ドラマ「欽天異聞録」第13集 | 江湖笑 II

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ドラマ「欽天異聞録」

 

第13集

 

 

 

 

 

 

 

<13>

 

 

 蘇建翊を襲った四人の男は、白洛書の説教という罰を食らった。

「おまえたちの目的は何だ?

 童肦秋の詰問に、男たちは知る限りのことを正直に話した。

 かれらの知る蘇建翊は鋳剣山荘の荘主で、四年の月日をかけて天外奇石を鍛え、宝刀を作成した。そこで蘇建翊は鋳剣山荘にて試刀大会を開き、宝刀を披露する予定だった。江湖のあちこちから侠客が集まっているという。

 天外奇石に触れた時点で記憶が途切れている蘇建翊は混乱する。宝刀を鍛えた覚えは無いが、蘇建翊の顔を見た男たちは間違いなくかれが”蘇荘主”だと断言する。

 

 

 許可も無く突っ走り、天外奇石の再捜査を始めた童肦秋に、余瓊は激怒していた。

「我々の首まで落ちてしまうぞ!!

 顔を真っ赤にして怒鳴る余瓊は、童肦秋の左遷を決めた。

 

 

 天外奇石の行方が判明した。余瓊の決定を知らない童肦秋たちは、もうひとりの蘇建翊がいるという鋳剣山荘へ向かう。

 その途中で休憩を取った。茶屋に入り、酒や食事を注文する。蘇建翊の顔を見た店主が、小さく驚いて厨房へ戻って行った。

 となりの卓で料理を待つ客の男三人が、試刀大会を話題にした。

「明日だろ? 今からでも間に合うかなぁ」

「人の頭越しに見えるかどうかだと思うぜ」

「鋳剣山荘へ行った者は見たが、帰って来た者は見てないぞ」

 となりの客より先に、店主が童肦秋たちに酒と食事を運んできた。それを見た男たちが抗議する。

 孫淼淼がどうぞ、と男たちに酒の壺を投げた。なぜか店主が慌てる。

 この店は黒店、いわゆる盗賊がカモを待つ店だった。店主は酒に毒を盛り、蘇建翊から宝刀を奪おうとしたのだ。

 酒を飲んだ男が腹を押さえて苦しみ始めた。店主が土下座し、蘇建翊に謝罪する。

 もうひとりの蘇建翊はよほど恐れられているらしい。

「淼淼、毒消しを」

 童肦秋に言われて、孫淼淼はしぶしぶ解毒薬を渡す。

「命を救ったかわりに、そいつを役所につき出しておいてくれ」

 童肦秋が頼むと、男たちは即座に店主を捕らえた。

 

 

 鋳剣山荘の門構えは立派だった。しかし森閑としている。人の出入りどころか、気配さえも感じられない。

 門は閂が掛かっていなかった。孫淼淼が一番に中へ飛び込む。そして凍りついた。

「血の匂いだ!

 童肦秋は諦聴の能力で屋敷内の音を聞き取った。目を閉じた童肦秋が顔をしかめ、耳をふさぐ。よろめいた童肦秋を蘇建翊が支えた。

「虫…すごくたくさんの虫だ!

「虫? どこに?

 四方に視線をやる蘇建翊から、白洛書は童肦秋を引き離した。

「大小姐の諦聴は、十里四方の蟻のケンカまで聞こえるんだ。凡人のおまえには無理だけど」

「天外奇石に関することだから、用心しているだけだ」

 突っかかってくる白洛書に、蘇建翊は真面目に答えた。

「用心してるなら、なんで待ち伏せなんかに遭ったのさ」

 孫淼淼も首を突っ込む。彼女が援護射撃してくれていると思った白洛書は、しかし当てが外れた。

「小白哥哥、あんたもだけどさ」

「いい加減にしろ! 何をしにここへ来たと思っているんだ!

 三人は童肦秋に一喝された。

 

 

 鋳剣山荘の内院へ入った四人は、凄惨な光景を目にして言葉を失った。まるで戦場跡のように、何十人という男たちが死んでいる。

 男たちは試刀大会のために集まったのだろう。かれらの傷跡を調べた結果、ひとつの武器で殺されたのではなく、互いに同士討ちをしたことで全滅したと判明した。

 例の宝刀の争奪戦だろうか。

 その時、童肦秋の耳に不審な物音が聴こえた。

「誰だ!!

 音を頼りに、童肦秋が走り出す。そのあとを白洛書と孫淼淼が追う。

 続いて走ろうとした蘇建翊が、急に立ち止まった。目が赤く光る。

 落花榻で山魈と対峙した時の目と同じだ。

 

 

 

 

 

 

<14集に続く>