5月17日付の日記「ツインモニタの快適さを体験してみましょう」に、先ほど追記をしました。この件で触れた「間違った常識」や「正確でない知識」について、良くあることをまとめてみようと思いました。
◆「容量」という言葉はあまりにも曖昧です
お客様がパソコンの性能についてご要望される際、しばしば「容量の大きいパソコンってどれですか?」というご質問をいただきます。お客様が使われる「容量」という言葉は非常に曖昧で、物理メモリの容量なのか、ハードディスクの容量なのか、それともCPUのクロック周波数の大きさを意味しているのか、それらによって説明が全く変わってきます。それらの違いまでご説明するとしたら、その場の簡単な説明だけで正しくお客様にご理解いただくことは不可能です…。
◆メモリが多ければ多いほどパソコンが速くなる?
正確には「メモリは足りなくなったときにパソコンが遅くなるのであって、足りている状態でさらに増設しても無意味」です。その人のパソコンの使用目的によって必要とされるメモリ量が変わりますので、必要とされるメモリ量+αくらい搭載しているのがベストです。「メモリ容量が多ければパソコンの動きが速くなる」という考え方は間違いです。
◆ハードディスクの空き容量が多ければ多いほどパソコンの動きが速くなる?
正確には「ハードディスクの空き容量が500MBを下回った頃にパソコンの動きが遅くなる」です。最近まで店長のパソコンのハードディスクは、容量300GB中297GBを使用していて、空き容量はわずか3GBでした。しかし、パソコンの動きは非常に快適だったのです。実際にパソコンがどのようにしてハードディスク上のデータを管理しているか、それを知ることで納得がいくはずです。上で書いた500MBの例外を除けば、ハードディスクの空き容量とパソコンの動作速度はほぼ無関係です。
◆動きの遅いパソコンはデフラグとクリーンアップで速くなる?
正確な言い替えが難しいですが、「データの断片化が非常に激しい場合はデフラグによるパソコン動作速度の改善が期待できるが、クリーンアップとパソコンの動作速度は無関係」です。例えば3~5年ほどデフラグをしないで使用したパソコンをデフラグしてあげると、一般的に5~10%(極わずかです)の速度向上が見込めます。また、ハードディスクの寿命に関しては、デフラグを定期的に実行することで、寿命が多少伸びることが期待できます。ただし、ハードディスクの代わりにSSDを搭載しているパソコンの場合は、デフラグによる動作速度改善は皆無であるばかりか、SSDの寿命を確実に縮めてしまいます。クリーンアップについてですが、クリーンアップの目的はあくまでも「ハードディスクの空き容量を増やす」ことであり、「パソコンの動作速度を改善する」という目的は全くありません。そればかりか、「内容を圧縮してディスク領域を節約する」にチェックを入れてクリーンアップを実行すると、パソコンの動作速度は確実に遅くなります。やり方を間違えると逆効果、ということです。
◆CPUのギガ数(クロック周波数)が高いほどパソコンの動きが速い?
あながち間違いとは言えませんが、正確ではありません。CPUの名称には、例えば「Pentium4_2.4GHz」のように、[シリーズ名+ギガ数]で表示されることが一般的です(一般的でした)。これらは同じPentium4で比較すると、1.8GHzより2.4GHzのほうが速度は速いです。しかしシリーズ名が違うと、周波数だけでは簡単に比較できなくなってしまいます。例えばPentium4_2.4GHzのCPUより、Core2 Duo_1.6GHzのCPUのほうが、体感速度ははるかに速いです。さらに難しいことに、一般的に知られている「Celeron」シリーズは世代というものが多岐に渡り存在します。Pentium4世代のCeleron_1.8GHzよりも、その後のPentiumM世代のCeleronM_1.8GHzのほうが約2倍弱の処理性能があり、これは言い換えるとPentium4_3.0GHzに迫る性能なのです。

【DOWNLOAD】CPUの種類と動作周波数からその処理速度を一覧できる表(PDF形式)
↑のリンクをクリックすると、表をPDF形式でダウンロードできるようになっています。おそらくパソコンにある程度詳しい人でも、CPUの性能比較が正確にできる人は少ないのではないでしょうか。
蛇足:
この日記はなるだけ内容がわかりやすいように、細かい説明や例外を省いている点があります。その上で、この日記の記載内容について間違いなどがありましたらコメントしていただいてOKです。その際はできるだけ、「間違いだと指摘するに至った背景にある、具体的な実験・研究の結果」についてお教えください。