というわけで?
どこかの温和な読者と、どこかの優しい(嘘)読者さまらしき人たちから、
無言と、有言のプレッシャーから、
また無理やり書いてみました、

が、不定期連載ですので、前みたいに連投は、するかもしれないし、しないかもしれません。

そんな訳で、小夜の物語です、
誰か主人公の名前フルネーム考えて。

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『あの日に還りたい 第一話』


考えてみれば、
いい加減、僕の書く物語は一人称過ぎて、
どこまで行っても一人称だけで、

それは詰まるところ、
僕が一人を好んでいるからであって、

一人では物語なんて作りようもない、
僕自身が抱える本質的な問題なのかもしれない。

だからこれは、
僕が歩めたかもしれない、もう一人の僕の話。

僕ではない、僕であって欲しい人のお話。


そんな出だしの物語を、
僕は、随分と久しぶりにblogを開いて書いてみた。


高校三年生の春休みというのは、
高校二年生と、三年生の間にあるものを指すんだろうか、
高校三年生と、大学生とかフリーターの間にあるものを指すんだろうか。

ここのところ、
こういう繰り返し文章を多用するのは、
僕が非常にくどい性格をしてることの顕れ。

いずれにしても、
僕の18の春休みは、車の免許を取る事で大半が終わった。

その間、一人の女性と出会い、
なんの意味もなく、その関係も終わるのだけど、

その事については多分語ることはない。
語るべきこともない。

大学生になって、
初めてできた彼女の事も、
特に語ることはない、
語りたくもない。


大学生になって、煙草を覚えたぜなんていう、
田舎丸出しのお坊ちゃま連中に囲まれて、

僕は多分退屈な日々を送っていた。
何故か所属していた、ただ集まるだけのサークルの部室の真ん中に、
空き缶からつくった物凄く汚い灰皿が鎮座していたけれど、

その灰皿と、僕の生活のどちらに存在価値があるかと問われれば、
多分一晩は軽く考え込んだ末、
灰皿と答えるくらいは退屈で、そして無駄だった。


そういえば、
初めての彼女が出来たという喜びは3日で終わったし、

(それについては理由があるのだけど、
やっぱりその事についてはこの物語となんの関係もない)

初めて触れた女の子の胸は、
確かにおそろしく柔らかくて、

湿り気のある股間という具体的な現象は、
およそ僕のこれまでの人生の中で、もっとも異質な体験だったし、

その後に続く行為は確かに、その後の僕の人生にとって、
大きな意味を持つものとなるのだけど、

僕がその事実を知るのはもっと後の事で、

洗練されていないセックスは、
やはり動物と変わらないなと、

まあ、当時の僕が思ったわけではないけど、

いずれにせよ、
僕は、性格の不一致から初めてできた彼女と別れ、
人並みに落ち込んではいた。

きっとそれは、
誰かが隣に居た、手を伸ばせば肌の暖かさがあったという、
その事実が喪失した事に対しての落ち込みであって、

特定の誰かを喪失した寂しさとか、悲しみとは、
全然別質の問題である事も、当時の僕は知る由もない。


だから、母親から、

「女なんて星の数ほどいるんだからさ。」

という一言に、なんだか底知れぬ同意を感じてからは、
人生最大の落ち込みだと思っていた感情の底から
あっさりと回復した辺り、

初めての恋は、

恋に恋した恋だったと、
本能的に僕も判っていたんだと思う。

ただ、その事について僕は僕自身を責めた事は一度もなくて、
むしろ、そうじゃない恋愛を経験する事になる僕の人生は、
それほど悪くないものだと感じる、いい比較対象になったとさえ思っている。


小学生の時、
二度と受験は嫌だと、大学まである学校を選択し、
まんまと試験にパスし、この町に通うのも数年目の僕にしてみれば、

ぽっと出で、大学デビューした人間に比べれば、
構内や、学校周辺で、自分の時間を過ごしやすい場所を知っていた。


校舎に向かう途中にあるグラウンドは、
時間さえ選べば、殆ど誰も来ない場所だったし、

使われる頻度の低い校舎の、
更に使われにくい階段なんかは、
道行く人々は此方から見えるのに、
向こうからは見えない格好の場所だったと言える。


大学2年の春の頃、
(まあ、この2年の春ってのが、一体どっちの春かはともかく)

僕しか知らない中でも格別の場所である、
離れた校舎にある屋上、
人なんか殆ど来ない上に、
昼ごろになるとその屋上自体の入り口上で、
貯水タンクが丁度陰を作る場所で、僕は煙草を吸っていた。
(都合よくそのタンクメンテナンス用にか、梯子がついていたのだ)

この先僕は、やっぱり空を見上げる時間が数多くあるのだけど、
少なくとも、誰か人間一人の人となりを探る作業よりは、
少しずつ様相を変えていく空を眺めている方が、
生産的ではないかもしれないけど、
僕の好みには合っていた。


頭の下で、不快な扉の開閉音が鳴り、
誰が来たのかと、頭だけ動かすと、

一人の女の子が、勢いよくその誰も知らないはずの屋上に飛び込んできた。

白い襟付きのプリーツワンピースに、カットジーンズ。
網目の大きい、ニットのカーディガン。

服のセンスはいい。
というか僕の好み。

こっちを背にしてるから判らないけど、
なんか身長の割りに、やけに胸部から存在感の厚みを感じる。


誰もいない(と思ってる)屋上で、両手を広げて、
歌いながら、踊りだすのかななんて光景を、

僕は、ひっくり返りながら、
文字通り世界をひっくり返しながら見ていた。

その子が2回転目に入る時、
ふと見上げた視線の先に僕が居たのは、

まあ、必然だったし、

僕らが最初に視線を合わせたときは、上下が逆だったのだけど、

「うそでしょお!?」

という、向こうの第一声に対して、
僕の印象は、

”こじはる”かお前は、というだけのものだった。


「うそって何が嘘なんだよ。」

「いや、こんなとこに人が居るとは思わなかったので。」


大きな目と、
大きな胸と、

丸っこい顔には、猫みたいなクセっ毛で縁取られ、
ほんの短い間にも、よく表情の変わる子だった。

「僕もこんなところで、人間国宝と名高い、
スレンダー巨乳に会えるとはねえ。」


「うわ、第一声でそれですか。

多分私の出会いの中でも、
かなり最低な部類にはいる出会いをしてしまいましたよ。」


「モテる人は仰る事が違う。」


「別にモテませんし。」


「そうか?僕には出会いなんてそうそうないから、
実に羨ましい発言だなあと思って。」


「大体なんなんですか、初対面なのに偉そうにして、
何年生なんですか?

私は1年生だから、
もしあなたも1年生ならその態度を改めることを要求しますよ。」


「いやさ、だって出会いとかって、
最低な会い方をした方が、後で盛り上がるじゃない。」


「多分、私とあなたはこのまま二度と会わないし、
時々校舎を見上げては、いやなやつがいたなーって思うだけですよ。」


「そうか?
僕は、また会う気がするけどな。

それよりも、なんか好いことあったのかい?」


「ありましたし、

あなたには全然関係ありませんし、

言うつもりもありませんし。」


「まあ、いいさ、
僕は大抵いつも此処に居る。

話をしてくれる気になったらまた此処に来てくれればいい。」



言い終わるうちに、
頭の下でもう一度音がして、

もう一度世界は僕一人になった。

もし、誰かが隣に居て、
僕に、尋ねたとする。

なあ、今の子、お前の好みか?

そう尋ねたとする。

そしたら僕はやっぱり答えたんだと思う。


「そりゃもう、恋に落ちるくらいに。」


でも、その時僕は一人っきりだったので、
その思いを口にするのには、
まだまだ時間が掛かることになるのは、

多分、進行上仕方のないことだったんだと思う。