ドラマ「南城宴」 第2集 前編 | 江湖笑 II

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中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
更新予定は
月曜~木曜:ドラマ「南城宴」(前後編)(9/12にて大結局)
土曜:短劇「玉奴嬌」(各1集)

ドラマ「南城宴」

 

第2集 前編

 

 

 

 

 

 

 

<2集 前編>

 

 

 小強子は劉一刀にだけ太監検査の経緯を語った。

 晏長昀を騙し、皇帝の信任を得て御付きの太監となった彼女を、劉一刀は”強哥”と呼ぶ。のちのち取り立ててもらおうとする彼の打算が見え見えだ。

 ところで、どうやって検査を誤魔化せたのか。実のところ、小強子にも理由が分からなかった。別室へ移った太医はジロジロと彼女を眺めただけだったのだ。

 

 

 小強子の一件が決着して御泉殿を出た太医は、ある人物と密かに会った。

 頭の先から足の先まで黒い装束に身を包んだ女性に銀錠を渡される。太医はホクホク顔で帰って行った。

 

 

 翌朝の朝議は紛糾した。暗殺された郭振に替わる人材の選出において、蕭万礼側と魏国公側とで意見が分かれる。そこで趙沅は、それまで黙って立っていた蕭権に意見を求めた。すると蕭権は千羽衛統領の晏長昀が適任だと言う。

 晏長昀にこれ以上の軍権を与えてよいものだろうか。蕭権以外の重臣はことごとく彼の意見に反対した。

 なぜ蕭権は晏長昀の名を挙げたのだろうか。蕭権は忠義に溢れる良臣で知られているが、晏長昀はそんな噂を信じていない。人心難測、世事難料、人が腹の中で何を考えているかなど測れないのだ。

 晏長昀は少年の頃にそれを実体験している。

 彼がまだ秦琰の名だった時だ。忠臣だった父、定国公府の秦文忠は、職権乱用と軍の麻薬汚染に関わったとして皇帝から秦家一族全員の処刑を言い渡された。その宣旨を伝える太監の背後で笑っていたのが郭振だった。

 

 

 小強子からしたら皇帝の食卓は豪勢極まりない。宴でもないのに幾皿も料理が並んでいる。

 しかし食事する側の趙沅は違った。毎回同じような料理ばかり並び、しかもたったひとりで食事するので味気ない。空腹だが食べる気がしなかった。

 趙沅は手つかずの料理を食い入るように見つめる小強子に気が付いた。慣例を破ってそばに座らせる。おいしそうに頬張る姿を見た彼は食欲が湧いてきた。

「きみと食べると美味しく感じるよ。これからも一緒に食べてくれ」

「毎日、ですか…」

 小強子の表情が曇る。どうしたのかと訊かれた小強子は、小さな声で宮中を出たいと話した。遊びに行きたいのではなく、太監を辞めたいのだ。

「ここでは衣食住が保証されています。でも私の居場所じゃない気がするんです」

 皇帝なのにこれまで頼み事をされたことのない趙沅は、考えておくと笑顔を向けた。

 

 

 雷豹は晏長昀の父である秦文忠の副将だった。秦家一族が処刑されて以来、雷豹は身分を偽り、落ちのびた晏長昀に仕えている。

 その雷豹が逃亡中の和三元を捕えた。統領府の地下牢へ連行し、拷問にかける。しかし暗殺者について詰問された和三元は知らぬ存ぜぬを貫いた。

 知らせを聞いて晏長昀がやってくる。雷豹が晏長昀に少主と声を掛けたため、和三元は彼が秦琰だったと気付いた。

「和三元、人体には何本の肋骨があるか知っているか?

 強情な和三元の脇腹に手を入れ、晏長昀はものすごい力で肋骨を折った。たまらず和三元は悲鳴を上げる。

 それを二回繰り返す。さすがの和三元も観念した。彼は、白い衣服に黒い面紗をつけた刺客が郭振を暗殺し、右の親指に嵌めていた白い玉扳指を奪って行ったと明かした。

 郭振の玉扳指にどんな秘密が隠されていたのか。和三元もよく知らないが、生前郭振が自慢する場面を見たことがあった。この白い玉扳指さえあれば南国でやりたい放題できると郭振は言っていた。

 白い衣服に黒い面紗と聞いて、晏長昀は定国公府で剣を交えた刺客を思い出した。暗殺の一報で林に駆け付けた時、郭振の指に扳指は無かったので、あの刺客が奪ったに違いない。

 小強子だ!

 

 

 小強子を千羽衛へ連行し、晏長昀は剣を突きつけた。

「玉扳指をどこに隠した! 誰の命令で私と郭振を狙った!?

 記憶を失っている小強子は答えようがない。

 そこで晏長昀は曲太医を呼んだ。曲太医は小強子の後頭部のたんこぶを指し、これが原因で記憶喪失に陥ったと説明する。

「いつ治る?

「失魂症は記憶を失うだけてなく、性格まで変わってしまうことがあります。投薬は難しく、運が良ければ三四日で思い出しますが、悪ければ三四十年は無理でしょう…」

 そんなに待っていられない。小強子も記憶の回復を願ったので、曲太医は千羽衛の手を借りて知り得る限りの方法を試してみた。

 まずは大きな丸い板に小強子を磔にしてゆっくり回す。刺激と血の巡りが良くなることで回復するはずだ。

 次は鍼灸治療。頭部の穴道に鍼を刺していく。最後に曲太医はとんでもない長さの鍼を出した。

 思わず、思い出したと小強子が叫んだ。逃れるための方便だ。あんなに長い鍼を刺されてはたまらない。

 

 

 小強子の供述に違和感はなかった。たぶん、本当に記憶を喪失しているのだろう。

 そう感じた晏長昀は、小強子をそばで泳がせておくことにした。瞬時に小強子の来歴をでっち上げる。

「さすがは私の部下だ。記憶を失っても機密を守るとは」

 小強子は晏長昀の育てた暗衛で、身分を隠して任務に当たっていたと話した。

「郭振将軍の玉扳指には謀反の証拠が隠されている。それを手に入れるのがおまえの任務だったのだ。図らずも記憶喪失となり、それでも宮中へ戻って来るとはなんと忠誠心の強いことだ」

 晏長昀は情感たっぷりにわざとらしく小強子を称賛する。小強子も彼に話を合わせた。

「大丈夫、治るまで私が面倒を見よう」

「ありがとうございます、晏統領!

 感謝して見せたが、腹の中ではこの嘘つきがと悪態をついていた。

 晏長昀は千羽衛に戻って来いと説得する。彼が小強子を疑っているのは明白だ。

 小強子は皇帝にお伺いを立ててくると言って、体よく千羽衛を離れた。

 

 

 

 

 

 

<2集後編に続く>