筒井康隆さんの熱心な読者ではないのですが、本作が”神”を扱った小説であることを知って読んでみることにしました。 神とか超越的存在を扱ったSF小説は大好物です。

 

山本弘さんの「神は沈黙せず」、小松左京の「果てしなき流れの果てに」、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」、A.C.クラークの「幼年期の終わり」・・・

 

筒井さんの小説では、七瀬シリーズの最終作「エディプスの恋人」にも超越的存在が登場しますね。

 

しかし本作は、神以上の全知全能の存在が人間界に降臨し、「神とは?」、「宇宙とは?」、「未来とは?」、「存在とは?」などの哲学的問題をわかりやすい言葉で語りつくすという凄い小説でした。

 

著者自ら「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と宣言する究極の小説、ついに刊行! 河川敷で発見された片腕はバラバラ事件の発端と思われた。 美貌の警部、不穏なベーカリー、老教授の奇矯な振舞い、錯綜する捜査……。

 

だが、事件はあらゆる予見を越え、やがてGODが人類と世界の秘密を語り始める――。 巨匠が小説的技倆と哲学的思索の全てを注ぎ込んだ超弩級小説。 (BOOKデータベースより)

 

”神以上の全知全能の存在”というと途方もなさすぎて想像できないのですが、これが美大の教授に憑依して、出会った人たちに語ってくれるのです。

 

それも、最初は失せもの探しや戸締りの注意、ヨーグルトの賞味期限など、ごく庶民的な話。 それでもすべてを見通した言動は神様ではないかと思われていきます。

 

さらに、法廷での検事や裁判官とのやりとりで、いよいよ自分をGODと名乗り「神とは?」、「善とは?」、「宗教とは?」、「無限とは?」などなど哲学的会話が展開されていくのです。

 

部分的にはアリストテレスやライプニッツ、トマス・アクィナスなどの哲学者の概念も登場してよくわからない所があるのですが、トータルではすこぶる面白い! なんせ、GODは人間にわかりやすくしゃべってくれてるので。

 

法廷から討論会に場を移すと、GODの言葉・・・というか筒井康隆さんの筆はもう縦横無尽。 宇宙論から日本の無宗教、歴認識から創作論、多元宇宙から可能世界などなど、なで斬りにします。

 

ラストは何故GODが降臨したのか?という問題を冒頭のバラバラ事件に回帰して収束させ、エンタメ小説としても上手い結末でしたね。

 

「神」を扱った小説に興味がある方、お勧めです!