阿津川辰海さんの作品を読むのは、「紅蓮館の殺人」「蒼海館の殺人」「透明人間は密室に潜む」に続いて4作目になります。

 

上記はいずれもガチガチの本格ミステリで、論理の積み上げによる謎解きや伏線の妙で評価が高い作品でした。(それぞれ”このミス”6位、5位、2位)

 

これらに比べると本作は肩の力が抜けた学園ミステリ連作集。 昼休みに学校を抜け出してラーメンを食べに行ったり、マドンナへの告白権利を賭けた消しゴムポーカー大会を繰り広げたり・・・

 

これぞ青春!と言うべきエピソードの数々を楽しんでいると、そこは阿津川さん、ラストでキッチリと伏線回収をしてくれました。

 

九十九ヶ丘高校の昼休み、男子ふたりが体育館裏のフェンスに空いた穴から学校を脱け出した。 タイムリミットは65分、奴らのミッションは達成なるか(第1話)。

文化祭で販売する部誌の校了に追いつめられた文芸部員たち。肝心の表紙イラストレーターが行方不明になり、昼休みの校内を大捜索するが――(第2話)。

他人から見れば馬鹿らしいことに青春を捧げる高校生たちの群像劇と、超絶技巧のトリックが見事に融合。稀代の若き俊英が“学校の昼休み”という小宇宙を圧倒的な熱量で描いた、愛すべき傑作学園ミステリ! (BOOKデータベースより)

 

第1話「RUN! ラーメン RUN!」 :昼休みに学校を抜け出してラーメン食べる

第2話「いつになったら入稿完了?」 :イラストレーターを校内大捜索

第3話「賭博師は恋に迷う」 :マドンナへの告白権利を賭けたポーカー大会

第4話「占いの舘においで」 :ふと聞いてしまった謎の言葉の意味を推理する

第5話「過去からの挑戦」 :17年前の女生徒消失事件が解き明かされる

 

という5編の連作短編集ですが、それぞれの出来事が同じ日の昼休みに同時並行で起こっているのがポイントです。

 

各話でミステリの謎解きはあるのですが、第5話で最大の謎である17年前の女生徒消失事件の謎が解けると同時にすべてのエピソードがつながるのです。

 

はたから見るとどうでも良さそうなことに全力を傾ける青春の熱気が描かれていて、「紅蓮館の殺人」に比べると阿津川さんは文章が随分上手くなったなーと感心しました。

 

爽やかな学園青春ストーリーに、見事な謎解きと巧妙な伏線回収が組み合わさった傑作です。 お勧め。