江湖笑 II

江湖笑 II

中国語ドラマ・小説の各話あらすじです。
完全ネタバレしております。

月曜日・水曜日は「招揺」、土曜日は「還珠格格II」の各話あらすじを更新中!!

「総裁在上我在下」は不定期で更新です!!

やっぱり、だんだん長文化してしまう…汗

ドラマ「招揺」

 

第40集

 

 

 

 

 

 

<40>

 

 

 千塵閣の学び舎で、琴千弦と姜武は対峙していた。足元には姜武にくびり殺された弟子が倒れている。怖さのあまり動けなくなっている年少弟子の溯梵に、琴千弦は目を閉じて祈っていなさいと指示する。

 学び舎の外には、姜武の魔気に苦しめられている宗門門徒や千塵閣の弟子の姿が見える。姜武は錦繍と密約を交わしているのに、容赦が無かった。

 姜武は、強引に琴千弦の空間に引きずり込まれた。

「弟子たちの命はおれが握ってるぞ!

 劣勢の姜武は、そう言って琴千弦を脅す。

 

 

 姜武の魔気に抗うために、錦繍は立場をひるがえした。千塵閣をまとめている溯言に被害を出すつもりは無かったと言い訳し、ともに姜武の魔気と戦おうではないかと誘う。錦繍は宗門門徒に武器の放棄を命じた。錦繍の狡猾さは知っているものの、このままでは魔気に圧倒されてしまうと感じた溯言は、攻撃の目標を姜武へと変えた。姜武に向かって陣を築きなおす。宗門門徒たちが追随した。しかし、それでも門徒たちが倒されていく。

 もとの空間に戻ってきた琴千弦はその様子を見て、放っていた法力を止める。姜武が琴千弦の法力を吸い取りはじめた。吸収し終わり、琴千弦の体を弟子たちに投げつける。

「宗師の力はもらった!

「姜武、言っておくが、もう二度とおまえに殺戮はできない」

 姜武が黒い煙となって消えた。

 琴千弦は体を支える溯言に法器の心蓮を託し、必ず万戮門へ届けよと命じて昏倒した。

「千塵閣は金輪際、宗門とたもとを分かつ!

 溯言は錦繍たちにそう宣言した。

 

 

 琴千弦が昏睡状態に陥ったことは、司馬容の密偵を通して万戮門に報告された。姜武がすでに千塵閣を去っていることを確認した招揺は、十七を連れて見舞ってこいと芷嫣に言う。

 千塵閣に着いた芷嫣と十七は、琴千弦のために祈る弟子たちの傍らを抜け、部屋に入った。意識のない琴千弦に駆け寄り、十七は起こそうとして体を揺さぶる。

 琴千弦の世話をしていた溯言は心蓮を取り出し、芷嫣に手渡した。琴千弦の宗師の力は失われたが、この心蓮が招揺の命を救う助けになるかもしれない。とにかく一刻も早く万戮門へ持って帰らねばならない。駄々をこねる十七を説き伏せ、芷嫣は万戮門へ帰った。

 

 

 虚宗門でひそかに静養する洛明軒は、門派の秘密に近づきつつあった。

 虚宗門には代々伝わる秘籍があり、書かれている内容を修練することでとてつもない力を得ることができると言われている。その秘籍について江河に訊ねると、邪道の域に入る術なので、だれにも見せられないと返ってきた。お互い、腹の探り合いのような言葉を交わす。

 だがこの会話で秘籍が確かに存在すると知った洛明軒は、その力をどうやって得たものかと考えをめぐらせる。

 

 

 新山門の牢で恐怖と闘争心を吸収しようとした姜武は、体が受け付けないことに気づいた。殺戮はもうできないと言っていた琴千弦の言葉の真意は、これだったのだ。姜武の吸収した琴千弦の宗氏の力は、心魔の力と根本的に異なるものだった。

 新山門に遅天明、雄天、唐韵、そして錦繍の四人が来た。これより前に姜武と錦繍は話をしていて、宗門は錦繍が、天下は姜武が取ると密約している。

 宗門にとって、万戮門は目障りな存在である。姜武は厲塵瀾を殺したい。共通の敵を持つ敵は、味方である。姜武は四人の意向を聞かず、同盟が成ったと言って杯をあける。最初に錦繍が、そして遅天明と雄天が杯を干す。しかし唐韵だけ拒否した。姜武に殺される、とっさにそう感じた錦繍は唐韵を気絶させ、天璇門に連れ帰り、監禁した。

 

 

 錦繍の言動に不信感を抱いた遅天明と雄天が、天璇門を訪れた。錦繍はふたりに万戮門の脅威を説き、姜武ひとりに討伐させればいいと話す。宗門としては座して待てばいいのだ。遅天明と雄天は完全に錦繍の話術に惑わされていた。

 

 

 林子豫の情報源は、万戮門にとどまっている小であった。ところが小と落ち合っているところを、尾行してきた暗羅衛に目撃される。やむなく小の手を借りて始末をつけた。

 宿に帰ってきた林子豫を待っていたのは遅天明である。地図の催促だ。遅天明は姜武と万戮門が傷つけ合い、弱体化するのを静かに待っていろと命じる。

「万戮門を下すのはいいが、路招揺の命は私のものだから、忘れるな!

 

 

 心蓮は芷嫣が万戮門に持ち帰ったが、肝心の宗師の力を姜武に奪われてしまった。六道金剛陣のことをよく知る琴千弦は姜武との戦いで意識不明に陥り、もしかすると目覚めないかもしれない。それを司馬容から聞いた厲塵瀾は、思わず怒りを机の上に広げていた竹簡にぶつけた。

「招揺の命がかかっているんだぞ!

 外にまで聞こえるほどの怒号を発してしまい、我に返る。厲塵瀾は司馬容に謝った。司馬容に怒鳴っても、何の解決にもならない。いつも平静を装っている厲塵瀾は、司馬容にだけは感情をあらわにする。それはかれが司馬容に気を許している証拠である。

 厲塵瀾は栖止地の空空鋪へ行ってくると言って、瞬行術で消えた。

 

 

 中へ入れずに清波殿の外でふたりの会話を聞いていた招揺は、司馬容を羨ましいと思う。厲塵瀾は司馬容に何でも話し、感情をぶつけるが、恋人である招揺にはいつも激情を押し殺している姿しか見せたことが無い。

 

 

 夜の禁地で招揺が待っていると、肩を落とした厲塵瀾が木の洞から帰ってきた。

「この墓石は壊すよ」

 厲塵瀾は、墓前で酒を飲んでいた招揺にそう言った。

「壊さなくていいよ、記念碑みたいなものだから」

 今の招揺が心配なのは、自分の死ではない。彼女がいなくなったあと、厲塵瀾が悲しみに暮れることが、最もこころ痛むことだった。

 

 

 

 

 

 

<41集に続く>

 

 

路招揺 = 万戮門前門主。厲塵瀾を助けたことで宗門から命を狙われる。

厲塵瀾 = 魔王の子。父によって封魔山の洞窟に封印されていた。万戮門現門主。

琴芷嫣 = 宗門一派の玄玉堂。父を殺され、万戮門に身を寄せる。

袁桀 = 万戮門の北山主。

司馬容 = 万戮門の西山主。

路十七 = 万戮門の東山主。

林子豫 = 万戮門の暗羅衛長。

姜武 = 新山門門主。

李恩、宋毅 = 新山門。姜武を兄貴と慕う。

洛明軒 = 宗門門主。修行により、鋼の体を得た金仙。

柳蘇若 = 宗門一派の鑒心門。長玉聖主。洛明軒の婚約者。

柳滄嶺 = 宗門一派の鑒心門。琴芷嫣の幼なじみにして婚約者。

柳巍 = 宗門一派の鑒心門門主。

琴千弦 = 千塵閣閣主。

遅天明 = 宗門一派の望星門門主。宗門の執事を兼ねる。

錦繍公子 = 宗門一派の天璇門門主。

琴瑜 = 宗門一派の玄玉堂堂主。琴芷嫣の父。

唐韵 = 宗門一派の唐門門主。

雄天 = 宗門一派の宿南門門主。

江河 = 宗門一派の虚宗門門主。医学に長けている。

子游 = 栖止地の空空鋪と陶然軒の店員。

ドラマ「招揺」

 

第39集

 

 

 

 

 

 

<39>

 

 

 遅天明と雄天が計画に同意したことを、錦繍は姜武に告げた。これで少なくとも望星門と宿南門の門徒たちを千塵閣攻めに使えるということだ。錦繍は姜武に、唐韵の解放を求める。

 新山門に囚われていた唐韵は、しかし正統派が邪派にひざを屈したように感じていて、錦繍のやり方に納得がいかない。

 

 

  万戮門の南山院で治療を受けていた琴千弦は、弟子たちに十日後と言っていたが、招揺の無事が確認できたら千塵閣へ帰るつもりをしていた。それを聞いた芷嫣は、思わず伯父の気持ちを疑う。そばにいた十七も、招揺は厲塵瀾のことが好きなんだから、好きになってはいけないと責めた。もちろん、そんな気持ちを琴千弦が抱いているわけではない。

 

 

 南山院の見晴らしの良い高台に、厲塵瀾と司馬容がいた。琴千弦を待っているのである。江州城にいた司馬容は、空空丸を眺めているうちにある事に気付いた。空空丸は栖止地の産物なので、施されている法術を解くことは難しい。だが様々な術に精通している琴千弦ならば解けるのではないかと思い、月珠に留守番をさせ、万戮門へ駆け付けたのだ。

 小院から降りてきた琴千弦は、やはりその方法について、答えを見つけていた。蔵書閣の書物にあった、六道金剛陣だ。この術は古代の宗師の力で神器の力を引き出し、対象となる者の身体を創りなおす術である。琴千弦は、身体を創りなおす過程で丸薬の副作用が消えるだろうと話す。

 宗師の力は琴千弦が法器の力を借りれば成しえる。神器は六合天一剣がある。しかし問題は陣である。失われて久しい陣だけに、真偽のほどは定かでない。

「試せるものは試したい!

 厲塵瀾は藁にもすがる思いだった。

 

 

 ところで、と司馬容は話題を変えた。昨今、巷で流れている琴千弦の心魔を、どうやって外へ出したのか聞く。司馬容は同じ方法で厲塵瀾の心魔を除くことは出来ないかと考えていたのだ。

「虚宗門の前門主から贈られた薬材のおかげです」

 

 

 路十七は、蔵書閣でやけ食いしていた。琴千弦が十七に別れの挨拶もせずに帰ってしまったからだ。十七のあとを追いかけてきた芷嫣が、数日で戻ってくると言ってなだめる。琴千弦は千塵閣へ法器を取りに帰ったのだ。

「ね、なんで私のこと、姪っ子って呼ぶの?

 最近の十七は、芷嫣のことを姪っ子と呼んでいる。不思議に思った芷嫣は、聞いてみた。

「だって、あたしは厲塵瀾が門番だったころに、すでに東山主だったんだ。その厲塵瀾の弟子だから姪っ子なんだよ」

 ふたりは仲良く焼き鳥を頬張った。

 

 

 西山院に異変が起きた。屋敷に放火されたのだ。知らせを受け、司馬容と厲塵瀾、招揺は暗羅衛とともに急いで江州城へ向かう。

 司馬府は焦げ臭いにおいが立ち込めていた。美しく咲いていた海棠の木も焼け焦げ、幹の根本には身体を焼かれた月珠が横たわっている。車いすから転がり落ちた司馬容は、月珠にすがりついた。

「阿容、修理しなくて大丈夫。痛くないから」

 月珠は知ってしまったのである。彼女は本当の月珠ではなく、月珠を模した傀儡でしかないことを。本当の月珠は、司馬容が語ったお話の豚なのだ。

 

 

 司馬府に火を放ったのは林子豫である。西山院の間者が常に聞き耳を立てていることに気づいた林子豫は、厲塵瀾の目を遮断し、蓄積された情報を灰にするため、司馬府を襲ったのである。

 だが、それよりも目に見える成果をと、遅天明は塵稷山の詳しい地図を要求する。

 実は地図は書きあがっていた。いろいろと言い訳をして引き渡しを延ばしてきたが、限界である。

「私、何してるんだろう」

 ぽつりとつぶやいた林子豫の目から涙がこぼれた。

 

 

 厲塵瀾が六道金剛陣を行おうとしていることは、光の耳にも入っていた。

「棺桶の用意でもしていろ!

 相変わらずの口調で怒る。いまや顧光の言葉に素直に従うのは琴千弦だけだ。

 顧光の治療を受ける厲塵瀾の背中からは、以前と同じように黒い邪気が立ち上っている。

 そばで治療の様子を見守っていた司馬容は、琴千弦が心魔を除くのに虚宗門の薬材を用いたことを話し、聞いたことがあるかと光に訊ねた。顧光は幼かったころに思いを馳せる。我に返った顧光は、知らない、とそっけなく答えた。

 

 

 江河の父が小さな箱を持って地下へ降り、また戻ってくるのを、子供のころの江河と顧光は木の陰から盗み見ていた。師父が去ってから、ふたりは地下室へと降りる。小箱を見つけ、中に入っている換骨の種を興味半分で見ようとしたとき、師父にばれた。ひどく叱られ、祠堂で仕置きを受ける。夜になっても祠堂でひざまずいていた江河と顧光は、いつしか居眠りをはじめた。一陣の風が、位牌にかかっていた布を顧光の前に落とした。布を位牌に掛けようとした顧光は、その位牌に師父の名が書かれているのに気付いた。となりの位牌の布を取ってみる。そこには江河の名があり、位牌の後ろにはろうそくが点っていた。

 

 

 清音閣では、錦繍が唐韵を説き伏せようとしていた。姜武と手を組むなど、やり方が邪派並みに汚いと言い、なかなか門徒百人を千塵閣攻めに出そうとしない。しかし門徒を出さないなら千塵閣に加担したものと見なすと言われ、また望星門と宿南門からも門徒を出すと聞いて、唐韵は計画の成功を条件に、錦繍の求めに応じた。

 錦繍には、ほかに目算があった。琴千弦の醜聞が広まって以来、宗門のほかの門派に入りなおす千塵閣の弟子たちが多くなった。今回、千塵閣を包囲して攻撃するのは、実質もと千塵閣の弟子たちとすればいい。それなら門派内の騒動だと主張できる。宗門が千塵閣を攻撃したなど、世間からのそしりは受けなくて済むのである。

 

 

 法器である心蓮を取りに戻った琴千弦は、集めた弟子たちに醜聞に関する説明をした。そのあと、千塵閣閣主の座を降りると宣言する。たったひとりを救うためにそこまでしようとする琴千弦を、ずっとそばで支えてきた溯言ですら理解できない。

 

 

 心蓮を使って宗師の力の制御を確かめていた琴千弦の耳に、突然姜武の声が響いた。

「三つ数えるうちに来ねぇと、死人が出るぜ」

 急いで弟子たちの学び舎へ移動する。間に合ったというのに、姜武は門徒をくびり殺した。

 学び舎の外には、宗門門徒を従えた錦繍たちが迫っている。晴れ渡っていた空は、姜武の出現で嵐の様相を呈していた。溯言の号令で千塵閣の弟子たちが陣を作る。錦繍の言葉にあおられた宗門門徒たちが、対抗して陣を敷く。

「琴千弦、覚悟しろ」

 

 

 

 

 

 

<40集に続く>

 

 

路招揺 = 万戮門前門主。厲塵瀾を助けたことで宗門から命を狙われる。

厲塵瀾 = 魔王の子。父によって封魔山の洞窟に封印されていた。万戮門現門主。

琴芷嫣 = 宗門一派の玄玉堂。父を殺され、万戮門に身を寄せる。

袁桀 = 万戮門の北山主。

司馬容 = 万戮門の西山主。

路十七 = 万戮門の東山主。

林子豫 = 万戮門の暗羅衛長。

姜武 = 新山門門主。

李恩、宋毅 = 新山門。姜武を兄貴と慕う。

洛明軒 = 宗門門主。修行により、鋼の体を得た金仙。

柳蘇若 = 宗門一派の鑒心門。長玉聖主。洛明軒の婚約者。

柳滄嶺 = 宗門一派の鑒心門。琴芷嫣の幼なじみにして婚約者。

柳巍 = 宗門一派の鑒心門門主。

琴千弦 = 千塵閣閣主。

遅天明 = 宗門一派の望星門門主。宗門の執事を兼ねる。

錦繍公子 = 宗門一派の天璇門門主。

琴瑜 = 宗門一派の玄玉堂堂主。琴芷嫣の父。

唐韵 = 宗門一派の唐門門主。

雄天 = 宗門一派の宿南門門主。

江河 = 宗門一派の虚宗門門主。医学に長けている。

子游 = 栖止地の空空鋪と陶然軒の店員。

ドラマ「還珠格格II」

 

第34集

 

 

 

 

 

 

 

<34>

 

 

 金鎖は、紫薇にも話していない心の内を柳青に明かした。

 頭では尓康への想いを断ち切るべきだと思っているが、気持ちの方はそう簡単に割り切れるものではない。しかもかれの恋人である紫薇は、金鎖と姉妹同然の存在である。つらそうにする金鎖に、柳青は心の痛みは時間が解決すると慰める。紫薇への恋を手放した柳青は、今は皆の幸せを願っていると話す。ぜんぜん平気だと言う柳青は、少し強がっているようにも見えた。

 気持ちを分かってもらえたことで、金鎖はようやく心が晴れてくる。

 

 

 もう少しで次の白河鎮へ着くというところで、小燕子一行は休憩を取った。紫薇がひとり馬車に残り、女性三人は茂みへと用を足しに行く。

 突然、小燕子と金鎖、柳紅が黒衣の男たちに襲われた。小燕子と金鎖が別々の方向へ連れ去られる。異変を感じた尓康たちが駆け付けるが、一歩遅かった。しかも、尓康たちが戦っている間に馬と馬車を奪われる。馬車には紫薇が乗ったままだ。尓康が馬車を守ろうとして、男に斬りかかった。馬を御する者がいなくなって、馬車が暴走する。馬車の車輪が石に乗り上げ、紫薇が外に投げ出された。尓康はあわてて駆け寄る。地面に落ちた拍子に頭を打った紫薇は、意識がもうろうとしていた。

 黒衣の男たちを倒した蕭剣たちは、ふた手に別れて小燕子と金鎖の救出に向かうことにする。次に合流するのは白河鎮だ。

 

 

 黒衣の男に担がれていた小燕子は、ある壮年の男の前で降ろされた。男の名は李徳勝、乾隆帝から小燕子と紫薇を保護しろと命じられた重臣のひとりだ。すきを見ては逃げようとする小燕子の手足を縛り、紅葉鎮にある宿の一室に監禁する。部屋の中も外も武術に長けた者が大勢見張っていて、それこそ蟻のはい出る隙も無い。

 日のあるうちから紅葉鎮の宿を窺っていた蕭剣は、永琪とふたりで部屋にのり込むことは無理だと判断する。闘鶏の胴元の家へ再度押し入り、迷魂香を奪ってくる。

 あたりが暗くなったころ、迷魂香で全員を眠らせた蕭剣と永琪は、部屋に忍び込んで、眠りこけている小燕子を救い出した。

 

 

 白河鎮の祥和客桟に宿を取った尓康は、酷くすりむいている紫薇の足の手当てをしていた。取り戻した馬車には、幸いなことに薬が残っていた。余分な服や布団は、荒れ廟の浮浪者たちに与えてしまった。

 不安のあまり、紫薇はそばにいてくれと尓康に懇願した。頭痛がするというのに、紫薇は小燕子や金鎖の心配をしている。尓康は紫薇がうたた寝している少しの間に、宿の店員に食べ物と医者の手配を頼んだ。

 

 

 金鎖も小燕子同様、黒衣の男に担がれ、秦という壮年の男の前に放り出された。格格ではないと分かり、犯罪者として連行されようとするところを柳青と柳紅に救われる。しかし黒衣の男たちから追われているうちに足を滑らせ、崖から落ちてしまった。

 柳青と柳紅は崖下に降り、金鎖を探す。草むらに倒れて動けなくなっていた金鎖は、右の足首を痛めていた。柳青が背負い、近くの農家に駆け込む。銀子をたっぷり渡して空き部屋を借り、かたく口止めした。

 金鎖の足は脱臼していた。折れているのではないので、手慣れている柳青が骨の位置をもとに戻す。しかしあまりの激痛で、金鎖は気を失った。

 

 

 日の暮れた祥和客桟の一室で、紫薇は悪夢にうなされていた。薬湯を持ってきた尓康が起こす。

 紫薇は、あたりが真っ暗なことを不思議に思った。

「もう夜なの? 明かりはどうしたの?

 そう聞かれた尓康は、紫薇の様子がおかしいことに気づいた。紫薇の目は見えていなかったのだ。ぼうっとろうそくの明かりが感じられるだけだ。尓康が部屋中をろうそくの明かりで満たすが、なにも見えない。紫薇は絶望のあまり、泣きじゃくる。これは天が与えた試練だと尓康は言って、紫薇を抱きしめた。

「あなたの顔も見えないなんて、死んでしまいたい!

「そんなことを言うな! 私がきみの目になり、杖になってあげる!

 

 

 

 

 

 

<35集に続く>