しかしまあ、書いてるそばからアップしてたら、
やっぱ世界観とかまるで安定しないですね(言い訳)

まあ、この連載のテーマですからアレですけど、
この2人幸せになれるんでしょうか…ねえ?さよさん?

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『あの日に還りたい 第七話』

僕と小夜の関係で、
他の人たちと一番違った事と言えば、

例えば大学の中で数限りなく繰り返されたであろう、

誰が好きなのとか、講義はどれを取っているとか、
家は何処で、休日は何をしてるの?といった、
現実的で個人的などうでもいい質問を、
お互い殆どしなかったことにある。

その事が、
僕らの間に起こる奇妙な現象、

或いは、僕が知らないだけで、
世の大半の男女に訪れる現象を引き起こす事になるのだけど、

僕は小夜が何処に住んでるかさえ長い間聞かなかったし、
小夜も僕が何処に住んでるのかを聞きさえしなかった。

流行の芸能人の顔は誰が好みで、
整形の背景にはこんなことがあって、
なんて、まあ、ある意味、
学内で話されてることの中でも、更に低俗な事で盛り上がっていた。

だから、
夏が来て、秋が来る直前になっても、
僕は、小夜が屋上に来る理由も、
その後、お決まりの様にラーメンやカラオケに二人で行くのに、
ある一定以上に距離が縮まらない理由も、解りはしなかった。

ただ、大学生という特殊な時間の中で、
そんな暢気な距離感を持ってるというのは、
ある意味、非常に無益だったし、
ある意味、非常に稀有な関係だったのかもしれないし、
ある意味、非常にありきたりな関係だったのかもしれない。

大学2年の前半分は、
そんな風にゆっくりと過ぎていった。

僕は、彼女の作る野菜料理を食べて、
小夜とラーメンを食べる事でバランスを取っていた。

彼女とは自分の部屋で一言も喋らない代わりに、
小夜と機関銃のようにトークを繰り広げた。

ある日、パソコンのモニターに、文字が浮かぶとする。

???>つまり君はどうしたいんだい?

Hyde>さあ?

???>そんなぬるま湯みたいな生活で、君は2人を傷つけ続けるのかい?

Hyde>彼女はともかくとして、小夜を僕は傷つけていないだろう?

???>君は本当にそう思ってるのか?

Hyde>そう、思ってるよ



本当のところ、僕は解っては居たし、
ある部分において、決定的に解っていなかった。


いつものラーメン屋からの帰り道、
よく晴れた昼下がり、

雲の白さと、空の蒼さが、
なんとも絶妙なバランスで、

本当なら、坂を下って駅に向かうはずなのに、
小夜は坂を上って大きく延びをした。

両手を上げたまま、2、3歩歩き、
勢いよく両手を下ろしつつ振り返った小夜の顔を見たとき、

僕はこの子に、完全に恋をしていることを自覚した。
坂の向こうに広がる空と、
坂の両側にある街路樹の碧に囲まれて、

その真ん中にいる女の子に恋をしていた事を理解する。

夏の湿気で丸まった髪の毛と、
化粧をしないと、ほんとに高校生みたいな顔つきも、
大きな目も、
大きな胸も、

多分、ずっと前から好きだった事を。

そうして、僕は、
僕の口は、僕の頭より早く、

「小夜、かわいいな。」

そう動いていた。

その時小夜は、
大して驚きもせず、照れもせず、

「ありがとう。」

そう微笑んでいた。


もう少し後になって、
僕は小夜がとても照れ屋であることも、
およそ恋愛というものについて、どちらかといえば受身である事を知るけど、


なぜ、この時の小夜が、
とても自然にありがとうと言ったかについては、
よく判らなかった。


こうして僕らは、

というより、僕は、本当はここで、
小夜に向けて手を差し伸べて、小夜の手を握るべきだったのかもしれない。

或いは、
告白の言葉を紡ぎだすべきだったのかもしれない。

最低限でも、小夜が向かおうとしていた、坂の上に行くべきだったのかもしれない。


僕は、3歩先にいた小夜が、
1歩此方に歩いてくるのを見て、

そのまま駅に向かった。

彼女の事を考えたわけでもない。
その時の僕は想像すらできなかったのだ。

小夜が彼女になって、
小夜と恋愛をする。

そんなありきたりの想像を、僕はできなかったのだ。

???>どうしてそう思ったんだ?

Hyde>前にも書いただろ、小夜はどこか別の場所で戦って笑ってるんだと思って
たから。


「貴方は本当に馬鹿よね。」


「うん、そう思う。」



「お前さあ?なんで時々恐ろしく鋭いのに、
なんで時々恐ろしく鈍いの?」


「馬鹿なんだよ、根本的に。」



僕は、見送ったのだ、
これが勝負の分かれ時の球を、

完全に見送った。

こうして僕は勝負に負けるのだけど、
その時の僕は、その瞬間が運命の時だった事を知らない。

随分と後になって、
僕は小夜の口からその事実をしる事になる。


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あぁ、もうらめぇ…ストック切れ…。

まあ、実際、なんでもいいから、
このクソ暑いの早く終息してくんないですかねえ…。

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『あの日に還りたい 第六話』

夏の暑さは、僕にとって、
苦痛以外の何ものももたらさない。

町全体を覆う、嫌な臭いにもウンザリするし、
満員電車で、不意に触る他人の体液にも心底ウンザリするし、
好意的な表現をすれば、
随分と歳のいった方々の薄着というものが、
醜悪極まりなく、どこに視線を合わせてもそれは地獄絵図だった。

百鬼夜行の絵巻物を思い出すのだけど、
絵巻物からは悪臭はしないなというその一点だけでも、
絵巻物の方が遥かにマシに感じるのだけど、

僕だって、その中の鬼の一匹に過ぎないのは、
大いなる現実の福音だと思う。


「他人に触れるのも触れられるのも嫌いなんだよ。」

「じゃあ、今まで誰とも触れ合ってこなかったの?」

「好きな人とはむしろ触りたいし、触られたいけどなあ?」

「それって、ほんとに秀樹が言うとやらしくしか聞こえないねえ?

でも、ものの本には書いてあったよ、
人との接触を過度に拒絶するのは、自意識の強さの顕れらしいよ?

ま、確かに秀樹はあんまり誰かに依存してるって感じではないけど。」


「まあ、前半には同意するけどな、
後半については、どうなんだろうな、誰かに助けてほしいって、

これでも昔は願ったんだよ。

だけどまあ、世の中都合よくはできてないよなって、身をもって知ってるだけだよ。」


「ん、でも、
あんまりえらそうなことも言えないけど、でも秀樹が困ってるなら、
助けたいとは普通に思うけどね。」


「困ってる。」

「何に?」

「主に性欲関係で。」

とりあえず、笑顔のまま殴られた。
とりあえず、かなりの本音だったんだけどな。



どうして僕がそれほどまで、他人に敵意を抱いているのかは、
僕にはよく判らない。

まあ、それは恐らく僕の幼少時の記憶に原因があるのだろうけど、
それについてもこの物語にはまるで関係がないので割愛する。

なんにせよ、
彼らは僕にとって、僕の何かを邪魔する人々で、
(例えばそれは通行の邪魔だったり、僕が欲しい何かを得る為に、
競合する人たちであったり)
決して、僕を助けてくれる人々ではなかった。

あくまで僕の認識の中では。

ただ、言い訳をさせて貰えれば、
例えば仲のいい友達と、同じ女性を好きになったとして、
どちらかが彼女にするにせよ、両方ともできないにせよ、

何時だって、あるポジションにたつためのリソースは決まっていて、
その場所には、許容人数が設定されているのだ。

僕は少なくとも、その事実を奇麗事でごまかしたくないとは思っている。

現実的に、一人の女の子に二人の彼氏が居ることは、ままあるし、
その逆も、また複数の場合もあるのだけど、
それはこの物語とやっぱり関係がない。


付き合いだしの彼女が始めて性交を許してくれた夜に、

男友達が困った助けてくれと電話してきたとする。


「絶対好きな子とホテルに行くよな?」


「私は先にした約束を優先するよ。」


「それって後悔しないのか?」


小夜は笑って返事をしなかった。

小夜が内心どう思ってるにしても、
そうやって、自分の選択に後悔をしない事が一番だと思う。

僕は、友達を選ぶにせよ、性交を選ぶにせよ、
絶対に、選ばなかった選択肢について、後日思い悩む。

そして僕は、多分友達よりも恋人を選ぶ。

僕は、後で思い悩みたくないから、
友達を作らない事に決めた。

僕にとっての大学時代というのは、
その決めた事に対して、身体と心を慣らして行く為の時間だったと言える。

誤算といえば、
最優先すべき相手が居ない今の現状では、
誰とも接点のない寂しい人間だということだけだ。

そもそも、この時点で僕は彼女らしき人はいるのに、
その人のことをまるで思い出さないあたり、
僕は人間として大分偏った考え方をする人間なのは間違いないのだと思う。

でも、この頃の僕は、
まだ、寂しいという感情に勝利できなかった。

10戦したら9回くらいの割合で、
僕は寂しさに負け続けていた。

負ける理由に誰かを引き合いにするのも、犠牲にするのも、
確かに、どうしようもないことだとは解っていたのだけれど。

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そろそろ…ま、まだあるかな!
しかし…名前の通り、この主人公は自分モデルですけど…

俺ってタラシなの!?
つか、いまどきタラシとか言わなくね?

みたいな。

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『あの日に還りたい 第五話』


「で、小夜彼氏はいるの?」

例によって例の如く、
僕はなぜそんな質問をしたのかについて前後関係を覚えていなかったけど、

明確な打算が在って、そんな質問をしたわけではなかった気がする。

軽い質問に、
ずいぶんと小夜が考え込んだ挙句、

「彼氏はいないよ。」

と、赤くなる手前の顔で返答をした時、

僕は、ああ、彼氏らしき人はいるんだなと、
勝手に決定事項として、脳内で採判し、ファイリングした。

その時の手元だか、在るんだか解らない心は、
ちくりと痛んだのも覚えている。

そして、その後にくる、
じゃあ秀樹はどうなんだよという質問が来なかったことも覚えている。


でもその実、僕には彼女が居た。

彼女らしき女性は居た。

大学2年になる前の春休み、中学校の同窓会。
あんまり話したこともなかったはずの女の子と、

その時たまたまやっていた美術展の話をした。

もちろん僕は、その子が絵を好きなことを知らなかったし、
僕が絵を好きなことも、その子は知らなかったはずだ。

でも、翌週に僕らはその美術展に出かけて、
その子は、ルノワールの名も知られていないような裸婦画を見ながら、
僕に言った。

「松本君がいいなら、私たち付き合わない?」


僕は、興味もない塑像を見ながら答えた。

「僕でいいのなら。」

その返事に、彼女からの返事はなく、
ただ、僕の左手に指が絡められるのを感じた。

ほんの数秒だけ、
その手は、暖かくも冷たくもなく、
そこから感情を読み取る事は、その頃の僕には不可能だった。


その時、僕は相手のことが好きだったわけじゃない。
別れたばかりの彼女の埋め合わせをしたかったわけじゃない。

ただ、空虚な自分の中に、
なんでもいい、何かが埋まる事を期待して居たんだと思う。

もっと簡単に言えば。
誰でも何でもいいから、
今のこの現実を変えるきっかけになればいいと思っただけだった。

その子は、かわいいわけでも、不細工なわけでもなかった。
面白いわけでも、面白くないわけでもなかった。

でも、明るいわけではなくて、どちらかといえば暗い雰囲気の子だった。

ひたすらに細い女性で、控えめな表現をしたとしても、
殆ど胸には厚みのない子だった。

大学のそばで下宿をしていた僕の部屋に、
彼女はよく来ては、不摂生な生活をする僕に料理をつくってくれた。

それは野菜を中心として、
とても美味しいとは言い難いものだったけれど、

確かに、毎日ハンバーガーを齧るよりは、
確かに、長生きできそうな気になるような料理だった。

だから、
大変に申し訳ない話ではあるのだけど、

僕は彼女に対して、恋心もなかったし、
愛情なんていう遥かに高次元な感情をもっては居なかったけど、

多分、情だけは沸いていた。

それはちっとも浮ついた気持ちでもなんでもなくて、

じゃあ、何か上手く行かなくなったら別れればいいかと、
単純に考えていた、春休みの美術館よりいくらか複雑な感情を、
後の僕に抱かせた。


僕に男の友達が居たとすれば、

「お前はひどいやつだ。」

とか、

「ありえないだろそれ!?」

とか、色々と言われることになるのだろうけど、
少なくとも校内に、僕は彼女が居る事を伝えるべき相手もいなかったし、
伝えたい相手もいなかった。

だから僕は小夜に出会うまで、誰からも責められもせず、

その関係を続けていた。


例えば小夜なら、また違うというのかもしれない。

でも、僕にとって、誰かとの関係というのは、
自分が平穏で居られる時間というのは、長くても二年くらいだと思っていた。

逆にいえば、
僕は二年くらいで、僕の犯した過ちに似た何かを、
あがなわさせられていた。

至極まっとうな帰結として。


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ま、まだストックはある。

はず。
マジで、もし誰かみてるなら、
絡んでみてはくれませんか!?

反応みたくて、ここで書いてるんでお願い~(汗

って、昔から此処で言い続けてるけど、
反応ないってことは、俺このblogでも3ケタの人に嫌われてるんだね…(涙


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『あの日に還りたい 第四話』


まず不思議だったのは、
なんでそれこそ、出会い方としては悪かったはずの僕らが、

気がつくと人気のない校舎屋上で話す仲になっていたのかという事。


特に話術があるわけでも、
道行く女性が振り返るほどの容姿を持つわけでもない僕のところに、

小夜が来るようになったのかという事。


でも、時々空恐ろしいほどの毒を吐く女の子ではあったけど、
(好き嫌いが激しいというのは、
実際この年頃の女の子の職業特性だとは思うけど)

くるくる替わる、愛らしい表情一つとっても、
学内の男どもはこの子を放って置かないだろうとは思っていた。

携帯にも、
複数のメール着信音なんだか、電話の着信なんだかが、
しょっちゅう鳴っていたし、

きっとこの子は、どこかで戦っていたり、頑張っていたりして、
ここには休憩に来ているんだと思っていた。


その当時の僕は、
まったく戦っても居なかったし、頑張っても居なかったので、
小夜を見るたびに、何かしなくちゃいけないんじゃないかという、
焦りというよりは、自分の内側にある仄かな火照りを感じたりもした。

その当時の僕に、もし女友達と呼べる誰かが居たのなら、

「そりゃ、普通に恋の初期症状だよ。」

と、言われたんだろうけど、

「じゃあ、初期症状が終わるとどうなるんだ?」

と、想像上の女友達に問いかければ、

「そりゃ、男性機能の再確認をしたくなったり、
世界中から自分と相手以外誰も居なくなればいいとか考えるんじゃないの?」

とか、あれ、こいつは女友達じゃなくて、
男友達だったのかなんて脳内の設定を弄り直したりしてみる。


僕は、小夜に恋をしてたにせよ、してないにせよ、
その勢いは、とてもゆっくりと推移していたんだと思う。

それは、最後の一ひねりを忘れた蛇口の下で、
栓をされた洗面台が、ゆっくりと水で満たされていくような感情だった。

一日二日、その様子を見なかったとしても、
水は溜まったんだかどうかもよく判らない。

だけど、季節は夏も近づき、
小夜の格好も段々と薄着になっていくにしたがって、

自分の中にある、形にならないなにかは、
いよいよ無視するには大きな、何かも判らない何かになっていった。


「今日はどこに行くよ?」

と小夜に問われて、

「暑いからホテルでも行って涼みに行くか?」

と、小夜に問えば、

「お、いいね~。」

と、僕らはそのまま手近なカラオケ屋に行っては、
一般の人があまりしらないような歌を文字通り謳歌するのだけど、

僕は、いいねのその言葉を、
どこまでもどこまでも、頭の中で反芻していたりする事実を、
きっと小夜は知らなかったと思う。


「男女の友情なんて成立しないね。」

と、屋上で言い放った僕に、
小夜は、

「成立するに決まってるね!」

と返した時、
こいつは俺の発言の意図を解ってないなと、苦笑半分、落胆半分で思ったけど、

実際のところ、小夜がどんな意図で返答をしていたのかについてだって、
僕は解ってはいなかった。


冗談の後に、小夜はよく僕の腕や腰を叩いたけど、
その感触が、じわりと僕の肌に残る感覚を小夜は知らなかっただろうし、

僕は、なぜ小夜がそんなリアクションを取っていたのかも知らなかった。


きっと世界は、取り返しのつかないことばかりで出来てるんだと思う。

前髪しかないようなのが、女神のはずもないんだけど、

取り返しのつかないことに、間に合った人たちが、
きっと何かを掴んで、また次の取り返しのつかないことに直面するんだと思うと、

僕はいつしか、
取り返しのつかないことに、斜に構えていた。

その頃の僕は、その結果が、やっぱり自分に還ってくると言う、
ごくごく当たり前の事からも目を背けていただけに過ぎない。


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まだまだいくよ~

最近またAKBにはまってるHydeでした。
しかし~、土日に上げてもこう、
誰もみてないんじゃないかなあという気がするのは、

自意識過剰なアレですかねえ…、

つか、記事あげると3ケタアクセスあるのは…何故なんだろう…
誰か絡んで~、
見知らぬ人も絡んで~(血涙)

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『あの日に還りたい 第三話』

僕は春の、
世界が何かを期待するような空気が嫌いだった。

それは期待したところで、何も得られなかった自分からすれば、
何かを得られた誰かへの嫉妬なのかもしれないな、とは想いつつ。

それでも、
やっぱり春という季節はそんなに好きじゃないし、

まあ、夏に比べれば遥かにましな季節ではあるけれど、

(そういえば、最初の彼女の名前も夏だった。)


新しい教科書に、折り目がつかないように気をつけてしまう感覚も、

人間関係に、どこか一歩譲ってしまうこの季節も、

僕にはちっとも折り合いがつかない季節だった。


何人かの男女グループの中にいる小夜を見かけたけど、
向こうは僕に気がつかなかったし、
僕も取り立てて、注意を引こうとは思わなかった。


それなのに、その日の内に屋上に小夜は駆け込んで着て、

「なんで挨拶してくれないんだよ。」

と怒っていた。


「小夜も普通に通り過ぎたよな?
声掛けてくれても…って僕らってそんなに、声を掛け合うほど、
仲って良かったっけ?」


「え、いやだってさ、
周りに人が居たからさ、

今の人誰って話になったとするじゃない?

そうすると、実は私はあなたのフルネームも知らないし、
学部も知らなければ、サークルが同じでもないわけで、

じゃあ、どんな知り合い?って説明をするのも面倒じゃない?

まあ、あとで屋上に行けばいいかなって思う、いいきっかけにはなったよね。」


「よしよし、判った、
じゃあ自己紹介がてら、昼飯でも食いに行こう。」


「あ、私ラーメンがいいな。」


こうして僕らは、学校と駅を挟んで反対側にあるラーメン屋に行く事になる。

美味しかったのどうのと話をしながら、

楽器屋の前を通りながら、
うらびれた喫茶店でお茶をする事になる。

何を食べに行くと尋ねて、らーめんという気楽さが、
その後に続く僕の気持ちを、大分楽にさせてくれたのも確かで、

笑うと、それこそ冗談みたいに顔をくしゃくしゃにして笑う表情に、
なんだか気がつけば僕は好感を持っていた。

その角度にして、20度くらいは下がる眉毛が面白くて、
なんとか必死に面白い話題を探していた。

なんだ、ぶっきらぼうに見えたけど、
実は話し出したらよくしゃべるんだね、なんて言われたけど、
その実、僕は何時になく必死だった。

それが、笑い顔を見たくて必死なのか、
次の約束を取り付けるために、必死なのか、
途中から僕は判らなくなっていた。


自宅に帰って、シャワーを浴びる頃になって初めて、
そうか、僕は今日楽しかったんだなと理解する。

つまるところ、
十九歳だか二十歳だかの僕は、
人からの距離を心地よいと感じるのと同じくらい、
人との距離に傷ついて居たし、
それでも、誰かが側に居るという感覚に飢えていたのだと思う。

きっと小夜にそんな告白をすれば、

「だったら初めから人と距離なんて置かなければいいじゃない。」

と、漫然と言われたんだと思う。
やけにミルクをたっぷり入れた、ミルクティーを飲みながら。

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つづっく
記事実は8話くらいまで出来てるんだけど、
上げ忘れたらめっちゃ怒られたんで…とりあえず3話くらいは予約してます…

こうやって推敲もしないで勢いで話すすめちゃうからなあ…も~…ほんと…

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『あの日に還りたい 第二話』

それなのに、
その翌日、今度は曇天の屋上で。

頭の下で音がしたと同時に、
僕らは再び視線を合わす。


たっぷりと15秒くらい。
逆さに煙草を吸うと、煙が邪魔だなとか想いつつ。


「ねえ、昨日はごめん、
私も驚いて態度悪かったからさ、

もう二度と会うことはないって部分だけでも撤回しに来たよ。」



「はは、昨日の事がショックで、
僕がもう二度と此処に現れないって可能性は考慮されなかったの?」


「だって、だいたい此処にいるって昨日言ってたじゃない。」


「そりゃ確かに言ったね。」


「だから来てみたんだよ。」


「素直な子だなあ。」


「それって好い事じゃない?」


「悪い男に騙されないように。」


「ほんっとに、なんで私にそんな敵対的なのかなあ?」


「女って生き物が苦手なんだよ。」


「女って括りでまとめないで、
私は小夜。女じゃなくて、小夜。」


「俺は男だけど、秀樹だよ。」


「なんで、女の子が嫌いなの?」


「自分が嫌いな食べ物を、なんで嫌いかって理由を言えるの?」



それから小夜と名乗った女の子は、少し考えて、
何かを言おうとして黙り、もう一度考えて、

「それはそうかもしれない。」

そう言った。


「じゃあ、何がすきなの?」


「こうやって屋上で煙草を吸いながら、空を見上げてる事。

あとはでっかいおっぱい。」


「普通に最低だよね、秀樹さん。

って、なんなのこれ、貴方にむかつく!って思っても、
なんだか下の名前しかしらないから、
文字だけみてたら、妙に親密っぽくなるのは、ありえないくない?!」


「ま、個人的にはその方が助かるけどね。

要するに、僕は君が気に入ってるらしいって事さ、
特に…。」


「特になによ。」


「多分、顔?」


やれやれと口に出して言ってから、
小夜は、昇降口に背中を預けて、
曇天を見上げていた。


時々鼻歌を歌いながら、
何分間か、其処に居た。


「ねえ、曇った空って、自分の気持ちが映り込むと思わない?」



「思うねえ。」



「うわ、通じるんだこの会話。」


「通じたかどうかは知らないよ、
ただ、僕もそう思う事があるだけ。」


そういえば、昔のドラマにそんなのがあった。
なし崩し的に、一緒に暮らす事になった他人同士が、
足の中指が、人差し指に感じるとか、
そんな訳のわからない共感を語り合う場面。


「なんでこんなところに居るの?」


「そりゃ居たい場所が此処しかないからだろ。

ついでに言えば、およそ学内に興味のある人間は殆ど居ないしね。」


「なんでなら学校にいるの?」



「まっとうな質問だな。

そりゃ僕がおぼっちゃんで、そこそこ頭はよかったけど、
社会適応性と努力をする才能に恵まれない小心者だからだろ。」


「ふ~ん。」


そうして暫く曇天を眺めてから、
小夜は、また来るよと言って、去って言った。


なんで、言葉を撤回しに来たのに、
また来るとなるのかは全然判らなかったけど、

僕は自分の近くに誰も居ない事が、一番望ましいはずなのに、
この場所でまた小夜と話をするのかと思うと、
少し期待する自分を発見する。


きっと10年後の僕が、今の僕を見かけたら言うのだろう。

「なんてことはない、
結局この頃の僕は寂しがり屋だったのさ。

今の僕は寂しいなんて単語を忘れてしまったけどね。」

そんな事を言う自分自身に僕はきっと思うだろう。

「なら僕は、10年後もあんまり今と変わらない性格らしいね。」と。



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つづくっと

というわけで?
どこかの温和な読者と、どこかの優しい(嘘)読者さまらしき人たちから、
無言と、有言のプレッシャーから、
また無理やり書いてみました、

が、不定期連載ですので、前みたいに連投は、するかもしれないし、しないかもしれません。

そんな訳で、小夜の物語です、
誰か主人公の名前フルネーム考えて。

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『あの日に還りたい 第一話』


考えてみれば、
いい加減、僕の書く物語は一人称過ぎて、
どこまで行っても一人称だけで、

それは詰まるところ、
僕が一人を好んでいるからであって、

一人では物語なんて作りようもない、
僕自身が抱える本質的な問題なのかもしれない。

だからこれは、
僕が歩めたかもしれない、もう一人の僕の話。

僕ではない、僕であって欲しい人のお話。


そんな出だしの物語を、
僕は、随分と久しぶりにblogを開いて書いてみた。


高校三年生の春休みというのは、
高校二年生と、三年生の間にあるものを指すんだろうか、
高校三年生と、大学生とかフリーターの間にあるものを指すんだろうか。

ここのところ、
こういう繰り返し文章を多用するのは、
僕が非常にくどい性格をしてることの顕れ。

いずれにしても、
僕の18の春休みは、車の免許を取る事で大半が終わった。

その間、一人の女性と出会い、
なんの意味もなく、その関係も終わるのだけど、

その事については多分語ることはない。
語るべきこともない。

大学生になって、
初めてできた彼女の事も、
特に語ることはない、
語りたくもない。


大学生になって、煙草を覚えたぜなんていう、
田舎丸出しのお坊ちゃま連中に囲まれて、

僕は多分退屈な日々を送っていた。
何故か所属していた、ただ集まるだけのサークルの部室の真ん中に、
空き缶からつくった物凄く汚い灰皿が鎮座していたけれど、

その灰皿と、僕の生活のどちらに存在価値があるかと問われれば、
多分一晩は軽く考え込んだ末、
灰皿と答えるくらいは退屈で、そして無駄だった。


そういえば、
初めての彼女が出来たという喜びは3日で終わったし、

(それについては理由があるのだけど、
やっぱりその事についてはこの物語となんの関係もない)

初めて触れた女の子の胸は、
確かにおそろしく柔らかくて、

湿り気のある股間という具体的な現象は、
およそ僕のこれまでの人生の中で、もっとも異質な体験だったし、

その後に続く行為は確かに、その後の僕の人生にとって、
大きな意味を持つものとなるのだけど、

僕がその事実を知るのはもっと後の事で、

洗練されていないセックスは、
やはり動物と変わらないなと、

まあ、当時の僕が思ったわけではないけど、

いずれにせよ、
僕は、性格の不一致から初めてできた彼女と別れ、
人並みに落ち込んではいた。

きっとそれは、
誰かが隣に居た、手を伸ばせば肌の暖かさがあったという、
その事実が喪失した事に対しての落ち込みであって、

特定の誰かを喪失した寂しさとか、悲しみとは、
全然別質の問題である事も、当時の僕は知る由もない。


だから、母親から、

「女なんて星の数ほどいるんだからさ。」

という一言に、なんだか底知れぬ同意を感じてからは、
人生最大の落ち込みだと思っていた感情の底から
あっさりと回復した辺り、

初めての恋は、

恋に恋した恋だったと、
本能的に僕も判っていたんだと思う。

ただ、その事について僕は僕自身を責めた事は一度もなくて、
むしろ、そうじゃない恋愛を経験する事になる僕の人生は、
それほど悪くないものだと感じる、いい比較対象になったとさえ思っている。


小学生の時、
二度と受験は嫌だと、大学まである学校を選択し、
まんまと試験にパスし、この町に通うのも数年目の僕にしてみれば、

ぽっと出で、大学デビューした人間に比べれば、
構内や、学校周辺で、自分の時間を過ごしやすい場所を知っていた。


校舎に向かう途中にあるグラウンドは、
時間さえ選べば、殆ど誰も来ない場所だったし、

使われる頻度の低い校舎の、
更に使われにくい階段なんかは、
道行く人々は此方から見えるのに、
向こうからは見えない格好の場所だったと言える。


大学2年の春の頃、
(まあ、この2年の春ってのが、一体どっちの春かはともかく)

僕しか知らない中でも格別の場所である、
離れた校舎にある屋上、
人なんか殆ど来ない上に、
昼ごろになるとその屋上自体の入り口上で、
貯水タンクが丁度陰を作る場所で、僕は煙草を吸っていた。
(都合よくそのタンクメンテナンス用にか、梯子がついていたのだ)

この先僕は、やっぱり空を見上げる時間が数多くあるのだけど、
少なくとも、誰か人間一人の人となりを探る作業よりは、
少しずつ様相を変えていく空を眺めている方が、
生産的ではないかもしれないけど、
僕の好みには合っていた。


頭の下で、不快な扉の開閉音が鳴り、
誰が来たのかと、頭だけ動かすと、

一人の女の子が、勢いよくその誰も知らないはずの屋上に飛び込んできた。

白い襟付きのプリーツワンピースに、カットジーンズ。
網目の大きい、ニットのカーディガン。

服のセンスはいい。
というか僕の好み。

こっちを背にしてるから判らないけど、
なんか身長の割りに、やけに胸部から存在感の厚みを感じる。


誰もいない(と思ってる)屋上で、両手を広げて、
歌いながら、踊りだすのかななんて光景を、

僕は、ひっくり返りながら、
文字通り世界をひっくり返しながら見ていた。

その子が2回転目に入る時、
ふと見上げた視線の先に僕が居たのは、

まあ、必然だったし、

僕らが最初に視線を合わせたときは、上下が逆だったのだけど、

「うそでしょお!?」

という、向こうの第一声に対して、
僕の印象は、

”こじはる”かお前は、というだけのものだった。


「うそって何が嘘なんだよ。」

「いや、こんなとこに人が居るとは思わなかったので。」


大きな目と、
大きな胸と、

丸っこい顔には、猫みたいなクセっ毛で縁取られ、
ほんの短い間にも、よく表情の変わる子だった。

「僕もこんなところで、人間国宝と名高い、
スレンダー巨乳に会えるとはねえ。」


「うわ、第一声でそれですか。

多分私の出会いの中でも、
かなり最低な部類にはいる出会いをしてしまいましたよ。」


「モテる人は仰る事が違う。」


「別にモテませんし。」


「そうか?僕には出会いなんてそうそうないから、
実に羨ましい発言だなあと思って。」


「大体なんなんですか、初対面なのに偉そうにして、
何年生なんですか?

私は1年生だから、
もしあなたも1年生ならその態度を改めることを要求しますよ。」


「いやさ、だって出会いとかって、
最低な会い方をした方が、後で盛り上がるじゃない。」


「多分、私とあなたはこのまま二度と会わないし、
時々校舎を見上げては、いやなやつがいたなーって思うだけですよ。」


「そうか?
僕は、また会う気がするけどな。

それよりも、なんか好いことあったのかい?」


「ありましたし、

あなたには全然関係ありませんし、

言うつもりもありませんし。」


「まあ、いいさ、
僕は大抵いつも此処に居る。

話をしてくれる気になったらまた此処に来てくれればいい。」



言い終わるうちに、
頭の下でもう一度音がして、

もう一度世界は僕一人になった。

もし、誰かが隣に居て、
僕に、尋ねたとする。

なあ、今の子、お前の好みか?

そう尋ねたとする。

そしたら僕はやっぱり答えたんだと思う。


「そりゃもう、恋に落ちるくらいに。」


でも、その時僕は一人っきりだったので、
その思いを口にするのには、
まだまだ時間が掛かることになるのは、

多分、進行上仕方のないことだったんだと思う。

そういえば、こんなシリーズを昔書いてたんだなあ…とか。

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『多分、珈琲』


「ねえ、私のこと、
もう好きじゃなくなったのかな?」

それは今まで聞いた彼女の声中で、
もっとも透明で無機質な声だった。


「君がそんな事を僕に言うなんて意外だね?」


「質問を質問で返さないで。」

困った時にはハの字型になる眉を、
いっそう急角度に描きながら。


「でも、その質問に、
YESとか、NOとか答えて、君はその言葉で色々納得できるの?」


「まあ、むしろ、
今の答えで色々納得はいくかな。」


生活は、
およそ僕が知る限りの、生活というもの根ざす、
ありとあらゆる現象は、無機質でも無味でもいられない。

夏場の洗濯物から、
洗っても洗っても、嫌な臭いが消えないように。


白の家具で統一された、フローリングの居間で過ごした時間は、
気がつくと随分と長くなっていた気がする。


「僕は君にとても感謝をしているけどな。」



「あなたは、大好きな女の子に、

あなたにとても感謝しているけど、男性としては好きじゃないといわれて、
満たされるの?」


「満たされないかもしれないね。」


「ねえ、あなたは一体どうしたいの?」



僕はもう1年近くも珈琲をいれなくなっていた。


「とりあえず駅前にある、
ルタオのチーズケーキが食べたいかな。」


財布を持ち、席を立った彼女は、
多分怒っていたんだろうと思う。


手を繋ぐわけでもなく、
言葉を交わすわけでもなく、

僕らは駅前まで歩いていき、
月替わりで店舗の入れ替わるブースから、

冷凍されたチーズケーキを1ラウンド購入する。


チーズケーキが解凍されるまでは3時間。


僕は待ちきれなくなって、

1時間ばかり経過した処で、
珈琲豆を挽きはじめる。


彼女は少し驚いていたみたいだ。


珍しく、ハワイコナが残っていた。

僕がこの部屋では初めて引く豆。


心持ち、豆の量を減らして蒸らし時間を長く取る。

いつもよりドリップ紙の中に多めに水を注ぎ、

いつもよりたっぷりとした量の珈琲をいれる。



「ねえ、覚えてる?
昔よく行った喫茶店。

あそこで、濃い珈琲とチーズケーキを食べるのが好きだった。」


「覚えてるよ。」



「あの頃の、僕が挽いた珈琲の味を覚えてる?」


「覚えてるよ。」


まだ解凍されきっていない、チーズケーキと、
いれたばかりの珈琲を配膳する。

「飲んで?」


「うん。」



「食べて?」


「うん。」


まだ解け切っていないケーキは、
2色の境目で、きっちりと2つに別れて行く。

「あの頃の珈琲と、今の珈琲、

どっちの方がすき?」


なんだか今までの複雑な表情は消えて、

真っ白い天井を見ながら、彼女は考える。


「今のほうが好きかも?」



「それはよかった。」


僕も、今の僕の珈琲の方が美味しいと思った。

そして、その翌日、
今度は彼女が珈琲をいれるのだけど、

その珈琲は、やっぱり僕がいれるより美味しくなっていた。


ここでは時間は流れていた。

ゆっくりだけど、流れていた。


多分僕はここで、まだ生きている。

彼女と一緒に。
 
 
「あ、どもども、Hydeです。
半年間どっぷりつかったネトゲもあっさりと辞め、

もっぱら最近はラノベばっかり読み漁ってます。」



「それ、前回からクドイなあ、
どこまでいっても、おっさんにもなりきれない堕落人間だって、
素直に言えばいいじゃないですか。

はじめまして小夜です。
前任者が、ここの主のセクハラに耐えかね、自主降板しましたので、
進行役を任されました、チッ。」


「冒頭の挨拶で舌打ちとか、どんだけ失敬なの!?
大体、サヨなの?サヤなの?」


「好きに読んでくれたらいいと想います。」


「なんか、うっかりすると日本刀で切りつけられそうな雰囲気だが、

いや、化物語は面白いわ、お前も読め。」



「なんか、担当者替わるなり態度でかいですね、
どんだけ前任を恐れてたんですか。」



「畏れよ、胸を!だ。」


「なんですか?それ。」


「いあ、FFでね、そういうミッションがあってだね、
そりゃあもう高難易度で…。」


「誰も聞いてませんが。」


「お前が聞いたんだろうに!?」


「誰も聞いてません、文脈見直してください。」


「担当替わっても、俺の扱いは変わんねえなあ…実際。


とりあえず、だ、
本読んでたら、気になったフレーズがあったのね、

”人間誰しも、今してる恋が一番だって自己補正するもんだろ”

これってそうなの?」


「そりゃあ、普通に考えたらそうだと想いますが、
主<あるじ>は違うわけですか?」


「ん~、違うねえ。

ああ、今してる恋は確かにそうだけど、

今のとその前の以外は、明らかに今が一番良い恋とか思ってなかった。
厳密に言えば、前の恋愛だって、今が一番いいとは思ってしてなかった。
だって不倫だし。」


「じゃあ、その特殊例以外は、どんな恋だったんですか?」


「え?次が見つかるまでの繋ぎ?」


「あの、極控えめに発言致しますが、





お前、一回死んだ方がいいよ。」



「ええ!?うそ!?

結構みんなそういう部分あんじゃないの!?

ええ!?マジで!?

俺以外のみんなは、そんなに真剣に真摯に今の恋に全力投球なの?!」



「じゃあ、仮に、今の貴方の彼女が”居た”として。」


「人の彼女をお化けみたいに言うんじゃねえ。」


「じゃあ、その人に、

実はHydeは中継ぎで~次見つかるまでの補填~、

とか思われたら死にたくなるでしょ!?」




「ほんとだ死にてえ!」



「つまり、あなたは今に至るまで、
ろくな相手とまともな恋をしてこなかったんですねえ…、かわいそうに。」


「う、薄々気がついては居たんだけど、

あれ、おかしいな…俺、恋愛至上主義で、
恋に生きてる乙女的な男だったのに…
あれ、なんか涙が出てきたよ…。」



「今からでも遅くないので、
墓穴掘って死んじゃってください。」



「で、でもね?

やっぱさ、基本くらべちゃうじゃん?

おっぱいの大きさはーとか、
身体の相性はーとか、
ほら、どうしたって順序ついちゃうじゃん、男としては?」


「比較が全部エロ関係というあたりに、
貴方の人間としての終わりっぷりがにじみ出てますが、

特に女性は、あんまりそういった風には考えないみたいですよ。

(除く金銭に関して)




「なんか、最後のカッコ書きこそがこの世の真実っぽいよな…。

でもそう考えると、結構みんな自分がしてる恋愛がどうだってのは、
誰よりも自分自身は理解してるってことか。」


「そんな当たり前の事を、
大発見みたいに語らないでください、反吐がでます。」


「お前、素で前任より口悪くね?

さすがアイツの推薦だ…容赦がねえ…。

大体前任の引継事項の中に、

”あんまりヲタトークやめてよ、意味わかんない”とか合ったけど、
アイツだって普通にヲタだろ!?

俺がヲタなら、あいつもヲタで、

空気を吐くように2ch用語で会話して何が悪いんだ?!

橋田至が俺のジャスティスだろJK!」



「ええ、まあ、そうやって、お気楽な記事かいてると、

時事ネタというか、ヲタキーワードで、
楽にペタが集まると学習したわけですねわかります。」



「結局、世の中には、
必勝法ってのは存在するんだよな…それが、世に出るまではという、
哀しい限定付だけども。」


「まあ、ある意味、必勝法を使えるかどうかって、

日本的な階級制度と、成功事例に基づいた、
れっきとした差別ですからねえ。」



「んまあ、そんなわけで、
確かに俺は、まともな恋愛してない代わりに、

まともな恋愛から得られる、まっとうな悦びってのも、
ほとんど体験したことないから、
ある意味世界は等価交換だよなあ。」


「まあ、主ははらわた引きずり出して、
その汚らしい臓腑と血液で魔方陣練成して、

その下らない人生と等価交換でまともな人生を望んだほうが良いと想いますが、

たぶんそのクソみたいな人生38年分は、まともな人生の1日の価値もないですね、きっと。」



「俺もドラゴンボール探しにでかけようかな。」



「そして、神龍にその願い無理じゃね?ってののしられるわけですね?」



「救いがねえ人生だなあ…俺って。」



「大丈夫ですよ、救われてない人の方が人間圧倒的に多いはずですから。」



「例えばお前はどうなの?」



「うわ、典型的な負け組みの聞き返し方ですね、それ。」



「なんかここんとこ、記事を書けば書くほど、
死にたい気持ちで一杯になるんだけど、どうしたらいい?」


「書くのも、息を吸うのも辞めれば良いと想います。」


「おま、そ、そしたら今の、イマカノが泣くだろ!?」


「また、空気彼女の話ですか?

正直、その彼女さんもそのほうが幸せだと想いますけども?」


「わかった、わかりました…

前回の連載のノリでそういう設定で話してましたけど、

その設定も辞めます、煙草も辞めます…オナニーも辞めます…

だから、生きていていいですか。」


「勝手にすればいいんじゃないですか?

主がオナニーで消費するティッシュも、まあ、経済的な消費と言えなくも
ないですし、貴方の存在そのものを全部否定してるわけではありませんが、
部分、というか大部分は否定しますけども。」


「もはや日本語の体裁すら残ってねえ…。

でもまあ、そうすると、大多数の人間は、
理由はよりけりでも、恋はいつか終わると思っているわけか、

…確かにそう言われれば、そうなのかもだけど、

俺もやっと今になって、
終わらないで欲しいという、
まっとうな恋愛を実感できるようになったってことか。」


「まあ、いいんじゃないですか?

世の中には、妄想だけなら大河ドラマ級だけど、
リアル女性の手にすら触れず死んで逝くヲタ童貞なんて、

腐るほど、実際腐り果てるほど居ますからねえ。」


「でも、日本ぐらいなもんらしいよ?
こんだけ婚前交渉で、貞操観念なく盛ってるのって。」


「その辺は私には判りかねますが、
若かりし頃見た、
”ビバリーヒルズ青春白書”とかいうアメリカの連続ドラマ見て、
アメリカ人って気が狂ってるって本気で想いましたけどね。

まあ、あれがわかった上での脚色というのなら、
アメリカは明らかに日本の上を行っていますね。」


「俺はむしろだな、

このまえ、キャラメルコーンを擬人化して見た!
とかいう漫画を見て、

この国は終われば良いと思ったけどな…。


注)キャラメールコーンの袋を女性に擬人化し、
封を破られる、袋の中に手をつっこまれて、内容物を喰われる
という部分を、性行為に見立てて…以下略




「ある意味、ああいうものを創造できる人種って、
芸術家なのかもしれないとは想いますね。」


「いあ、そんな芸術性、理解したくもないけどな。」


「だから貴方は凡人なのですよ。」


「じゃあ、お前、最近の特殊な性癖向けビデオコーナーで、
天才さんいらっしゃい的なアジテーションを張れば、
この人材不足な日本文化に貢献できると!?」


「ま、あるいは。」



「俺か!?俺のほうが間違ってるのか!?

蝶が俺の夢を見てるのか!?
俺が蝶の夢を見てるのか!?


しかし、お前さあ、前任からの引継って
毒舌以外全然個性なくないか?」



「私、こう見えて、マゾです。」



「は?」



「いえ、マゾなんです。」


「前振りが唐突過ぎてついて行けねえ、
マゾだとなんなんだよ。」


「結構苛めらると感じるっぽいのです。」


「いあ、おまえ、だからそれをどうしろと。」


「私を主人公にして話を作ってください。」


「は?」


「私の個性を形にしてください!!!!!!!」




「え?あの、え?ええ?!」




「というわけで、

次回予告、貴女は貴方の夢を見る。

乞うご期待。」



「いあ、この前情報だけで俺にどうしろと。」



「ちなみに私もGカップ。」


「いや、巨乳は一人でいいんだけど。」


「じゃあ、私処女。」


「マジ?」


「マジ。かも。

てかそこ重要なの?」



「え、や、それほどでも?」


「男はみんなそういうよね。

乞うご期待。」


「え?」

「乞うご期待。」


「交互期待。」


「乞うご期待。」


「こ、こうごきたい…え?マジ?」



ちょっと、サイドストーリーは随時追加していきますね。

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「ec ep11.5」

もう、未来旦那の引越しは終わっていた頃。

それから一週間が過ぎた土曜日に、
えりからメールがあった。

今なら電話できるかも。

いつだってえりは、
多分とか、少しとか、かもとか、

ほんの少し言葉をぼかす子だった。


地元で夏の日差しを受けて、
僕はタバコを吸いながら、えりと電話をする。
朝だか昼だか判らない時間から、
昼と呼ぶにはだいぶ遅い時間まで。

半分残っていたタバコがすっかり空になるまで。

電話のなかで、
今日は祭りに行くのだと言っていた。

お父さんと、妹とと、
そして僅かな言葉の空白に、旦那も一緒にと、
入れるべきかどうか悩んだえりの、優しさなんだか、罪悪感なんだかを感じる。

別にそんな事に罪悪感なんて感じなくていいのに。



僕は、午後に映画を観る。

もう過去に観た映画を独りで見るのは、
世界の時間が止まったみたいで、

僕の中にある、色々な、
大半はえりと会いたいという気持ちを凍結させるのには、
とても有効な時間の潰し方だと思う。

夕食の調達に向かったとき、
通りすがりの100円ショップに、100円の花火を見つける。


夕食後、風の強いはずの外に、
洗濯機わきのポリバケツに、風呂場から水を汲み、

近くの公演に向かう。


100円均一の花火は、
想像以上に、、値段相応で、

安っぽい化学反応と、恐ろしいほどの火の付きにくさは、
風の所為だったのか、花火が悪かったのかは判らない。


花火セットの内訳のうち、大半は線香花火だった。

世界には沢山の無謀な事があるけれど、
風のある日にやる線香花火も、

無謀なランキングのかなり上位に食い込むんじゃないかと思う。

20本以上ある線香花火。

最初の数本は、
成すすべもなく、風の中に散っていった。

タバコを吸いながら、
更に数本は、僕が腰掛けていた、
切り株を模した腰掛のすぐそばに、
火元をなるべく揺らさないように、短く持って火を着ける。

さっきよりはだいぶ火は長持ちして、

穂先は鬼灯の様に丸まり出す。

世界を小さく切り分けるような火花が散り、
自然と僕の口角は上がるのだけど、

パチッという、花火らしからぬ炸裂音で、

線香花火は、通常よりやっぱり短い命を散らす。


やっぱり100円の花火は、
100円の花火でしかない。


だから僕は、
例えば、目をつぶってどれだけ、横断歩道の白いところ踏み続けられるか、
そんな子供じみた願いを思い出しつつ。

線香花火にえりとの恋を重ねてしまう。

腰掛を離れ、
バケツの水面近くに線香花火を構え、
バケツに覆いかぶさるように、再び火を灯す。


この花火が最後まで続けば…。

ねえ、信じられないことに、
もうすぐ38になろうという僕は、
心の中で、本気でそんな事を考える。

今このとき、
僕でない誰かと、浴衣を着ながら微笑んでいるえりを想像しながら。



最高難度の心臓の手術をする外科医の様に、

もっとも僕はそんな場を現実に見たことはないのだけれど、

線香花火は、
ごく平均的な線香花火より、
多少は長く、

もみじの葉線だけのような軌跡を、
世界と水面に残し、

そして、溶鉱炉での最後の仕事の様に、
儚げな残滓を最後に、

なんの音も立てずに、
世界からその痕跡を消す。


僕が現実に生きているとしたら、
今日何度か聞いた、火種が水に落ちるあの哀しい音は聞こえなかったはずだ。


いつしかタバコは、
僕の唇を焼きそうなほど短くなり、

気温は、電話をしていた頃より、
随分と過ごしやすくなっていた。

腰を上げれば、そこには歳相応の微かな痛みだけが残る。



それでも、誰かを思いながらする線香花火は、
孤独な行為ではないんじゃないかと思う。

それをほかの誰かが、なんというかは解らないけど。


えりの髪の香りが、
ほんの少しだけした気がする。