ドラマ「欽天異聞録」
第12集
<第12集>
蘇建翊が荷物を持って百草廬から消えた。まさか、かれにつらく当たったのが原因なのか、と白洛書は若干後悔する。
「たかがお菓子じゃないか。あのお菓子は私が買ったんだぞ」
蘇建翊が寝起きしていた部屋に、置き手紙があった。迷惑どころか皆に命の危険が及ぶ可能性があるので、別れも言わず出て行くことにした、と書いてある。
蘇建翊はひとりで四年前の真相を探るつもりだ。
「今すぐ、追うぞ!」
「どこへ?」
「東南の方角、窮奇関だ!」
荷物をまとめて百草廬を出た蘇建翊は、かつて同胞と同じ釜の飯を食っていた窮奇営に向かっていた。
本当に私が仲間を殺したのだろうか。
間際の陸瑾の言葉が蘇建翊を苛む。野宿の準備をしても、同胞たちの責める声が聞こえて眠れなかった。
侍女が安楽侯府に帰ってきた。計画は順調に進んでいると李思霖に報告する。
侍女は、童肦秋の行動について話した。
童肦秋が岐天意に会いに行ったところまでは分かったが、詳細は看守がどうしてもしゃべらなかった。大金を積んでも、である。
もうひとつ、看守がしゃべったのは、祝宴の警備の件で余瓊が岐天意に面会したことだった。
竹藪の中を進んでいた蘇建翊は、ふいに殺気を感じた。
身構えると同時に、矢が襲ってくる。身を翻して避けた矢は、うしろの竹を削り取った。
蘇建翊は四人の男に囲まれた。
「蘇荘主、明日は試刀大会を開く予定だろう? どこへ行く?」
「…私を知っているのか?」
荘主? 試刀大会?
蘇建翊には身に覚えが無いし、男たちに面識は無かった。人違いではないか。
男たちは”蘇荘主”の宝刀を奪いに来たらしい。蘇建翊を攻撃する。
個々の武術は脅威ではなかった。しかし四人一度に攻撃されては防ぎきれない。蘇建翊は蹴り飛ばされ、大木に激突した。
「さあ、宝刀を出せ!」
「ほら、勝手に出て行くからこの始末だ」
男たち四人のうしろから童肦秋、白洛書、そして孫淼淼までもがあらわれた。
「阿秋、大人…」
童肦秋がいきり立つ男たちに令牌を突きつけた。
「天誅司巡天按察使、童肦秋である!」
男たちはおののいた。
<第13集に続く>