Aさんは、このままだと、本当に安江さんの言葉通りになる
と心配になりました。
そこで、夕飯の支度をして、様子を見ることにしました。
「お母さん、地域の人と一緒に、活動するものってないの?」
「さあねー」
「とにかく、なにかして、元気でいてくれなきゃ」
「あなた達に教育受けさせて、仕事もしてきたのよ、
もう、十分でしょ」
「何言ってるの、だからこれからは、好きなことして」
「はいはい、それも十分楽しんだの。だからもういいでしょ」
ほんの少し食べただけで、スガさんが箸をおきました。
「お母さん、それだけしか食べないの?」
「なんだかこの頃は、食べるとおなかが苦しいの」
Aさんは心配になって、スガさんの顔色をみました。
心なしか、青いように、元気がなさそうにみえます。
「もしかしたら、どっか悪いんじゃない?
病院に行った方がいいわよ。明日行ってよ」
「年とると、そんなに多く食べれなくなるものなの」
「でも、おなか痛いんでしょ」
「痛いなんて言ってない、すぐいっぱいになるだけよ」
「もー、そんなことばっかり 」
Aさんの顔は、眉間に皺をよせて、厳しい表情です。
「病院に行きたくないなんて ガンだったらどーすんの。
悪くする前に診てもらわないと、ね、」
スガさんは、大きくため息をついて、食卓を離れます。
子供達も食べ終わり、Aさんが、片付け始めると、
「そんなことは私がやるから、もう帰んなさい」
スガさんは、あきらかに、Aさんをけむたがっています。
仕方なく、Aさんは、子供たちの手を引いて帰ることにしました。
家に帰って暫くすると、スガさんに電話しますが、
電話は留守電になってしまいます。
勧誘の電話が多いから、留守録も受付けないようになっています。
翌日、Aさんは子供達を送り出したあと、再び電話してみました。
しかし、スガさんは電話に出ません。
「もー、何してんのかしら?」
お昼頃に電話しても、やはりでません。
「どっか出かけちゃったんだわ、きっと」
夕方電話しても、つながりません。
「やだ、お母さん、大丈夫かしら?」
「そ-だ、安江さんに様子を見に行ってもらおう」
Aさんは、安江さんの電話番号をプッシュし始めます。
すぐにAさんは、「アッ!」と叫んで口に手をやりました。
「私も黒マント着てる、後ろに仮面がある!」
つづく