アイループ パソコン修理日記 -65ページ目

アイループ パソコン修理日記

大阪市阿倍野区のパソコンショップ「アイループ」における修理記録をつづります。

5月17日付の日記「ツインモニタの快適さを体験してみましょう」に、先ほど追記をしました。この件で触れた「間違った常識」「正確でない知識」について、良くあることをまとめてみようと思いました。


◆「容量」という言葉はあまりにも曖昧です

お客様がパソコンの性能についてご要望される際、しばしば「容量の大きいパソコンってどれですか?」というご質問をいただきます。お客様が使われる「容量」という言葉は非常に曖昧で、物理メモリの容量なのか、ハードディスクの容量なのか、それともCPUのクロック周波数の大きさを意味しているのか、それらによって説明が全く変わってきます。それらの違いまでご説明するとしたら、その場の簡単な説明だけで正しくお客様にご理解いただくことは不可能です…。


◆メモリが多ければ多いほどパソコンが速くなる?

正確には「メモリは足りなくなったときにパソコンが遅くなるのであって、足りている状態でさらに増設しても無意味」です。その人のパソコンの使用目的によって必要とされるメモリ量が変わりますので、必要とされるメモリ量+αくらい搭載しているのがベストです。「メモリ容量が多ければパソコンの動きが速くなる」という考え方は間違いです。


◆ハードディスクの空き容量が多ければ多いほどパソコンの動きが速くなる?

正確には「ハードディスクの空き容量が500MBを下回った頃にパソコンの動きが遅くなる」です。最近まで店長のパソコンのハードディスクは、容量300GB中297GBを使用していて、空き容量はわずか3GBでした。しかし、パソコンの動きは非常に快適だったのです。実際にパソコンがどのようにしてハードディスク上のデータを管理しているか、それを知ることで納得がいくはずです。上で書いた500MBの例外を除けば、ハードディスクの空き容量とパソコンの動作速度はほぼ無関係です。


◆動きの遅いパソコンはデフラグとクリーンアップで速くなる?

正確な言い替えが難しいですが、「データの断片化が非常に激しい場合はデフラグによるパソコン動作速度の改善が期待できるが、クリーンアップとパソコンの動作速度は無関係」です。例えば3~5年ほどデフラグをしないで使用したパソコンをデフラグしてあげると、一般的に5~10%(極わずかです)の速度向上が見込めます。また、ハードディスクの寿命に関しては、デフラグを定期的に実行することで、寿命が多少伸びることが期待できます。ただし、ハードディスクの代わりにSSDを搭載しているパソコンの場合は、デフラグによる動作速度改善は皆無であるばかりか、SSDの寿命を確実に縮めてしまいます。クリーンアップについてですが、クリーンアップの目的はあくまでも「ハードディスクの空き容量を増やす」ことであり、「パソコンの動作速度を改善する」という目的は全くありません。そればかりか、「内容を圧縮してディスク領域を節約する」にチェックを入れてクリーンアップを実行すると、パソコンの動作速度は確実に遅くなります。やり方を間違えると逆効果、ということです。


◆CPUのギガ数(クロック周波数)が高いほどパソコンの動きが速い?

あながち間違いとは言えませんが、正確ではありません。CPUの名称には、例えば「Pentium4_2.4GHz」のように、[シリーズ名+ギガ数]で表示されることが一般的です(一般的でした)。これらは同じPentium4で比較すると、1.8GHzより2.4GHzのほうが速度は速いです。しかしシリーズ名が違うと、周波数だけでは簡単に比較できなくなってしまいます。例えばPentium4_2.4GHzのCPUより、Core2 Duo_1.6GHzのCPUのほうが、体感速度ははるかに速いです。さらに難しいことに、一般的に知られている「Celeron」シリーズは世代というものが多岐に渡り存在します。Pentium4世代のCeleron_1.8GHzよりも、その後のPentiumM世代のCeleronM_1.8GHzのほうが約2倍弱の処理性能があり、これは言い換えるとPentium4_3.0GHzに迫る性能なのです。


アイループ パソコン修理日記-CPU性能比較表

【DOWNLOAD】CPUの種類と動作周波数からその処理速度を一覧できる表(PDF形式)

↑のリンクをクリックすると、表をPDF形式でダウンロードできるようになっています。おそらくパソコンにある程度詳しい人でも、CPUの性能比較が正確にできる人は少ないのではないでしょうか。


蛇足:

この日記はなるだけ内容がわかりやすいように、細かい説明や例外を省いている点があります。その上で、この日記の記載内容について間違いなどがありましたらコメントしていただいてOKです。その際はできるだけ、「間違いだと指摘するに至った背景にある、具体的な実験・研究の結果」についてお教えください。

◆【お客様の質問内容】
世間ではインフルエンザウイルスが話題になってますが、コンピュータのウイルスとの違いって何でしょうか。そもそも、コンピュータウイルスとは何ですか


◆【簡単な解説】

生物に感染するウイルスと、コンピュータに感染するウイルスの違いは簡単に申し上げると以下の通りです。


 ■生物に感染するウイルス

  ・生物である...

  ・生物の体に例外的な被害を及ぼす


 ■コンピュータに感染するウイルス

  ・生物ではなくプログラムである

  ・コンピュータのプログラムに例外的な操作をして正常動作を妨げる


 生物に感染するウイルスは生物か、については定義により考え方が異なる→参考


コンピュータに感染するウイルスは、生物ではなくプログラムだ、ということを覚えておいてください


コンピュータウイルスが実際にどういう被害を及ぼすかについて説明します。コンピュータはプログラムで動作しています。例えばコンピュータがユーザーに以下のような質問をするプログラムを考えます。


【問】今日の昼ごはんはどれを購入しますか?

1. うどん (\400)

2. ラーメン (\550)

3. カレーライス (\500)


【回答】→「____」


あなたは例えば[1]とか[2]といった数字を入力をするかもしれません。[1]と入力すると「お代金は\400です」とか、[2]を入力すると「お代金は\550です」とメッセージが表示されそうですね?このプログラムを作った人は、どう入力されると、どうメッセージを返すか、それもプログラミングしています。


さて、ここでもし[4]と入力したらどうなるでしょうか?プログラマーの人はこのような例外が入力された場合でも「値が正しくありません」とか「1~3のどれかを選択してください」というエラーメッセージを返すようにプログラムしなければいけません。具体的には「0以下または4以上が入力された場合、エラーメッセージを返す」とプログラミングします。


しかし、中にはあまのじゃくなユーザーもいて、[0.1]とか[a]という例外を入力したりしますね?[0.1]は1~3の範囲にもなく、また0以下でもなければ4以上でもありません。このような例外をきちんと処理できるようにプログラミングされていなければ、この「昼ごはんプログラム」はバグってしまいます。


このような例外的な値をユーザーの意図に反して入力するようなものをコンピュータウイルスと考えてください。


Windowsには「自動更新(WindowsUpdate)」という機能があり、例えば上のようなプログラマーのミスを修正できたりします。具体的には「数字の[1]、数字の[2]、数字の[3]以外の値が入力された場合、エラーメッセージを返す」といった具合に修正します。そうすれば[0.1]や[a]が入力された場合でもきちんとエラーメッセージを返せるようになります。


もしお使いのパソコンの画面に「更新の準備ができました」と表示されているなら、それはWindowsUpdateを利用できるということですので、なるだけクリックして更新を完了してあげてください。


◆【その他】
実作業時間...5分間、料金...\0。通りがかりのお客様のご質問に対して回答しました。

皆さんは「ツインモニタ環境」を体験したことがありますか?

ツインモニタの快適さは「使ってみないとわからない系」のものなのですが、今回はツインモニタでどんな環境ができあがるかのイメージビデオを撮影してみました。例えばビデオの途中で出てくるExcelの画面で、最大[AQ列]x[58行]で表示されています。ちなみに15型液晶のシングルモニタでは、同じ条件で[M列]x[32行]でした。また、いくつものウィンドウをあちこちに散りばめることができます。ツインモニタを含む、マルチモニタ環境を一度体験してしまったら、もはや狭いシングルモニタの環境には戻れなくなると言っても過言ではありません。



◆パソコン環境の情報
HP製デスクトップ - dx5150 MT
OS:Windows XP Professional (SP3)
CPU:Athlon64 x2 4200+ (2.2GHz)
MEM:1GB (PC3200, 512x2枚)
Video:NVIDIA QuadroFX 3400 (256MB)
液晶:DELL製 2001 FP (20型_UXGA) x2台

◆2009.05.20 - 追記
もともとお客様のご注文に対して構成したツインモニタ環境でした。Athlon64 X2 4200+というと、Core2 Duo E6300(1.866GHz)と同等クラスの高性能デュアルコアCPUです。また、NVIDIAのQuadroFXというと、わかる人にはわかる系の高性能ビデオカードです。Athlon系のCPU搭載機は一般認知度が低く、アイループの卸元の業者さんでさえその価値がわからないということで、実は非常に安く入手できました。QuadroFXについては業務用CADで使用されていたHP製のサーバーマシン(xw8200)から抜いたもので、OpenGL(3Dグラフィックスなど)の性能は、店長愛用のビデオカード(RADEON X1600)よりもはるかに優れています(きちんと実験データを取っています)。

このように、実はかなりこだわって構成したパソコンなのですが…残念ながら「HPやDELLはパソコンメーカーとして信用できない」というご意見をいただき、売約がキャンセルとなりました。

パソコン屋をやっていると、(一部例外はありますが)メーカーによる品質の違いがあまり大差無いことに気付きます。店長のパソコンも自作系で、メーカーブランドについては一切気にしていません。この感覚で高性能なパソコンを作っても、JAPANメーカーブランド(NEC,富士通,SONY等)を重要視されるお客様にとっては"NG"となることもあります。HP(ヒューレット・パッカード)は、ここ3年ほどパソコン販売台数世界第一位をキープしている信頼性の高いメーカーですが、ご存じ無い方にとっては「信用できない無名メーカー」と同じ扱いを受けてしまいます。実際にアイループの商品は、メーカーブランドによる値段差を考慮していません(PanasonicのLet'snoteのみ例外)。

メーカー名を大切にするお客様に対しても、これまで「メーカーによる品質の差はほとんどありません」と断言してきました。店長の悪いクセです。この考え方は今でも変わっていませんが、メーカー名を重視するお客様に対して期待を裏切ることがあってはならないと、今回つくづく感じました。

同じような例で、「CPUは2ギガ以上でお願いします」といったご注文もあります。これに対して「CPUの性能はギガの大きさだけでは決まりません」と回答しても、そういった難しい話を判別できるお客様はあまり多くありません。Pentium4_2.4GHzのCPUよりもCore2 Duo_1.6GHzのCPUのほうが、体感速度ははるかに速いのです。また「メモリは4GBにしてください」と言われても、「このパソコンでは3GB程度しか認識できませんし、お客様の用途では1GB程度で充分、それ以上搭載しても全く意味がありません」と回答しますが、やはりご理解いただけません。「メモリは多ければ多いほどパソコンが速くなる」という間違った常識を信じている方は、私の説明を聞いて「はぁ?」という感想を持たれてしまいます。ヘタに正確な知識があると、逆にお客様への説明が難しくなってしまいます。