1806年(ベートーヴェンが36歳)、代表作を次々と生み出していた”傑作の森”と呼ばれる時期に作曲されました。 その2年後には交響曲第5番「運命」第6番「田園」も作曲されています。

 

現在ではメンデルスゾーン、ブラームスのものと共に、三大ヴァイオリン協奏曲と言われていますが、当時は不評だったようです。

 

その理由はまず、演奏時間が長かったことがあります。 第1楽章だけで20分を越え、全曲では45分前後という大曲。 ベートーヴェン以前のものと比べて2倍近くありました。

 

当時の聴衆はヴァイオリン協奏曲というと、ソリストの華麗なテクニックを楽しむことを好んでいました。 そのため、交響曲のようなスケールを持つこの曲は敬遠され、初演から40年間はほとんど演奏されませんでした。

 

しかしその後、天才ヴァイオリニスト・ヨアヒムがこの曲を取り上げて演奏活動を行い、多くの人々に認められるようになっていきました。

 

ベートーヴェンらしく構築的でスケールの大きい作品でありながら、曲調は穏やかで幸福感に溢れています。

 

この明るさは同時期に作曲された交響曲第4番やピアノ協奏曲第4番にも見られ、当時ベートーヴェンと恋愛関係にあったダイム伯爵未亡人の影響という説もあります。

 

第1楽章:ティンパニーの独奏で木管の主題が導き出され、堂々とした管弦楽だけの提示部があり、やがてヴァイオリン独奏が即興的にぐいぐいと弾きはじめ、きらびやかに楽想を展開していきます。

 

第2楽章(24:40~):変奏曲形式でゆっくりとした歌うような楽章。 独奏が弦楽合奏の柔らかな響きを縫って自在に動いていくところが美しいです。

 

第3楽章(34:04~):ロンド形式の楽章。 小気味いいヴァイオリンの主題で開始され、オーケストラがこれを繰り返します。 メランコリックな第2主題も魅力的です。

 

↓テツラフのヴァイオリン、エストラーダ指揮/フランクフルト放送響

 

 

テツラフ(ヴァイオリン)/ティチアーティ指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団

快速なテンポに乗ってテツラフの自在なヴァイオリンが歌います。 ティンパニの入るカデンツァなど、様々な部分で独創的な演奏が聴こえます。

 

シェリング(ヴァイオリン)/イッセルシュテット指揮/ロンドン交響楽団

この曲の決定盤と言われている演奏。 安定感抜群のオーケストラ演奏に乗ってシェリングの端正で気品溢れるヴァイオリンが響きます。

 

ムター(ヴァイオリン)/カラヤン指揮/ベルリンフィル

ゆったりとしたテンポでカラヤンのコントロールが行き届いたオーケストラに、ムターのとびきり美しいヴァイオリンが乗っていきます。