こちらは、前記事『长安十二时辰(長安24時)』2 の続きです。

 

最初から読みたい方は こちらから  #1 

 

まだ、お読みになられていない方は、そちらを読まれてから・・・をお勧めします。

 

なお、人物紹介の人数が増えていくにつけ、どんどん大胆なネタバレを含みますので(笑)、もし今後、フラットな状態でドラマを見ようと思われてる方は、是非ともGo Back!でお願いします。

 

『长安十二时辰』長安24時 / The Longest Day in Chang'an

 2019年(中国)Jun 27, 2019 - Aug 12, 2019

 40分×全48話  

 原作:"长安十二时辰" by 马伯庸

 制作:Youku

 演出:曹盾

 

まだまだいました!助っ人番外編!(笑)

 

  特別任務、がんばります🐶

阿細(あさい)

今でいう警察犬ですね。
とはいえ、皇宮で飼われている、大切なお犬様です爆笑
見た目はそんなに強そうじゃありませんが、200頭の犬の内、最も嗅覚が優れ、空気中のにおいも判別。しかも頑固で追いかけたら諦めず。
世話係が「見知らぬ者には従おうとしません」と言ってるそばから、張小敬が阿細の紐を取り上げ、「阿細、俺は張小敬だ。宜しくな。今日は力を貸してくれ」って阿細に挨拶して、すぐに手名付けちゃうところはお約束(笑)
「この人、ボスだ!」って一瞬にして悟る阿細。(笑)
嗅覚が鋭いといっても、街中の通りでぶちまかれた香の粉を被ってしまったり、なにかと不運は続くものの、張小敬と協力しあって隠れ家を見つける優秀な子です。
長安の街を、一人と一匹で疾走するシーン、すごくよかったなぁ(笑)
 

結局、阿細は、ちゃんと犬舎に帰れたよね?

お世話係の人が、「安上宮まで届けてくれたら、あとは自分で宣徽院に戻れます」とか言ってたんで、阿細の賢い姿を見たかったんだけど、残念ながら、そのシーンはなかったです。

たぶん、今日の阿細の任務は訓練でもしたことがないような想定外だらけだったと思う(笑)

ご褒美にいいお肉をいっぱいもらってね。

なんだかんだいって、最後、張小敬に代わって、ちゃんと面倒を見てる姚汝能。

 

 

さて、ここで、登場人物たちの選定枠の趣向を変えてみましょうか。

 

 長安の陰(2) 障壁とまでは言えないが・・・

 

崔六郎兄弟(崔六郎&崔器)

まず、崔六郎(兄)。これまでにも何回か名前があがっている、張小敬の前任。

潜伏任務中に、敵(狼衛)に疑われ、惨殺されてしまうんですよね。

弟の崔器を兵隊にするために、自分は身体を壊してまでも、大金になる悪事に手を染め、苦労して金を作り、軍籍を買った、という罪人だけど、人でなしとまでは言い切れない苦労人。

死ぬ間際に咄嗟に飲み込んでまでも守ろうとした長安の地図の断片が、張小敬が捜査を開始する最初のとっかかりとなったわけだし、都に陰謀が渦巻いていることを訴えた功労者でもあります。

 

一方、そんな大恩ある兄の仇を取りたい気持ちが強すぎる崔器(弟)は、靖安司付きの旅賁軍旅帥。← 靖安司と太子に仕える軍隊。

とにかく、張小敬には反抗的だし、正直、囚人を登用した李必のことも気に入らない。

途中、張小敬に借りが出来てしまい、いやいや協力する、みたいな流れも出てくるんですが、どうしても張小敬を認められない、でも、本心では認めてる、そんな頑固者です。

ただ、崔器にしても、心を許した人からの信任は厚いし、非常時には、思わず、張小敬の指示に従っちゃうところとか、決して根っからの悪人じゃないのは端々に感じます。

おそらく、(死刑囚だと聞いて)抱いていたイメージとは全く違った張小敬に対して、その生き方にどこか畏敬の念を抱いていても、到底自分にはできないというジレンマが心の底にあったのかも。

だって、兵となり、長安にやってきた時、兄が紹介してまわってくれたのは、役人や高官ではなく、名もなき、長安の庶民たち。

みんなよくしてくれた。

今の自分の立場では、長安の普通の民を守れないから出世したい、と語る崔器の根底は張小敬と同じ。

そんな崔器に「長安には別の顔もある。飲み込まれない意思を持て」と忠告する張小敬。← いちいち、かっこいいでしょ。言うことが(笑)

 

でもね、吠える犬ほど気は小さい、の言葉どおり、崔器が自分のミスを取り繕うために放った偽の報告のために、事件は解決してないのに、爆発で死んだ配下は無駄死に扱いになるわ、張小敬が牢に逆戻りさせられるわ、なにかと困った事態に。

崔器の素直じゃない人柄は、見ていてイライラすることも多いんだけど(笑)、いわゆる“普通の人”ってことなんだろうな、とも思わされます。

【ネタバレ】終盤、崔器が率いる旅賁軍に理不尽な命令が下り、どうしても従うことが出来ず、プライドをかけて、たった一人で立ち向かうところとか、壮絶すぎて、見直しました。

出番も存在感もそこそこあって、印象的なサポート役でした。


逆にこちら↓は、はっきり、障壁といっても差し支えないくらいだと思ってるふたり。

 

元載&王韞秀(カップル?)

極貧を極めている貧乏役人の元載。

身分は、大理寺評事・八品。

明日食べる米も心許ないと言って、下女↓はプンスカ😡!

ただ、ここでちょっと変だな、と思ったのは、靖安司で李必の右腕のように働いている徐賓も同じく八品で、下級役人には違いないけど、奥さんが外で働く必要がないくらいには十分な俸禄があるはずだ、って言うセリフがあるのよ。

元載の場合も、下女だって、この子ひとりくらいみたいだし、← たぶん、どんどん減っていって、残ったのはこの子だけ、という可能性が高いけど。

この人は一体、なににお金を使ってたんだろうか?

実力ある自分を登用しない現行のシステムが間違っていると言わんばかりに、出世する機会を逃すまい、と、血道をあげる姑息なザ・小役人と言ったら、言い過ぎかな。

元載とは関係ないシーンで、李必が徐賓に対して「才ある者は 皆 高官の引き立てを求める。才を生かすためだ」ってプチ牽制するシーンがあるんだけど(11話)、後に出てくるこの元載を思い出してみれば、この時代の下級役人にしてみたら必死になるのは当然。

あまり目の敵にするのは気の毒かなぁと思ったりもしましたが、やっぱり備わった品格の差なのか、宿命なのか、わかりませんが、彼が選択したり、出会ったりする人たちはことごとく邪道ばかり。

なまじ、役人としてのプライドが高い部分があって、歪んだ正義感を振りかざしたりするところなどがどうしても鼻に突いて、結局、元載には好感が持てませんでした(爆)

でもね、史実では、後年、ホントに宰相になるらしい。← 姑息だの、なんだの言いましたが、あくまでもこれはドラマだからね(笑)

 

民にも笑われるくらいの臆病者であっても、そこそこ切れ者で、わりと的確に手を打つから、メンドクサイ相手なのよ(苦笑)

 

その元載が、玉の輿に乗る相手に選んだ、父親の王宗汜大将軍の威光を笠に着て威張り散らかしてる娘の王韞秀とかも、超苦手だったわ~!

この手の時代劇って、武芸に秀でた良家のお嬢様って、案外、物事の道理がわかるサバサバ系で主人公の仲間になったりするのが多いのに、この王韞秀は違うのよ(笑)

「私のパパのこと知らないの?パパに言いつけてやる!怒り」

ホントにこういうキャラなんですよ(笑)

王宗汜大将軍、武運に恵まれ、出世はしたけど、娘の躾は、しくじったらしい。

しかも、この王韞秀も元載のように、歪んだ、いや、物事を表面的にしか見ない正義感の持ち主なので、始末におえない。

ほんと似た者カップルといってもいいと思う。

やたら、ちょこまか出てくるし・・・。

 

たとえ女の身であっても、7歳から兵法を学び、父親について従軍経験もあるという自負があるのなら、普通だったら「前から来る敵としか戦ったことがない奴に背後から刺される気持ちはわからん」と語る張小敬の重い言葉が染みるはずなんですが、この子には1ミリも刺さらんのよ。

こういう裏を読まない(読めない)キャラは、この手の心理戦ドラマにおいて、ある意味、思いもよらない突破口を開くこともあったりするよね。

ラスト近くのこの子も例外ではないんだけど、なんか全然すっきりしなかった。(爆)

・・・などなど、最後まで、どうしても好きになれないキャラもいました。

 

さて、ここから、“陰”より“闇”へと、ワンランクアップします。(苦笑)

 

  長安の闇(1) 禍根

 

このドラマを通じて、実は、張小敬が体験した烽燧堡の戦い、この禍根がいかに深く根ざしていたか、について、考えないわけにはいきません。

唐のためと信じ、餓死寸前まで追い詰められても、援軍を待ちながら戦い続けた兵士たち。

途中、応援を求め、偵察に行った仲間の口から、その周辺地域の近隣の砦はとっくに遺棄され、唐の民など誰一人おらず、周辺の土地も開墾もされず、何年も放置された場所だ、と判明するのですが、そんな場所にみすみす援軍など送るはずがない。

では、一体、なんのための、誰のための戦いだったのか?

 

その答えは、17話の、徐賓が李必に酒を進めながら話した問わず語りの中にあります。

 

それは、烽燧堡の戦いについての話ではありません。

実は、張小敬、参将まで出世していた兵士だったにも関わらず、信安王の「大群を率いて石堡城を攻めよ」という命令を断った、という逸話。

※唐時代には、参将という名称ではなかったようですが、軍の総大将→副将の次、いわゆる前線部隊を分担指揮する上級武官を差すようなので、叩き上げの兵士としてはかなりの出世頭かと思われます。

 

敵方の石堡城は、基本、敵兵がわずか数十人ほどで守っているような砦なんだけど、攻めるとなれば、天然の要塞構造が災いし、唐軍の犠牲は数万にも及ぶことが明らか。

しかも、石堡城は必ずしも攻め落とさなければならない要塞ではなかった。

歴代の将軍が幾度となく石堡城を攻めたのも、陛下に“難攻不落”を落としたという戦績を認めてもらいたい、という功名心のため。

作戦をきいた者は、それがわかっていても口には出せなかった。

徐賓「でも、張小敬は違ったんです」

“人命を利用して功績を得る小人だ”と信安王に言ってしまい、激怒させちゃったわけよね。

 

殺される寸前だった張小敬の命乞いをした聞無忌隊長とともに一兵卒に降格された後、派兵させられたのが「烽燧堡」

それこそ、難攻不落と言われた岩城だけど、その分、身動きが取れず、食料はどんどん乏しくなり、底をつきかける。

闘っても闘っても敵軍はどんどん攻撃をしかけてくる。

待っても待っても、20日以上援軍は来ず。

※これは、あとになって、生き延びた一人が、涙ながらに張小敬に訴えて発覚するんだけど、第八団の母隊である味方の大軍6000人は、烽燧堡の近くに潜んでいたにもかかわらず、一切動きを見せず、第八団の壊滅後、出現して迎え打ちにした。つまり、第八団は、蓋将軍が魚を釣るための餌にされたのだ、と。

 

この戦いがいかに熾烈を極めたのか、ドラマの合間合間に、小出し小出しに描かれるんですよ。

特に、39話なんて、13人対3000人だもの。

「第八団 死して悔いなし・・・」

よく、張小敬が上腕をトントンと2回叩いて、すっと心臓まで滑らせるポーズは第八団の証。

この39話のタイトルバックの『长安十二时辰』の文字の背景が、血塗られたように真っ赤なの。

(この色は時々、内容によって変えたりしますね)

 

そんな中でも、ずっと最後まで、兵士たちの戦意が落ちぬよう、常に明るいムードを作り、笑顔にさせ、前を向かせていた隊長が聞無忌。

兵士にしては、人格者って感じの人でした。

 

  肉を食えば元気が出るぞ

聞無忌

張小敬の元戦友で第八団の伍長。通称は「聞隊」。生き残った九人の中の一人。

長安に戻ってきてからは、家業の香を製造販売する「聞記香舗」を娘とともに経営し、安定の日々を送っていた。

そこへ、公館建設のための無理やりな立ち退きを目的とした嫌がらせが続くようになり、周辺の店も被害を被るように。

交渉人として、熊火幇のもとに赴いたものの、当然、決裂どころか、致命傷を負わされてしまう。

最後、張小敬に「娘を頼む」と頼み事をして息を引き取る聞無忌。

立ち退き計画が役所ぐるみで行われていたことを知った張小敬が、聞無忌の仇を取るために、関わっていた熊火幇34人や上司を殺害した、というのが、張小敬の罪の真の動機。

 

では、公館建設をすすめていたのは誰だったのか・・・というあたりも、結局、根っこは全部同じ。

皇帝に認められることこそが功績となり、出世の足掛かりになるから、力のある官僚は皇帝のむける難題をなんとしてでもクリアしようと必死になる。

 

人の命よりも功名・・・これが、長安の闇の一つであることは間違いないと思います。

 

 

・・・・と、ここまで長々と人物評やら事件のあらましなどを読んでくださったうえで、え? 大事な人が抜けてない?とか、たしかに、アクション時代的としては面白いのかもしれないけれど、取り上げたのはそれだけが理由なの?と思われた皆様。

その答えになるかどうかわかりませんが、私が、このドラマで、張小敬や李必と並び、紹介したかったこの方について、ようやく触れていこうと思います。ウインク

 

  長安の闇(2) 悪魔に魂を売った代償

 

「光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる」(ゲーテ)

どんなに強固な政権を築きあげ、盤石だと思えても、その分、見えない闇も深い。

長安には、古くからの闇に加え、まさに今、現在進行形で、闇化していっているという一面もあるのです。

 

「蚍蜉撼大樹」(中国成句)・・・小さな者が大きなものに挑むさま

 

   正しいのは俺か、お前か

龍波

チェラホト計画の実行部隊を担当した白蟻団の首領。(※原作での名は蚍蜉団)

※“その2”の狼衛の説明の時に “実行グループ”と称していたのがそれです。

男前でしょ(笑)

私、この龍波を演じた周一囲さんのことは、『大唐狄公案 神探、王朝の謎を斬る』(2024年)を見ていたので、一瞬で「あ、この人!」となりました(笑)

「神龍」に出てたってチラッと見かけたんだけど、どこに出てたっけ? ← また、近いうちに見返そうかな。(笑)

 

チェラホトが、火の難だというのは、割合早く4話の段階でわかっていたことですが、なかなか、現物ならびに計画そのものの全貌は明らかにならず。

張小敬の指示通り、姚汝能が名簿を精査したところ、狼衛と通じて、長安の地図を盗んだ疑いのある人物として、潜伏中だった龍波が、ドラマ的にも中心人物に急浮上。

 

最初、目的や成り立ちなどが全く違う、靖安司が追っている狼衛と、この龍波たちの一味との関係性がよくわからなかったんですが、チェラホト計画の発案者である黒幕に、それぞれの利害をまんまと利用された別々の組織だったことが見てるうちにわかってきます。

もともと計画の全貌を俯瞰で見れば、狼衛のほうが下部組織って感じだったみたいですが・・・。

 

特に、11話で、狼衛の生き残り、曹破延と配下のマグルが、龍波に従うと頭を下げたシーンで、完全に、序列ははっきりしました。

 

 

龍波は、魚腸っていう女刺客も傍においてるんだけど、

  愛を得たくて人を殺す女

魚腸

普段、男装してるこの女がなかなかの面構えなのよ。

昔、龍波に命を救われた時に一発で惚れたっていうその一点にすがって生きてるような健気なところもあるけれど、龍波に尽くしたり、他の女に嫉妬をむき出しにすること以外は、常にこの雰囲気で、殺人マシーン。

魚腸の名は、魚腸剣から取ったらしいけど、彼女が持ってる剣は持ち手に特徴があって、まるで身体の一部みたい。

 

(魚腸から)想いを寄せられているとわかってるのに全然その気を見せず、龍波が遊ぶのは妓楼の妓女。← 靖安司の追跡が激しくなり、アジトを逃げ出す際、妓女が馴染み客に渡す札をわざと置いてきた魚腸。

完全に嫉妬ですね。

そこから足がつくっていう流れ、興味の持たせ方がうまい。

 

札を頼りに捜査に来た張小敬に、情報をくれた花形遊女の李香香、この人はキレイだったね。

  「もう会えないと思ったわ。ずいぶん泣いたのよ」

李香香

 

張小敬と、さもわけありみたいな口ぶりをしてたけど、おそらく、香香の中では張小敬という男は、この長安の役人の中で唯一信じられる男だったんだと思うし、例え、惚れても絶対に手に入らない男だとわかってる感じだったな。

男であれ女であれ、簡単に寝たり、くっついたりできても、真に惚れ合う相手とは引き合う磁力そのものが違うんだよね。

【プチネタバレ】張小敬と檀棋みたいに・・・🙊(笑)

 

結局、張小敬にはつれなくできない李香香が、長安の暗部を牛耳る葛の旦那に引き合わせる。

  掟は厳しくとも、それ以上に辛い現実から逃れてきた人々を匿ってくれる平康坊地下城

葛の旦那(葛老)

李香香の仲立ちにより、葛の旦那↓が管理する貧民街(平康坊地下城)に入ることが出来た張小敬。

この人もなかなかキョーレツなキャラだったよね。

張小敬が知りたい情報を与える条件として、平康坊に忍び込ませた間者の名を明かせと迫る。

手がかりは妓女の証言のみ。

このままでは大勢の長安の民が死ぬ。

ここで、究極の選択をするしかなかった張小敬を受け入れた小乙の、張小敬や任務への忠誠心に泣いたし、逆に、息子同様に信じてきた小乙に裏切られていたと知った時の葛の旦那の気持ちも胸にくるし、なにより、小乙の命を犠牲にしなければならなかった張小敬がこれから背負う業を思うとたまらない。

 

で、こちらが、龍波の馴染みの妓女さん(丁瞳児)。

彼女も気の毒な人だった。

   所詮、私は籠の鳥

丁瞳児

好きな男と平康坊から逃がしてほしいと望む丁瞳児。ところが、かけおちしようとまで信じた書生は結局、逃げられるのはひとりだけとなると本性丸出しになって、彼女を捨てた。

葛の旦那の指示で、龍波について供述する丁瞳児。

龍波と最後に会ったのは2か月前。奴が管理しているという、以前は役人の邸宅だった廃墟。

そこであるものを見た、絶対に死ぬわよ、と意味深に笑う丁瞳児。

 

こんなふうに、ヴェールに包まれていた龍波という男の姿が、張小敬たちにも、少しずつ見えてくる。

 

この龍波、不思議なことに、張小敬が敬う第八団の隊長(伍長)だった聞無忌の娘、聞染のことを“お嬢”と呼んで大切に扱ってる。

   父さんは掟を守っても死んだわ

聞染

父親の復讐もしたい、張小敬の心も得たい、長安という街が憎い、気持ちはわかる。

彼女が年齢の割には、有能で度胸もあるのは確かなんだけど、常に自分の力を過大評価してる、というか、主張の強さばかりが目についてしまう。

この子がいろいろかきまわしても、張小敬も龍波も、無条件にこの“お嬢”を守ろうとするんだよね。

それは、聞無忌隊長の忘れ形見だから。

自分より年齢もはるか上で、最後まで「小娘め!いっぱしの真似を!悪党とつるみやがって!」って自分を子供扱いしかしない張小敬の、男らしさに早くから気づいてしまったことも、父親を失い、頼れるのはこの人だけと思い込んでしまったことも、この子にとっては悲劇だったのかも。

どこかで現実を受け入れられない精神的な幼さもあって、正直、聞染のことは、檀棋ほどは好きになれなかったなぁ。

根はいい子だから、よけい残念なの。

 

【未視聴の方は、特にネタバレ注意!】

前述のとおり、聞染のことを“お嬢”と呼ぶあたりで、薄々おかしいなって感じになってきて、それが後半になって、龍波が、張小敬のプロフィールにあった“開元二十三年に烽燧堡の戦いで戦った、第八団の生き残った九人の中の一人”で、旗手だった蕭規だと、一足先に視聴者には判明するんです。

 

ドラマの途中、何度も挟まれる「烽燧堡の戦い」での描写、本当に大事でした。

 

巨大な灯楼の一番上にいて、自分を待ち構えている相手。

張小敬はどことなく、それまでに首謀者である龍波が誰なのかを感じてるっぽくって、早く確かめたいって思ってるような雰囲気なかった?

直前に、聞染から渡された預かりものだという見慣れた袋に入った、軍刀を研ぐ石を見た時の絶望。

悲しい予感は当たり、ああ、やっぱりそうだったか・・・って感じで、目を瞑るしかない。

 

当然、かなり後半(40話)になるまで、龍波(蕭規)と張小敬が直接顔を合わすことはなかった、というのもミソ。

再会の時は、張小敬が灯楼の上部まで登って来たところで、唐突に訪れたんだよね。

どこかまだ、信じられない(信じたくない)張小敬と

この時を待ち構えていた蕭規。

 

《烽燧堡の回想》

その昔、いつ死んでもおかしくない戦火の緊迫感が続く中、張小敬は時折、こんなふうに、軍旗を掲揚している場所から動けない蕭規のもとに食事を運んでやったり、腰をおろし、本音を語ったり、たわいもない話をしたりすることが多かった。

とにかく、一緒にいて一番リラックスできる相手だったんでしょう。

 

張小敬〈俺には、敬愛する人間が二人いる。一人は、第八団隊長の聞無忌。もう一人は・・・〉

 

実際、張小敬と蕭規の二人が「烽燧堡の戦い」でみせた絆は、隊長の聞無忌や他の兵士たちに対するものとはちょっと違ってて、それこそ、どことなく男が男に惚れるブロマンスのような空気感と究極の信頼関係が大前提にあったように思うんです。

ある意味、蕭規こそが、リーダーとしての素質を備えた、厳しくも華があるヒーロー気質というか、人を惹きつける魅力があったんじゃないかな。

軍旗をふり、みんなを鼓舞する姿、本当にカッコよかったもん。

しかも無茶苦茶色気あるんだよね、この男。

 

戦いの後、再び烽燧堡に戻り、第八団の兵士たちの骨を拾い、わずかばかりの土地を買い、墓を建てた、という蕭規。

生き残りたちの、その後の悲惨な人生もちゃんと追っていた。

昨年、聞無忌や張小敬の事件を知り、権力には敵わないのだ、と思い知り、この怒り、恨みの元凶に報いを受けさせよう、そいつ(皇帝)を問い詰めようとしたのが動機だと言われ、無言になる張小敬。

 

悲しいけれど、再会した時には、二人の正義は完全にすれ違っていた。

 

もちろん、なんの罪もない人を犠牲になどできない張小敬が、民を救うのはもちろん、蕭規のことも助けようと、命がけで最悪の事態だけは防いだおかげで、蕭規は、唐代きっての最悪なテロリストにはならずにすんだのよ。

 

直接、龍波(蕭規)と皇帝が差し向かいで言葉を交わし、実際は、蕭規が思っていた真実とはちょっと違っていたということがわかったわけだけど、← 詳細は省きますがこのシーンも良かった。

ここまでしないと、恨みの本質にたどり着けないものなのか、と悲壮な気持ちになってしまうのです。

ほんと、私はイケメンに甘いな(笑)

 

されど、皇帝を拉致し、逃避行を図るなかで、事態はどんどん思いもよらない方へ転がっていく。

 

でも張小敬は、さらに甘いと言われようとも、この“目的のために手段を間違えた”罪深き蕭規を決して突き放せない(涙)

(ちなみに、蕭規の背中に刺さってる矢は、皇帝を庇って受けたものの一本です)

 

立っているのが奇跡なくらいのボロボロの身体で、行かせまいと蕭規の腕を強く掴む張小敬。

もはや逃れられない罪だとしても、少しでも長く生きていてほしい。失いたくない。

それは理屈なんかじゃなく、張小敬の偽らざる感情そのもの。

 

でも、蕭規の覚悟は揺るがない。

もう、最初から今日で命を捨てると決めていたから。

 

自ら扉を閉め、兵が待ち構える表に出ていくその瞬間まで、蕭規は張小敬を見つめてました。

 

その直後、まるで、張小敬たちが残る店を守るように立ちふさがった蕭規の雄叫びが、かき消される。

 

これまでどんな苦難に対しても、ぎゅっと口を真一文字に締めて耐え続けてきた張小敬の、腹の底からの慟哭をここで初めて聞きました。

 

ここで切ります。次が最後の記事になります。

 

 

★『长安十二时辰(長安24時)』4に続く★