午後からはワニ日和」、「ダチョウは軽車両に該当します」、「迷いアルパカ拾いました」に続く、似鳥鶏さんの動物園シリーズ第4作です。 もう安定の面白さと言っていいでしょう。

 

お馴染みの楓ヶ丘動物園の飼育員たち――大型哺乳類担当の僕(桃本)、げっ歯類担当の七森さん、ツンデレ獣医の鴇先生、そしてカルト的人気、爬虫類担当の変態・服部くん――が、動物たちにまつわる謎を解き明かす、人気ミステリーシリーズ最新刊! (文庫裏紹介文)

 

今回は短編集で4編が収録されています。

 

第1話 『いつもと違うお散歩コース』

主人公の桃くんと同僚の服部くんは、バーベキューの買い出しへ。 その途中で犬を散歩させる男性と出会うのですが、連れていた柴犬の様子がおかしいことに不審をいだき・・・・・という話で、小さな違和感からこんな犯罪をあばきだすとは! 1話目から驚かされます。

 

第2話 『密室のニャー』

スコティッシュフォールドという猫が密室から盗み出されるという事件が起こり、いつものメンバー4人が駆けつけます。 密室の謎解きもしっかりしていますが、むしろ悪徳ペットショップの商売に憤りを感じました。

 

第3話 『証人ただいま滑空中』

逃げ出したモモンガが飼われていたであろうアパートに行ってみると、そこには死亡して2か月以上経過した絞殺死体が! しかも、そのアパートの部屋でモモンガは最近まで餌やりなど、世話をされていたらしい。 こちらは心理の盲点を突いたトリックです。

 

第4話 『愛玩怪物』

体長は最低1m、体重は最低50kg、枝の上を渡り、畑の小松菜を荒らし、罠を壊し、周囲の樹に大きな傷跡をつけ、そしておそらくは犬を食った「怪物」。 しかも出入口がまったくない小屋から忽然と消えた「怪物」。 その正体とは?

 

今回は短編集だったので、軽い感じかと思ったらトンデモない! 個々の短編のレベルの高さもさることながら、動物を飼うこととは? というペット飼育の問題を社会派的に糾弾します。

 

考えてみればこのシリーズ、これまでも動物園の現実をシリアスに描いた部分もあり、結構社会派ミステリしてたんですよね。 そして、動物園問題は他人ごととして読んでましたが、ペット問題まで広がって一気に身近になってきた印象があります。

 

市立高校シリーズに比べてミステリ的には一歩ゆずりますが、社会派ミステリとしての側面があって負けてませんね。 変態・服部くんも絶好調(笑)。 お勧めです。