深夜の色彩 | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

ロビン・ウィリアムズさんが亡くなったというニュースは大変衝撃的でした。
なにがあったのか、どうしてそんなことになったのか、私にはわかりません。
ただただ、素晴らしい俳優を失ったことを残念に思います。

訃報を聞いたとき思い出したのは、かつて深夜のテレビで偶然見た映画。
どうしてその映画が放送されていたのか全然わからないまま、内容に惹かれて見入ったことを思い出しました。

それは、息子を出産したときのこと。

前回(といっても15年前)の出産はいろいろ後悔の残るものでしたので、息子を生むときはずいぶんがんばりました。無理やりにでも前向きな気持ちを持ち続け、笑顔で乗り切ろうと思っていたのです。
その甲斐あってか、出産は無事に終わりました。
母子同室の病院でしたので、生まれたばかりの息子は同じ部屋のベビーベッドでぐっすり眠っていました。
私は出産後の興奮がさめず、なおかつ、息子のことが気になってしまって、なかなか眠れませんでした。
赤ん坊はねえ。生まれてしまったらもう一瞬たりとも注意を払わずにはいられない存在なんですよ。ほんとに、一瞬たりとも気が抜けなくなります。だから眠れない。
寝ないと体力が持たないのはわかっていますが、とにかく気が立ってしまって眠れないのです。

そこで私はテレビをつけました。
テレビ付きの個室(その病院は全室そういう仕様)だったんですよ。
そしたら、たまたま映ったのがその映画でした。

タイトルも内容もわからないまま、なんとなく見ていたんですが、次第に引きこまれていきました。
なにより、色彩が美しかったんですよね。
夢のような極彩色で、疲れきった心にじんわり染みこんできました。

その映画の主人公を演じていたのがロビン・ウィリアムズさんでした。
「グッドモーニング・ベトナム」では、とても鮮烈な印象を受けましたし、そのほかの役でも、あたたかみのある微笑みや、ユーモアの漂う存在感など、とても心に残る俳優さんで、けっこう好きだったんですよね。

息子を産んだばかりで見た映画の内容が、息子を亡くす人の話で、天国だの地獄だのが出てるくる話だったので、とても強い印象が残ったんですね。

夜中の病室で見た不思議な映画。
もしかしたら夢だったのかもしれないと思ったこともありました。
でも、夢じゃなかったんですね。
その映画のタイトルは「奇跡の輝き」

退院後しばらくして、レンタルビデオ店で見つけて、もう一度見てみました。
おかしなもので、内容はうっすら覚えていたものの、印象がまるっきり違っていました。

というか、やっぱり最初に見た時の精神状態が普通じゃなかったんでしょうね。
異常な状態の時にみたので、印象の残り方がおかしくなってたみたいです。

でもそれ以後、ロビン・ウィリアムズといえばまず最初にこの「奇跡の輝き」が浮かぶようになりました。
映画としては、もっと他の映画の方が好きだしいいと思うんですけどね。
なにしろ特殊な状況で刷り込まれた印象ですので、いかんともしがたいものがあります。