学生に贈る社会人100人の言葉 -18ページ目

『「何となく」でもいいじゃない』  NO.6

『「何となく」でもいいじゃない』

私は、大学に、学部から修士までの足掛け6年間大学に通っていたわけですが、社会人になってから振り返ってみると色々なことをしてきたなぁというのが、私の大学生活の総括的なイメージです。
具体的に何をしていたかというと、体育会の部活に所属してたり、アンケート調査や塾の個人指導、大学でのTAといったバイトをしてたり、ゼミでは色々な企業のリサーチをやり、研究内容を元に小さいながら海外の大学や学会で発表させてもらい、さらには、公認会計士試験の受験生・監査法人職員(入社が1月だったので、学生兼職員という時期があるんですよ)と、本当に色々なことをやってました。

ちなみに、全部、始めたきっかけは「なんとなく面白そうだから」です。
ゼミに入ったきっかけも「マーケティングが面白そうだった」からだし、公認会計士の勉強を始めたのも「会計や数字を扱う仕事が面白そうだった」から。

そんないい加減な、と思われるかもしれませんが、皆さんも、自分が今やっていることをふっと振り返ってみると、そんなもんなんじゃないでしょうか。
そうやって、「何となく」始まったことって、意外に多いのではないでしょうか。


でも、そんな「何となく」で全部決めちゃっていいんですか?
実際に、大事な場所では、そんな「何となく」では通じないんじゃないですか?
例えば、就職活動では、志望理由であるとか自己分析であるとかそういったことをして、「自分がこの会社で働きたい」ということについて、論理的な説明が必要だと言われますよね。
それも「何となく」って言っていいんですか?
などと思われるかもしれません。


確かに、就活の時に、全ての質問を「何となく」と答えるのは、相当のツワモノだとは思いますが(笑)、それでも、私は「何となく」色々なことをしてみることは、かなり大事だと思うのです。

ここからは、そのことについて話したいと思います。


なんで、「何となく」やってみることが大事なのか。
これに対して、私が考えている理由は2つあります。

まず、1つ目は、就活で必要とされる志望理由の「論理的な説明」ですが、実は、それほど論理的なものではなくって、理由を深掘りしていくと、やっぱり「何となく」というところに通じるからです。
例えば、「リクルーターで会った人、説明会で話した社員の方の雰囲気に惹かれて」という志望理由がありますが、「じゃあ、それは何でだろう?」というのを3~4回考えてみると、最後は「好感が持てる、好きだから」という感じになると思うんです。ですが、その「好き嫌い」の理由というレベルになってくると、かなり直感的なものに近づいてくるわけです。

そう考えると、就活の志望理由で求められる論理的な説明であっても、その根っこには直感的な「何となく」があって、その「何となく」を数多く重ねることではじめて、自分の関心ややりたいことを語るためのストーリーが描けるようになるのではないでしょうか。

私たちは、未知のものに対して、適正に評価をすることはできませんから、そういった未知のものを限りなく減らすこと、色んな事に対して積極的に触れることではじめて、そういった評価をできるようになるわけで。
その際に、新しい何かを始める際に、いちいち理由を論理的に考えていては、理由を考えるだけで膨大な時間がかかってしまう。だから、そんなことをいちいち考える前に、「何となく」でいいから始めてしまった方がよっぽど身になるし、理由を考えるよりも、それを始めてから得た経験を元に、自分の考え方や世界を広げることの方が、よっぽど役に立つと思うのです。


次に2つ目の理由ですが、「何となく」で始まったことが、思いもよらない繋がりを見せることがあるというのがそれです。

少し話がそれますが、「6次の隔たり」という言葉をご存知でしょうか。
これは、人間関係のネットワークを研究した結果示された仮説で、自分の知り合いを6人以上繋げると、世界中の人々と間接的な知り合いになれるというものです。
そういったネットワークを形成する上で重要な要素として「弱い繋がり」というものがあるのですが、これは、「自分のコミュニティの人とは全く関係の無い人とのネットワーク」を指しており、これが、自分のコミュニティ・集団と、本来であれば全く関係の無い集団を繋ぐ役割を果たすのです。

要は、そういったあまり知らない人たちとの集まりとの繋がりがあることで、自分のネットワークはその繋がり以上に広がる可能性があるということです。
じゃあ、ネットワークが広がるとどうなるのか、というと、自分だけでは知ることができなかったことを知ることができるようになって、最初に想定していたものとは全く違うことができてしまったり、広がっていったりする。
そういったことが、1つの「何となく」から始まる可能性を持っているのです。

さらに、「何となく」始めたことが、将来的に自分のやっていることに密接に関わってきたりする可能性だってあります。
例えば、私の友人で、大学のサークルで知り合って結婚したカップルがいるのですが、その2人も、最初から結婚するためにサークルに入ったわけじゃありませんし、私だって、会計士を目指し始めたのも、ゼミの研究の際に、ふと会計に関心が生じたからですが、そんなことが起きようとは、当然、ゼミに入るときには考えていませんでした。

このように、始めたきっかけは別のものでも、将来の自分に大きな影響を与えることだってあるわけです。


「いや、そう言っても、お前の場合、何となくで全部上手くいってるから言えるんだろ」という反論はあるかもしれません。
確かにそうです。私は、これまで「何となく」やってきたから、ここまで来れました。

ただ、「何となく」始めたことに「ハズレ」が入っていたこともありました。他にも、「何となく」始めたいことであっても機会が無くて断念したこともあります。その度に、ものすごくヘコんだり、怒ったり、悔しい思いをしたりしてきました。一番ひどいケースでは、1ヶ月間立ち直れなくなることもありました。
それでも、「何となく」やってきたからこそ、ここまで来れましたし、今の自分の強みがあるのだと思っています。

ただ、1つだけ「何となく」やっていく時のコツとしては、始めるのは「何となく」でもいいんですが、始まってからはガチでやること。
それだけで、終わった時の充実感と得られる経験の豊かさががグッと増します。


だからこそ、皆さんにも、「何となく」でいいから色々なことをして欲しいですし、これまで「何となく」やってきたことに対して、ちょっとでも見直してもらう機会になればと思います。


【自己紹介】
京都大学経済学部を経て、京都大学経営管理大学院卒業。
専攻は大学、大学院共、マーケティングであったにも関わらず、「何となく」面白そうだからという理由から会計士を志望し、院生時代に公認会計士試験に合格し、そのまま、大手監査法人へと就職。
現在、見習いとして下積みしながら、自分自身が「面白そう」な人物になれるよう修行中。


ツイッター: @gennnai_ 


(何となく気になったら覗いてやってください)

【お勧め本】
デヴィッド・シーベリー著、加藤諦三訳『もっと「強気」で生きたほうがうまくいく』

もっと「強気」で生きたほうがうまくいく/デヴィッド・シーベリー
¥1,365
Amazon.co.jp


他の方の本に比べて、エネルギッシュな本ではありませんが、自分自身、これでいいんだろうか、とか、周りとの軋轢が気になった時には、ちょっと読んでみる本としてお勧めします。
特に、周りと違うことをしようとする時には、ちょっとの強気さが要るものです。