ……」

 ヘストン子爵夫人は思わず感嘆の声を漏らしていた。
 こんなに綺麗で健康的な女性を初めて見たわ……。
 きらめくハニーブロンドの髪は癖がなくサラサラで、アイラインはアーモンド形で品が良く、どこか気を惹く色気と、あどけない清潔感が絶妙なバランスで交ざり合っている。ゴージャスで清楚でキュートで、いつまでも眺めていたくなるような素晴らしい容姿だ。
 そして圧巻のスタイル。
 腕やウエストはかなり華奢であるが、胸のあたりはボリュームがあり、メリハリがあってラインが美しい。
 その令嬢はあざやかな緑のドレスを身に纏っていた。
 なんて素敵なの……。
 うっとりと見惚れていると、視線を感じたのか、令嬢がこちらに顔を向けた。
 ヘストン子爵夫人は『相手は冷めた顔つきで、すぐに目を背けるに違いない』と考えていた。華やかなあの令嬢は、地味なオバサン貴族にジロジロ見られて内心不快に感じつつも、時間の無駄とばかりにスルーするだろう。そもそも上位者はこんなふうに廊下でぼうっと時間を潰したりはしないものだし、ヘストン子爵夫人が相手から侮られる要素はいくらでもある。
 けれどその予想は見事に裏切られた。
 その令嬢が物柔らかに瞳を細め、しっかりとヘストン子爵夫人と視線を合わせたのだ。
 そしてキュートなウインク――陽気でフレンドリーで、邪気の欠片もない仕草である。
 ごきげんよう、どうかあなたもパーティーを楽しんで――そんなふうに視線で語りかけられた気がした。
 ヘストン子爵夫人は動転し、頬を赤く染めた。
 すると令嬢がにこりと人懐こく微笑んでくれ、颯爽と目の前を通り過ぎて行く。
 彼女が堂々とした振る舞いで会場に入って行くのを見送ってから、ヘストン子爵夫人は呟きを漏らした。

「私、あんなに素敵なお嬢さんを見たのは、生まれて初めてよ」

 かたわらの夫も呆気に取られている。

「しかし……どこのどなただろう? あれだけ目立つ容姿なのに、今日初めて見るなんて」

 確かにそう……ふたりは狐につままれたように視線を交わした。

~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~
こんにちは!

本日も9月3日発売のアイリスNEOの試し読みをお届けします✧٩(^ω^*)و✧

試し読み第2弾は……
『完全別居の契約婚ですが、氷の宰相様と愛するモフモフたちに囲まれてハピエンです!』

著:あゆみノワ 絵:凪 かすみ

★STORY★
幼い頃の誘拐事件が原因で男性恐怖症になった令嬢ミュリル。家族の迷惑にならないよう、将来は愛する動物たちと自給自足をして生き抜く! そう決めていたのに、ある日ミュリルに氷の宰相との縁談が持ち込まれる。即答で断ったけれど、『結婚という既成事実』が必要な彼は魅力的な条件付きの契約婚を提案してきて――!? 女性恐怖症と男性恐怖症、利害の一致から結婚したらハピエンが待っていた? 
訳あり宰相夫婦の契約からはじまる新婚ラブファンタジー!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 王宮に着くなり謁見室へと案内された私たちは、緊張と不安に身を強張らせながら陛下と対しました。ごく内密な縁談だという話を裏づけるように、謁見室にはごく限られた人間以外は人払いをしてあるようです。首を深く垂れながら、その時を待ちました。

「そなたの娘も行く末を考える年頃だというのに、男性に容易に近づくこともままならぬとなればさぞ父として心痛だろう? 男性恐怖症とはなんとも難儀だな」

 それが陛下の第一声でした。その意味するところにお父様の喉がごきゅっ、と大きく鳴り、思いもしなかった言葉に私も見事に凍りつきました。

「あ……あの……なぜそれを……。娘の恐怖症のことを、なぜ陛下が……」

 発言の許可を得るのも忘れ、そう問いかけたお父様の声は震えていました。
 私が男性恐怖症であることは家族と我がタッカード家が昔からお世話になっている医師、忠実な屋敷の使用人たちといった深いつながりのあるごく一部の者しか知りえない秘密です。もし知れたら好奇の目にさらされるのは間違いないでしょうし、心ない噂を振りまく者もいますからずっと隠し通してきたのです。
 なのになぜそれを、陛下がご存じなのでしょう?
 いくら距離が離れているとはいえ、国王陛下だって男性に違いはありません。ゆえに逃げ出したい気持ちを必死に抑え込んでいた私でしたが、今は別の意味で足が震えていました。
 すると陛下はこちらをじっと見据え、続けたのです。

「ちょっと訳あって、そなたのことを調べさせてもらったのだ。……ミュリルといったな。そなたは子どもと老人、近しい家族以外の男性には一切そばにも寄れずまともに会話もできないと聞いたが、それに相違ないか? それゆえに結婚もあきらめている、というのは?」

 陛下の静かな、けれど為政者としての威厳ある視線に思わず息をのみました。
 どのような理由からかはわかりませんが、どうやらこちらの事情はすべてお見通しの様子。となれば、今さら嘘をついてごまかしても無駄でしょう。
 気が遠くなるのを感じながら、それでもぐっとお腹に力を入れなんとか平静を保ち口を開きます。

「……はい。おっしゃる通りでございます。ご覧の通りある程度の距離を保てばこのようにお話することもできますが、近い状態では逃げ出すか失神いたしますために、結婚など到底叶わぬ身でございます」

 覚悟を決めそう答えた私に、陛下は。

「ふむ。調べ通りだな。なるほど……」

 何やら口元にかすかな笑みを浮かべ小さくうなずくと、隣に座している王妃様に目配せしたのでした。

「まだ七歳の女の子をさらって傷つけようとするなんて、さぞ恐ろしかったでしょうね。恐怖症になるのも無理はないわ。そのために恋もできないなんて、こんなにかわいらしい方なのにあまりに不憫というものね……」
 王妃様のその言葉からしても、やはりすべてご存じのようです。
 王妃様はまだお若く、少女といってもいいかわいらしさと初々しさを漂わせていらっしゃる方です。が、そこはやはり国を統べる方の伴侶となられた方。居並ぶおふたりからは何ひとつ隠し立てしても無駄だ、という無言の圧力が漂っていました。

「そうはいっても、女性が結婚という後ろ盾なく生きていくのは難しい世の中だ。男性と一切関わらず暮らすには、少々無理があろう?」
「そうね。若い女性ひとりではあれやこれやと危険もあるし、不安よね。やはり守ってくださる方がそばにいた方が、安心して生きていけるというものだわ」

 何かを申し合わせるようにうなずき合う陛下と王妃様の姿に、私はお父様とちらと視線を合わせました。

「……そこでだな。そんなそなたにぴったりな縁談を勧めたいと思っているのだ。いや、ある意味仕事の斡旋と言ってもいい。ちょっとわけありのな」
「……仕事の、斡旋……??」

 陛下が口にした思いもよらない言葉に、思わず首を傾げます。
 縁談と仕事の因果関係もさっぱりわかりませんし、わけありという言葉の意味にも見当がつきません。困惑する私たちをよそに、陛下は扉付近に立っていた衛兵につと手を上げると。
 ギィィィィ……。
 扉が開き、その人が姿を現したのです。この国の若き宰相、ジルベルト・ヒューイッド様が――。

「はじめてお目にかかります。ジルベルト・ヒューイッドと申します。この度は私のためにかような話に巻き込んでしまい、誠に申し訳ありません。心より謝罪いたします」

 これが氷の宰相、ジルベルト様とのはじめての対面でした。
 そのお姿にはっと息をのみました。だってあんまりにも――。

「……は、はじめてお目にかかります。ミュリル・タッカードと申します。本日は宰相様にお会いでき、大変嬉しく存じます」

 なんとか型通りの挨拶を終えそっと視線を上げれば、ほんの一瞬ジルベルト様と視線がかち合いました。なぜかすぐに視線を逸らされてしまいましたが。
 視線が逸らされたのをいいことに、そっと目を上げそのお姿を観察します。
 ジルベルト様の第一印象はなんといっても美しい、その一言に尽きました。宰相としての能力のみならず、外見も非常に優れた方だとは聞いていました。けれどまさかこれほどまでとは。性別を超えたまるで絵画のような美しさに、つい男性への恐怖も忘れて目が吸い寄せられます。
 氷と表されるくらいですから、もっと冷徹な厳しい印象の方なのかと想像していたのです。けれど私の目には――。
 目元にさらりとかかった艶のある銀髪。その隙間からのぞく目は、この国では珍しい青緑色。その深みのある神秘的な色に、思わず目が吸い寄せられていました。巷では冬の冷たく冴えた湖のようだ、とも称されるその目は、私にはむしろ新緑が映り込んだ夜の穏やかな湖面のように感じられました。その青みを浴びた銀髪も、まるで冴え冴えと光る美しい月明かりを反射してきらめいているように見えて。
 けれど同時に、どこか人生に疲れたような何かをあきらめたようにも見える物憂げな空気がどうにも気にかかったのです。
 そのせいかジルベルト様から視線を外すことができずにいた私に、陛下は静かに告げたのです。

「私はな、そなたとこの宰相との縁談をぜひとも提案したいのだ。この男は宰相としてはこの上なく有能で切れ者だが、実はちょっと特殊な事情を抱えていてな。だがそなたと結婚することで、その苦労を分かち合い助け合うことができるのではないかと思っているのだ」と。

 その言葉に思わず首を傾げました。

「特殊な……事情?? 分かち合い……助け合う……??」

 特殊な事情とは一体どんなものでしょう? 私と分かち合うことができる事情とは?
 そもそも私は、男性と至近距離で向き合うことも会話することもできない身なのです。どんな事情があるにせよ、そんな私がお力になれるようなことがあるとは到底思えないのですが。
 表情を取りつくろうのも忘れ、怪訝な顔で陛下を見やれば。

「まぁ結論を出すのは詳しい事情を聞いてからでも遅くなかろう。……おい、ジルベルト。これはお前に降りかかった火の粉だ。あとは自分で話せ」

 そういってジルベルト様を見やったのでした。
 そのふたりのやりとりからは、どこか気安い空気感が漂っていました。きっと陛下はジルベルト様を心から信頼し、心を許しておいでなのでしょう。
 ジルベルト様はそれに困ったように嘆息すると、口を開きました。

「……わかりました。……ではお話しします」

 こうして、私と氷の宰相ジルベルト様の奇妙な縁談話は幕を開けたのでした。


「……えっ、女性恐怖症、ですか? 宰相様が?」

 ジルベルト様の口から語られたその特別な事情とやらは、まさかの内容でした。

「はい。私はあなたと同じく、異性――つまり女性に対しての恐怖症を抱えているのです。老人や子ども以外の女性と接触すれば、直ちに吐き気や発疹、最悪の場合はその場で失神します。幼少の頃に色々とありまして、それが原因で……」
「まぁ……!」

 思いもしなかったその告白に、驚きの声がもれました。

「で……でもお仕事はどうなさっているのですか……? お立場上、外交などで女性と対面することも多々おありでしょう。時には握手だって……!」

 ただの貴族の娘である私ですら、人並みの生活すら送れず大変な思いをしてきたのです。ちょっとした外出すらままならないというのに、国の要職についていらっしゃる宰相様ともなれば、お仕事上挨拶代わりの接触が必要になることもあるでしょう。まさか男性以外との対面を拒否するなんてことできっこありませんし。
 するとジルベルト様は小さく首を振ると。

「私は幸い、常識的な距離間でかつ手袋越しの瞬間的な握手などはなんとか耐えられるのです。ですからごく一般的な挨拶などは可能なのです。もちろん握手なども素手では無理ですし、ほんの短い時間に限られますが……」
「あぁ……。そうなのですね。とはいえ、それはさぞ大変な思いをなさってきたのでしょうね……。心よりお察しいたします」

 同じ恐怖症とはいえ、人により症状の現れ方はそれぞれです。確かにそれであれば周囲に恐怖症と悟られず、ただの女性嫌いだと思われるだけで済むかもしれません。どんな美しい女性にもなびかず冷たい態度を取るというあの噂は、きっとそうした不自然な態度からきているのでしょう。
 同じ苦しみを抱えた仲間同士の連帯感というのか、同情にも似た感情がわき上がるのを感じていました。もっとも私に何か力になれることがあるとは思えないことに、変わりはありませんけれど。
 心からの同情をそう口にすれば。

「いえ、あなたの幼少期の恐ろしい経験に比べればそう大したことでは……。とまぁそんな身ですので、私は生涯独り身を貫くつもりでいたのです。家督を継ぐものは他にもおりますし、仕事上も独身でも特に支障もありませんし。それにひとりの方がより仕事に打ち込めますから。……ですが」

 ジルベルト様の表情が、目に見えて暗く曇りました。

「……?」
「先日それを阻む、少々――いや、とある大問題が持ち上がりまして……。それを解決するために、なんとしても結婚という既成事実を作らねばならなくなったのです……!」
「結婚という……既成事実……?」

 その時、何やらジルベルト様の様子がおかしいのに気がつきました。

「……あの、宰相様? ジルベルト様……、どうかなさいましたか? なんだかお顔の色が……」


~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~