羅針盤 | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

海が荒れているような気がする。

いや、荒れていないのか?

私がそう思っているだけなのか?


水面が、空が、

真っ黒の不安で塗りつぶされているような気がしてならない。


私はどこへ向かっているのか?

この道は正しいのか?

舵はどちらへきればいいのだ?


羅針盤がない。

私の船にははじめから羅針盤がない。

その時々の思いつきで

船の舳先を向けてきただけなのだ。


私が決断しなければならないのに

私が判断を下さなければならないのに


何を頼りに

何を信じて

船を進めていけばいいのか

皆目見当もつかない。


いっそ

荒波にまかせて

なるようになってしまえばいいのか。


そうしてしまえ

と、そそのかす声と、

それではいけない

と、たしなめる声が、

交互に降ってくる。


羅針盤がほしい。