先日読んだ知念実希人さんの「硝子の塔の殺人」に続き、舘(やかた)ものの本格ミステリを読みました。

 

阿津川辰海さんは、1994年東京生まれ。 東京大学在学中に「名探偵は嘘をつかない」でミステリ作家デビュー。 本作で2020年このミス6位、続編の「蒼海館の殺人」で2022年このミス5位と、28歳の若さで人気ミステリ作家の仲間入りを果たしています。

 

山中に隠棲した文豪に会うため、高松の合宿をぬけ出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。 救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。 だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。これは事故か、殺人か。 葛城は真相を推理しようとするが、住人と他の避難者は脱出を優先するべきだと語り―。 タイムリミットは35時間。 生存と真実、選ぶべきはどっちだ。 (文庫裏紹介文)

 

吊り天井に秘密の通路など様々な仕掛けが施された落日館。 落雷による山火事でクローズドサークルとなり、刻々と迫る火の手。 そんな中で起こる殺人事件。 怪しさ満点の居住者&訪問者たち。 高校2年生の名探偵と元名探偵だった女性。

 

いかにも本格ミステリらしい道具立てと、タイムリミットサスペンスの緊張感。 論理の積み上げも読ませるし、ラストは「探偵としての生き方」に焦点が当てられて興味深い。 このあたりがこのミス6位なんでしょう。

 

ただ文章がちょっと・・・・。 若い作者で、講談社タイガというレーベルも若者向け、語り手もl高校2年生のワトソン役なんですが・・・・

 

状況説明が分かりにくい上、何かが起こると「体が震えた」、「心臓が跳ねた」など同じような表現を連発し、いかにも芝居がかったある種の青臭さに辟易する部分がありましたねー。

 

ミステリとしての道具立てとストーリーは面白いのに、ちょっと残念な作品でした。