似鳥鶏さんは1981年千葉県生まれ。 千葉大学教育学部を卒業し、北海道大学法科大学院で司法試験の勉強をしていました。

 

そんな中、2006年に鮎川哲也賞に応募した「理由あって冬に出る」が佳作入選し、翌年に作家デビューしました。 司法試験はあと10点くらいだったそうですが・・・

 

日常の謎系の青春ミステリを得意としていますが、テンポよくコミカルな語り口の中で、極めてトリッキーな仕掛けがあったり、事件の陰に深刻な事情や社会問題が隠れていたりして油断がなりません。

 

また、叙述トリックのみの短編集とか、泌尿器科の医療ミステリとかマニアック?な題材を選ぶことも多い。 テンション高めのあとがきも含め、基本的にサービス精神旺盛なんでしょうね。

 

そんな似鳥鶏さんの私的ベスト3を選んでみました。

 

第1位: 「さよならの次にくる」 (2009年)

似鳥さんの代表作である『市立高校シリーズ』の第2作。 〈卒業式編〉と〈新学期編〉で、計9編の連作短編と間に配置された5編の断章で構成されています。 まずはワトソン役・葉山君の青春学園ドラマ的展開が面白くて、ぐいぐいと読んで行けるのですが、その中でごく自然にミステリ的展開が入り込んできます。 ラストでバラバラだと思われた断章が一つに結びつく仕掛けは本当に見事。 学園ミステリとして最高レベルの傑作だと思います。

 

第2位: 「モモンガの件はおまかせを」 (2017年)

楓ヶ丘動物園の飼育員たちが様々な謎を解き明かす『動物園シリーズ』の第4作です。 このシリーズは、『市立高校シリーズ』に比べるとミステリ的な仕掛けの大きさでは見劣りするのですが、飼育員たちのキャラの濃さが楽しく、動物に関するシリアスな社会問題は読み応えがあります。 その中でも本作は短編集として個々の短編のレベルの高さと、ペット問題という身近な社会問題を扱っていて秀逸です。

 

第3位: 「家庭用事件」 (2016年)

1位、2位は、似鳥さんの代表シリーズから選んだので、3位はそれ以外から選ぼうと思ったんですが・・・やはりこちらのほうが面白い(^^♪ 『市立高校シリーズ』の第6作「家庭用事件」です。 5編の短編それぞれで、シリーズの探偵役・伊神さんの超人的な推理力が発揮されて速攻解決! 御手洗潔も、ガリレオも真っ青なくらいです(笑) 5作目までと独立しているので本作から読む手もあるかと思います。

 

次点: 「彼女の色に届くまで」 (2017年)

上記2シリーズ以外で挙げるとするとこれでしょう。 5編の連作短編集で、絵画破損、絵画焼失、贋作など、発生する事件はすべて絵画に関わるものであり、それを美少女探偵・千坂桜が実在する絵画にヒントを得て解決します。 密室状況での犯行の謎解きもさることながら、最終話で背後にある隠された事実に驚かされました。 こういう大仕掛けのある連作短編を書かせると、似鳥さんは本当に上手いです。

 

「市立高校シリーズ」は、米澤穂信さんの「古典部シリーズ」や初野晴さんの「ハルチカシリーズ」をしのぐ、学園ミステリの最高峰だと思いますし、「動物園シリーズ」は、動物園飼育員が活躍する唯一のミステリシリーズで、素晴らしい!

 

ただ、両シリーズとも新刊がしばらく出ていないので待ちくたびれています(^^;)

 

似鳥さんは、2007年のデビュー作以降、コンスタントに作品を執筆していて、トータルでは50作に迫る勢い。 まだまだ読んでいない作品も多いので、上記2シリーズ以外の作品も徐々に読もうと思っています。